表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/40

――☆――

昨夜からファントヴァル家のあちこちで足音が響き渡る。


「リム様リム様!!」


「見つかったか!」


「いえ、まだ………。」


「リム様の身に何かあったら大変だ。早く探し出すんだ!」


使いたちは皆、あたふたと駆け回り彼の名を呼び続けていた。

その後ろで僕は静かに立って、眠い目をこする。


「何事だ」


「ロム様………!」


使いはヒゲ面の顔はしかっりと僕を見ながらこしを低く下げた。

僕はしかめっ面をして使いを見下ろした。


「どうした?僕は今機嫌が悪いんだ。もう少し静かにしてくれないか」


「申し訳ありません。しかし、リム様が現在行方不明でして………」


「行方不明?」

僕は驚く様子もなく平然と聞き返した。

その反応に使いは気にすることもなく、静かに言った。


「はい……、それとロム様宛てのリム様からの手紙がございまして」


「……リムからの…………手紙……?」


使いは僕に一通の手紙を渡し、低く頭を下げて黙り込んだ。

僕は封を切り中の一枚の紙を取り出して、ゆっくり目を通した。


「!?」


僕は目を疑った。

半信半疑で何度も文字を読み返した。

そして手紙を細かく引きちぎって、床に捨て、足で思い切り踏みつけた。

それは確かに、僕の兄のリムからの手紙だった。

だがしかし、僕はその手紙を信じることができかった。


「リム様………」

「これはロムが書いたんじゃない!!僕はこんなもの信じないぞ!!」


僕は声を張り上げ、歯を食いしばった。

唇に血が滲む。

使いは何も言わずに俯き、床に捨てられた紙切れを見た。

僕は使いに当たってしまったことに気づき、小さく呟いた。


「………す、すまない。とにかく、一刻も早く見つけだせ」


「分かっております……」


使いは静かに僕から一歩下がって、立ち去った。


それを冷ややかな目で見送り、僕は悔しまぎれに歯軋りした。



「リム……、なんでそんなに」



僕は一人の少女を思い浮かべた。

そして、その少女が目に涙を浮かべる。

何かを訴えるように口が震えた。「ヤメテ」と。

その映像は一瞬にして頭を駆け巡った。


「…僕は……僕は、どうでもいいのかよ、リム―――――」


騒がしい廊下で僕の呟きは誰にも届くことはなかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ