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海辺に建つ白くて大きな家。
その一番日の当たる部屋に白銀の髪の少年が一人、体にあわない大きなヘッドホンをして蹲っていた。
ヘッドホンから漏れるメロディーが部屋に響く。
坂城メア。
なぜメアという名前で白銀の髪なのかというと、メアの母親は金持ちな外国人で父親が金持ちな日本人だからだ。
つまり金持ち夫婦から生まれた、ハーフ。
容姿も整っていて、性格も和やか。
しかし、メアに友達は一人もいない。
友達といえば、いつも欠かさず身に付けているヘッドホン。
メアは生まれ付き目が見えない。
だから、誰も相手にしない。
親もメアの事は放りっぱなし。
唯一メアを大事に思ってくれているのが執事の田中。
田中はメアが2歳の頃から執事としてついている。
今のメアは7歳。
つい最近、誕生日を迎えたばかり。
誕生日にはたくさんのプレゼントを貰ったが、パーティなどは開催しなかった。
どうせ、誰も来ないからだ。
そして、いつも独りでヘッドホンから流れる音楽に耳を傾ける。
今日もまた独りで。
のはずだったが。
「…………―――?」
メアは急に顔をあげて、ヘッドホンを外す。
っ―――。
何かが聞こえた。ような気がした。
っ――――。
どこからか、聞こえる。
…………なんだろう……?
メアはよりいっそ耳を澄ませる。
…………しくしく―――
……泣き声?
…………しくしく
近いようで遠いような泣き声がひそかに聞こえる。
「誰か…いるの?」
誰もいないはずの部屋の中に問い掛ける。
すると、さっきまで聞こえていた泣き声が聞こえなくなった。
「…………………………私の声が聞こえるの?」
メアのすぐ耳元で声がした。
でも気配はまったく感じられない。
「うん。聞こえるよ。君は誰?」
「…………。」
返事がない。
「……どうしたの?」
「……私は…………私はあなたの新しい友達よ。」
「友達………?本当!?うれしいなぁ。友達なんか初めて。僕は坂城メア。よろしく!」
メアはうれしそうに笑った。
「私はイフよ。こちらこそよろしくね。」
「うん!」
メアの真っ白な世界に響く少女の声は幼い声だけど妙に大人びた声でもあった。
「そういえば、さっき何で泣いてたの?」
「……………。」
また返事がない。
「…………それは――――。」
その時、ガチャッと扉の開く音がした。
「ぼっちゃま。そろそろ昼食の時間ですよ。」
「え?もうそんな時間になったの…?あっ!ねぇ、じぃ!聞いてっ!新しい友達ができたんだよ!イフっていう女の子なんだぁ!今、一緒に話してて、ね?」
とイフに問い掛けるつもりで聞いたが返事が帰ってこない。
「……あれ…?…イフ?」
「ぼっちゃま。そのような少女は居りませんが?」
「え………?何で?さっき話してたのに……。」
メアは急に心細くなった。
真っ白な世界に一人きり。
「さぁ、ぼっちゃま、昼食ですよ。行きましょう。」
「……うん………。」
波の音が響く。
窓の外にある大きな木に一人少女が座っていた。
悲しい目で少年を見ていた。