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リムが出ていってから数日経ったが、未だ行方不明のまま。
だが、僕には彼の居場所に心当たりがあった。
「マリア様、僕です」
扉を叩いて呼び掛けると、優しく透き通った声が聞こえた。
「はい、どうぞ」
「失礼します」
そっと扉を開くと扉がギシギシと鳴った。
ここは昔からリムの部屋だが、全くこの扉は何度直しても立て付けが悪い。
扉の奥にはピンクのドレスを着た美しい女性がいた。
リムの結婚相手だ。
空色の瞳に、薄く潤った唇。リムが虜のなるのもよく分かった。
何か書類を片付けていたらしく、手には羽ペンが握られていた。
「お仕事中申し訳ありません」
「いいのよ。今ちょうど終わったところだわ。何か用ですか?」
「はい、少々お時間頂けるでしょうか?」
「ええ、もちろんよ。立ったまま話をするのも難です。そこに腰をお掛けなさい」
僕はいつもはリムが座っている席の隣に座った。
マリア様は紅茶をカップに注いで僕の前に差し出した。
紅茶は湯気を出しながらとても良い香りを漂わせる。
僕は一口含み、カップを戻した。
紅茶は嫌いだ。
「ロム様も大きくなりましたね」
「いえ、マリア様こそ大変美しくおなりになられて」
「ところで、私に話しというのは?」
「はい、リムの行方について…」
僕がそう言うとマリア様は急に表情を変え、飲んでいた紅茶をテーブルに置いた。
「何か分かったの?」
「いえ、まだ……。ただ僕にはリムの居場所に心当たりがあります」
「どうして、それを私に?」
確かに、本来ならば使いに話せば城の家来にリムを探しに行かせればよい。
だが、今回は話が別だ……。
「それは、例の彼女との関係で」
「…それはどういうこと?」
「実はリムは――――
こんこん
「マリア様!」
「失礼」
そういうとマリア様は立ち上がって扉を開けた。
まったく、なんてタイミングの悪い。
だがしかし、リムがいなくなってから何やら重大な問題が発生したらしくマリア様も慌てた様子になった。
僕は面倒なことに巻き込まれまいとマリア様に軽く頭を下げ、部屋を出た。
もうすっかりリムについて話す気もなくなってしまった。
やはり僕一人でなんとかリムを連れ戻さなければ。
早くしないとリムはあの少女に―――