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2話 グレス兄さん


「兄さん……ごめんなさい、そういうことなの……」


「なんと、そんなことがあったのか……」


24歳のグレス兄さんは私からの報告に肩をすくめているようだった。あまりにも情けない妹の事情に失望しているのかもしれない。


「お父様やお母様への報告は気が引けてしまって……先に兄さんに報告をと思ったの。ごめんなさい、こんなことになってしまって……」


「馬鹿を言うな、アリサ。私としてはむしろ安心しているよ。バルカン様がそこまで女癖が悪いとは思っていなかった。そんな輩にアリサを奪われなくて良かったよ、本当に」


「兄さん……」


 グレス兄さんは昔から私を大切にしてくれていた。お父様やお母様も大事にはしてくれていたけど、血を分けた兄妹間の絆は少し違うものだ。子供の頃は兄さんのお嫁さんになりたいと思っていたくらいだしね。兄妹間での結婚は不可能と知ってガッカリした経験を持っているけれど……。


 兄さんはやっぱり分かってくれた。例え結婚できない相手だとしても私の大好きな人には変わりないわ。


「父上や母上に後程、相談するとしてだな。アリサの今後について考える必要がありそうだ」


「え、ええ……そうよね、兄さん」


 内容的に鬱になってしまいそうだった。22歳の私……まだまだ若いけれど、婚約破棄をされてしまっては貰ってくれる貴族がいるとは思えなかった。今後は本当にどうしようか……。


「私なんて貰ってくれる人がいるとは思えないけれど……兄さん」


「それは悲観し過ぎなんじゃないか? アリサ。きっと、素敵な人が見つかるさ」


「で、でも……」


「ふふふ」


「?」


 暗い表情の私とは裏腹に兄さんは随分と明るくなっていた。私のことを心配してくれているとは思うけど、その態度は不思議だ。


「そうだ、アリサ。今度、ソマーラス宮殿に行ってみないか?」


「ソマーラス宮殿に? どうして?」


 ソマーラス宮殿は王家の方々が住んでいる都の中心地だ。男爵家でしかない私達が簡単に入れる場所じゃない気がするんだけど……兄さんはどういうつもりなのかしら。


「バルカン様のことを考え続けても、精神衛生上よろしくない。気分転換も大事だと思うぞ?」


「それはそうかもしれないけど……ソマーラス宮殿って」


「バルカン様の報告が必要になるから、入ることは可能さ。しかも、歓迎してもらえると思うぞ?」


「ええ、そうなの……?」


 正直、意味が分からなかった。私とグレス兄さんが宮殿に向かって歓迎して貰えるなんて、考えられないけれど……でも、兄さんは嘘を吐くような人じゃないし本当なのかな?


「それから……アリサを捨てたバルカン様はきっと後悔することになるだろうな」


「……兄さん?」


 グレス兄さんは遠い目をしていた。バルカン様は伯爵の立場だし、私を捨てたところで後悔に繋がるとは思えないけれど。でも、兄さんの表情はそれを確信しているようだった……。


 なにはともあれ、ソマーラス宮殿に行くことは決定のようね。緊張するけれど、恥ずかしくない格好をしなくちゃ。



 

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