鬼に金棒、バケモンに亜種
「見事だ。何も出来ず死ぬかと思ったが思った以上にやるようだ。」
そのお綺麗な顔面を崩してやる勢いで思いっきしぶち込んだはずなんだけど......全く効いていないと言う事実に心が痛ぇよ...。そんな雑魚パンチ効きませんってか?はっはっは!うるせぇよ!(誰もそんなこと言ってない。)
「正直なとこ結構ナメていたが.....君は私に膝をつかせてはいないが一撃を入れた。.....こちらも本気でやらねば無礼と言うもの!」
e?まだ強くなるんですか?
「いや...強くならなくても——」
「いくぞ。」
あ、ダメだ。全く話を聞いてねぇ。
「亜種【六花万象】。」
彼女がそう言うと手に持っていた剣が見る見る内に先端の方から凍っていき、ただの鉄剣だったその剣は触れてしまったら最後一瞬で凍ってしまうと理解させるような雰囲気を醸し出す氷剣へと姿を変えた。
「......来たか。」
やっぱり彼女はまだ亜種を使ってなかった。実は持ってなかったってのも期待したが....そりゃ馬鹿な考えだった。
......さっきまでの速さ、強さで素面の状態だったのにそこに亜種が追加されたってわけだ。
......ただでさえ勝ち目の無い相手なのにこれじゃあただのいじめじゃねか。
「――【氷弾】
彼女はそう言い剣を振り上げると彼女の背後にやり投とか出来そうな感じの氷弾が大量に出現した。
.....もしかして今から俺あれにぶっ刺されます?
そんなことを考えている合間に氷塊達は一斉に俺目掛けて襲いかかってくる。
「....亜種ってどんだけチートなんだよ.....クソ。」
落ち着け。確かにすんげぇ速さで俺に向かってきてる。だが動きは直線的で単純。多少の被弾は覚悟して守る部分を絞ってなんとか凌ぐしかない!
襲いかかってくる氷弾を木刀でいくつか弾きはするもののその倍ぐらい被弾し体中から大量に出血し膝をつく。
.....ざまぁねぇな。マーシャルさんに膝をつかせなきゃいけないのに俺が膝ついてちゃ意味ねぇだろ。....クソ.....血で水たまりが出来そうだ........勝てないって分かってて抗って見たが......やっぱあんなのに勝てるわけなかったわ....悔しさもねぇ....傷も痛ってぇはずなのになんだから笑っちまうよ。
.....これが本当の諦め....ってか?
「――【氷砕】
巨大な氷拳が上空に出現する。
「.....俺の負けですわ。......トドメをさすなら説明ぐらいしてからにしてくださいよ。」
「....トドメはささない。急にすまなかった。傷は後でどうにかする。説明をしよう。」
そう言うと亜種を解除したのか巨大な氷拳は粉々になり消え、氷剣は普通の剣に戻り彼女はそれを鞘にしまう。雰囲気も竜から蛇に戻った。
後でどうにかするって....結構重症だと思うんですけど?まあ....少し我慢するしかない。
俺は痛みを我慢するために唇を噛み締め彼女の話に耳を傾けた。
「完結に言うと君の実力を試したかったんだ。君に刹那を預けるんだ。どれほどの実力なのか知りたくてね。」
彼女は少し申し訳無さそうな顔で話す。
「....それなら先に説明しててもよかったんじゃないんですか?」
急に剣抜いてボッコボコにしなくたって.....手合わせぐらいでやってもらえばよかったんじゃねぇのかよ.....
ここまでしなくたって....。
「人と言う生き物は死をちらつかせると自身でも驚くほど力が出る。自身が本気だと思っていたそれ以上の力がね。私はそれが見たかった。」
「....そうですか。それでどうだったんですか?」
気持ちい回答が返ってくるとは思わないが....この圧倒的強者から見て俺どうだったのかは気になる。
「正直に言って私と対等にやりあえているわけではないがなんとかして食らいついてきた。だが私の亜種【六花万象】には手も足も出なかったな。瞬殺だった。.........だが君が良い亜種を持てばもう少しやりあえるだろう。剣術も体術もそれなりにできているようだしな。」
「.....そう.....ですか。」
うぅん......何と言うか....もっとボロクソ言われるかと思ったが....そんなことはなかったな........だが俺は負けた。惨敗だ。それに最後俺は完全に諦めた。それ紛れもない事実だ。.......彼女ぐらい.....いや、彼女よりも強くなるために亜種の力が必須だろう。しかし亜種の力を宿した剣ってそんな簡単に手に入るもんなのか?
マーシャルさんの剣だってその魔族らしき化物が持っていた剣だって言ってたし...まあ聞くだけ聞いてみ――
――『お前は強力な亜種の力が欲しいか?』
「!?」
なんだ?今どこから声が聞こえた?
――『俺と少し取引しないか?』
まただ。周りにはマーシャルさんしかいない。どこから声が聞こえてやがる。......それにこの声って.....まさか!
「.....羅仙か?」
「羅仙?どうした?何を言ってるんだ?」
――『ご明察。』
やっぱりか。やはり俺の推測は正しかったのか?周りに羅仙の姿は見えない。そして多分この反応はマーシャルさんには聞こえていない。だとするとこの声は俺の脳内に直接響いている。だとするとやはり羅仙は俺の中にいる。これでほぼ確定だと見ていいだろう。
「.....何の用だ。」
――『さっきから言ってるだろう?ちょっとした取引をしたいだけだ。』
「取引だと?」
――『何簡単なことだ。お前は亜種の力が欲しい。俺は亜種の力を貸せる。だからお前に俺の亜種の力を貸してやる代わりに俺の頼みを聞いて欲しい。』
「頼み?」
――『ああ........俺に付いている鎖を一つ外して欲しい。』
「鎖を?どうやって?」
――『その点は心配ない。亜種の力をお前に渡せば鎖は外れる。だからこれは悪くない取引だろ?お前は力が欲しい、俺は邪魔な鎖を一つでも外したい。.....どうだ?』
....確かに悪くない話だ。だが冷静に考えろ。リスクが多すぎないか?
羅仙の持つ亜種の力がどれほどのものなのかも分からなければ羅仙がなぜ鎖で覆われなぜ外そうとしているのか。羅仙の目的はなんだ?亜種と羅仙.....なんの関係があるんだ?だが............
「......最初に言った言葉は信じていいんだな?」
――『保証する。』
「....分かった。その取引乗った。」
リスクは高く未知数だがリスクを恐れてちゃ前へは進めない。だったら俺は進む道を選ぶまでだ。
羅仙は満足したようで少しばかり笑みをこぼしながら話す。
――『取引成立だ。』
その瞬間鎖が切れる音がしたかと思うと右目に燃えるような激痛が走る。
俺はその痛みに俺は耐えきれずこの広い空間一面に響き渡るほどの大声で悲鳴を上げた。
「少年!?どうした!大丈夫か!?」
彼女の声が聞こえるが俺の耳には届かない。
実際には数秒しか経っていなかっただろう。しかしその永遠とも思える時間が過ぎ痛みは治まっていき、ついには完全に痛みが消えた。
「はぁ...はぁ...」
息が荒くなる。 痛みを思い出しめまいがする。............しかしなぜだ?体がとっても軽く感じる。俺が絶好調な時よりも遥かに体が軽い。変な感覚だ。気持ち悪くて体調が悪いはずなのに今なら背中から翼が生えて空の彼方に飛んで行きそうなほど調子がいい。
「....すみません。もう大丈夫で...」
マーシャルさんの方に振り向く、しかしそこには俺を心配するような顔をしたマーシャルさんではなく、亜種の力を開放した氷剣をを構え、先程までの竜の目をした姿だった。
「....マーシャルさん?」
え?俺なんかした?もしかして俺がブツブツ言ってるの見てやべぇやつって思ったとか?....いや、流石にそんなんじゃあ剣抜かないだろ...。
「あ、あのー。」
「お前は誰だ?」
「え?」
「お前は誰だと言っている!」
「如月幸村です!」
俺はその威勢にビビリ軍兵の如く背筋を伸ばし大きな声で返事をした。
「....本当だな?」
「本当です!」
怖いよ!こえぇよ!なんなんだよ!急にどうしたんだよこの人ォ!
「..........すまない。急に君が....まるで.....いや、確実に別の何かになっていたのでな。警戒をしてしまった。」
「そ....そうですか。」
間違っては.....無いんだろうな。てか俺の右目どうなった?........ってんだこれ?
..........視界が違う?




