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第4話 『俺と妹と幼馴染』

遅くなりました

―朝、俺が目覚めると俺の隣に誰かがいた。


「ん…って誰だお前!! …はぁ…お前かよ」


「おっはー。逸希(いつき)がずっと寝てたから隣に寝て見てたんだー。見て見て、逸希の寝顔写真撮ったんだよー相変わらず面白い顔してるね」


「おいどういう意味だ」


「ああごめんごめん」


「…ってか、なんでお前がここにいるんだよ?」


「えーだって逸希に会いたかったらー」


「はぁ…」


このいかにもめんどくさい奴は俺と琴音の幼馴染の酒井彩華(さかいいろは)だ。俺達の父親とこいつの父親が友達というのもあって小さい時からずっと隣の部屋に住んでいる。俺と琴音が606号室、こいつが607号室だ。

小、中、高ずっと同じ学校だが、1回も同じクラスになったことがなく、今回もまた違うクラスである。


「で、なんの用だよ…」


「ちょっとーそんな嫌そうな顔しないでよー」


「勝手に俺の部屋入ってきてる奴に嫌な顔意外できるか」


「勝手じゃないよー! 琴音ちゃんに許可もらったし」


「俺が許可出してないでしょうが!」


「そりゃあんた寝てたもん。許可出せるわけないじゃん」


「え、えぇ…怖…」


「まあいいから早く朝ごはん食べてよー」


「ハイハイ。…そういや琴音は? どこ行った?」


「朝ごはん作ってるよ」


俺と彩華が俺の部屋から出ると、琴音が朝ごはんをテーブルに並べていた。


「あ、おっはよーお兄ちゃん」


「おはよ」


「見て! 美味しそうでしょ! 早く食べよー」


テーブルには白ご飯、目玉焼き、味噌汁というまあ普通の朝食が並べられていた。


「彩華は食べないのか?」


「私食べてきたから」


「そ」


「「いただきます」」


「お兄ちゃん、美味しい?」


「うん、美味い」


「やったー! 褒められたー!」


琴音が笑顔で喜んでいると、彩華が俺たちを見つめていた。


「…」


「…ん? どうした彩華?」


「…あんたたち仲良すぎない?」


「えへへ、あたしたちはすごく仲良いよ! ねーお兄ちゃん!」


彩華は俺が子供の頃琴音が嫌いだったことを知っている。というのも、1度だけ本当に琴音と一緒にいることが辛くなり、マンションを飛び出したことがある。

その時偶然公園で会い、悩みを聞いてくれた。まあそのおかげで俺はだんだんと琴音に優しく接することが出来るようになったわけだが…その女の子が今ではこんな奴になるなんてな。


「…」


「あれ? お兄ちゃんどうしたの? 考え事?」


「え、ああまあ…」


「もしかして私の事考えてた? もしかして? エッチなこと考えてた?」


「なわけ」


「えーそんなはっきり言わないでよー」


「はぁ…まあお前のこと考えてたわけじゃないって言ったら嘘になるんだが…」


「わ、えっちだ!」


「ちげえよ! てか琴音まで乗っかって来んな」


「あはは! ―あ、そうだ! 今日みんなで映画館行こ!」


「いいよー行こー」

_________________________________________


それから俺たちは電車で映画館まで乗っていった。


「琴音、なんか見たいのあるのか?」


「あたしはラブコメかホラーが見たいなー! お兄ちゃんは?」


「どっちでもいい」


「うーん…彩華お姉ちゃんは? どっちがいい?」


「えー…私は…ホラーがいいかな?」


「じゃあホラー見よっか!」


琴音は彩華のことを子供の頃からずっと『彩華お姉ちゃん』と呼んでいる。

その理由は、彩華が俺たちよりも誕生日が早いことと、いつも家族みたいに過ごしてきたからだ。俺を『お兄ちゃん』と呼ぶのと同じ感覚なんだろう。


俺たちはすぐに席のチケットを買い、飲み物とポップコーンを買って入っていった。


「映画楽しみだね!」


「お前よくホラーでワクワクできるよな…」


琴音は見た目に反してホラーや幽霊とかがあんまり怖くない。こういうのが滅茶苦茶苦手な彩華とは大違いだ。


―それにしても…どうして俺が真ん中なんだよ…


俺たちは三人隣同士の席を買った。元々俺はどちらか端っこに座る予定だったが、二人が『真ん中に座って』って言ってきたせいで俺の右に琴音、左に彩華が座っているという状態になった。


―しばらくして映画が始まった。

_______________________________________


映画が終わり、段々と明かりが付いてくる。


右にはホラー映画にも関わらず『面白かった!』といった顔をしている琴音、左にはガクブルしながら俺の手を強く握りしめている彩華がいた。


「…お前そんな怖かったのか?」


「あんたたちが異常なのよ…あーもう思い出したくない…」


「いや俺も怖かったけどな? 琴音がおかしいだけだ」


「お兄ちゃんひどくない!?」


―映画館を出てからも彩華はずっと震えながら俺の手を強く握っていた。


「…おい大丈夫か? ずっと手繋いでるぞ?」


「いいじゃない…怖かったんだから…」


「ホラー見ようって言い出したのお前なのにな…」


「どっかカフェ寄らない?」


「ああ」


俺たちは近くのカフェを見つけて中に入った。

1番窓際の席に座り、琴音じゃなく彩華が俺の隣に座った。


「俺いちごパフェ食べよっかな」


「じゃああたしもお兄ちゃんと同じので! 彩華お姉ちゃんは?」


「私もいちごパフェで」


「はーい」


「おい、そろそろ落ち着けよ。てかそんな怖かったんだったらなんでホラー見ようって言い出したんだよ…」


「いや…だって…」


「?」


「な、なんでもないから!」


「そう?」


______________________________________


「いちごパフェです。ごゆっくりください」


「! ありがとうございます」


「わあー! 美味しそう! お兄ちゃん写真撮って写真!」


「はいはい」


カシャ!


「「「いただきます」」」


「うん、美味しいねこれ」


「ああ、美味いな。…彩華? 食わないのか?」


「食べたいんだけど…手が震えてて…」


「はぁ…おい、口開けろ」


「え? あ、あーん」


「…どうだ?」


「ん、美味しい…って…これ…」


「どうした?」


「べ、別に!」


なぜか彩華が顔を赤らめて俺の方を向いてくれなくなったが……手の震えは治まっているので大丈夫だろう。


「ん、美味いなこれ」


「だよねー」


「い、逸希、もう1口お願い」


「ああ。あーん」


「美味しい…」


「「「ごちそうさま」」」


俺たちは代金を払い、すぐにカフェから出た。

琴音は何も変わらなかったが、彩華は打って変わって顔が真っ赤になりながら下を向いて歩いていた。

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