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【完結】想いを馳せた軍人さんの、9年越しの溺愛には底がない。  作者: 月にひにけに


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2/8

2.

「おい、急に叫ぶな。不審がられただろうが……っ」


 馬を歩かせながら、気持ちのいい青空の下、舗装された道を不機嫌そうにライトが独りごちた。


『ちょうどいいだろ。夢見る小娘共に変人だって教えてあげたんだから親切だ』


「誰が変人だって?」


『25まで女のひとつも知らない堅物軍人なんて、変人以外のなんだと?』


「いったい誰のせいだと思ってる……っ!」


『あいたっ!! 暴力反対!!』


 ちっと舌打ちして荒く腰に携えた魔剣を叩くと、ライトにしか聞こえない声が抗議の声をあげる。


「アラン兄も本格的にうるせぇし、そろそろ決めるぞ。今回は休みも長めに取ったし、情報にも確証がある気がする」


『似たようなことを言い続けてもう9年経ってるけど』


「仕事と旅の地獄の日々に、枯れた私生活なんてもう真っ平なんだよ……っ!!」


『恋仲なんてできたら魔剣を捨てるつもりだろ。売れ残るまでちゃんと邪魔してやるから安心しな』


 顔を歪めてげっそりとため息をこぼすライトに対し、ふふとおちゃらけて話す魔剣をいやそうに眺め下ろす。


「捨てろ捨てろとうるさかったクセに、口に気をつけないと今すぐ本当に捨てるぞ」


『あ、ごめんなさい、捨てないでください』


 道端の雑木林へとその魔剣を振り上げるライトに、殊勝な魔剣の言葉が重なった。






『なぜ魔剣なんてものに手を出した』


 所持するだけで防護の効果があるから、絶対に抜くなと黒魔術に聡い親友に渡されたその魔剣が、特別なものだというのは触れてすぐにわかった。


 わかったけれど、窮地にいるであろう妹と親友の安否が気がかりで、ほんの一瞬が惜しくて、16歳のライトはそれを迷いなく引き抜いた。


 右手に寄生されるように、魔剣から伸ばされた根のようなものが肌の下へ食い込み、右手は侵食される。


 事が終わった夜に、禍々しい右手を1人眺めるライトに話しかけてきたのが、魔剣だった。


『私は呪いだ。魔剣の力に溺れれば、私に喰われてお前は死ぬ。人は弱く力に溺れ易い。使い続ければ必ず死ぬ。右手は戻らんが命は助かる。だから、さっさとあの魔術小僧の元へ私を戻せ』


「……いたく親切な呪いだな。ふつうは使わせるように仕向けるもんだろうよ」


 へっとうすら笑いを浮かべてベッドに放られた魔剣に話しかけるライトに、しばし魔剣は推し黙る。


『……忠告はしたからな』






「なぁ、お前って魔剣だったんじゃなくて、魔剣に閉じ込められたんだって?」


 自室のベッドでうつ伏せに、ライトはその足をぶらぶらと揺らす。


『あの魔術小僧め……っ』


 気のないそぶりながら執拗に絡んでくるライトに辟易としながらも、情報源であろうライトの親友に魔剣は舌打ちする。


「なんでこんなもんに閉じ込められちまったんだよ」


『…………』


「なんかに巻き込まれたのか?」


『…………なんで……』


「あ?」


『ふつう、何したんだって聞くだろ……』


「え? あぁ、なんでかな。何となく? あいつがわざわざ手元に置いてたのもそうだけど、お前、なんかお人よしそうだからさ」


 ははっとベッドにあご杖をついたままニッと笑うライトは、しばらく返事を返してもらえなかった。



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