第5話
“ピンポンパンポン”とホームルームの始まるチャイムが鳴った。
健斗は「ホームルームになるから帰る!」と言って、多目的室の部屋を出た。
後ろから「失礼します。」とか「お待ちしています。」とか「また来てください。」と多目的室にいるソニアたち4人は点でに声をかけていた。
健斗は、そんなことに関わっている暇もなく、5階にある1年1組の教室に猛ダッシュで走った。階段があって厳しかったが登り切った。
教室に近づくと生徒たちの声がにぎわっていた。
健斗は“しめしめ。まだ担任は来ていないな。”と心の中で呟いた。
教室の中に入ると真之介が声をかけてきた。「どうしたの?遅かったじゃないか!休みかと思ったよ。よかった。来てくれて。」と、うれしそうだった。
健斗は「今朝は担任が来るのが遅くて助かった!」とホッとして言った。
真之介は「遅かったけど、何かあったの?」と尋ねた。
健斗は「いや、別に。朝、支度に手間取ってね。でも、遅刻にならなくてよかったよ。」と笑って誤魔化した。
健斗は自分の過去は友人の真之介にまで秘密にしていることだった。当然のことだった。それだけに多目的室の4人のことは、秘密にしておきたかった。
未来も「健斗、遅かったね。心配してたよ。」と心配そうだった。
健斗は「ごめん。家を出るのが遅れちゃって。」と、またしても、誤魔化した。
担任は遅れて教室に入ってきた。健斗と真之介は、もちろん、未来も、みんなも席に着いた。いつも通りに朝のホームルームは終わった。
この日、1時間目は現代国語の授業だった。担当の教師は女性だった。
健斗は思わぬ朝のことがあって、しかも、昨夜、スマホのインターネットを見て、夜更かししていたので、いつの間にか、不覚にも、うたた寝をしていた。
誰かが耳元で囁いた。「起きてください。健斗殿。3人目に教科書を読まされる番がきますよ。」
その囁き声に健斗は目を覚ました。
その囁きの通り、健斗は教科書の本読みの順番が回ってきた。先に、2人読まされていたので、自分が読まされる箇所が把握できていたので、余裕に読めた。
健斗は内心“ヒェ~~~~~危なかったぜ。”と思った。同時に冷や汗が出た。
“本読みを当てられて、居眠りしていたら、みんなの笑い者で、教師の顰蹙ものだな。”と心の中で思った。
健斗は今の囁きは何だろうと思った。
辺りを見回した。健斗の近くに准将蘭が立っていた。
蘭は微笑みながら、軽く片目をウィンクして、指でオッケーサインをしていた。
教室にいるクラスメートには、蘭が見えない様子だった。
健斗は、こちらを見ている蘭に座りながら、一礼した。
それに応えるように、蘭は微笑んでいた。
2022年10月16日記載