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1話 婚約破棄されたアリサ


 私ことアリサ・シドニーは男爵家に生まれた長女だ。マリンキー地方を治めるバルカン・ヨーゼフ伯爵の婚約者になることが出来た。これは家としては非常に大きな収穫と言える。私にはグレス兄さんがいるので、私は結婚しなければいずれは一般人になる身だった。


 シドニー家自体の歴史が浅いのと男爵という立場所以の話だ。グレス兄さんはお父様の跡を継いで男爵としての地位を確立できるだろうけど、女である私は違った。そういう意味では22歳の誕生日に婚約者が決まったのは大きいと思う。


「バルカン様……私はもう我慢できません……」


「何を言うんだ、アリサ。可愛い顔が台無しだよ?」


 バルカン様は私を舐めまわすように見ていた。私は思わず引いてしまう……将来の夫への態度として考えればあまり良くないことだとは思う。でも、私は我慢することが出来なかった。彼の……バルカン様の浮気について問い質しているのだ。


 最初は、私みたいな男爵令嬢を婚約者に据えてくれたバルカン様には感謝しかなかった。自分ではそこまで考えていなかったけれど、私の外見を好きになってくれたのも嬉しかった。22歳という年齢はオウデール王国内ではやや遅咲きの歳になる。早い貴族令嬢は10代での婚約が普通だから。まあ、それには色々と理由があるのだけれど……そんな私をマリンキー地方という広大な土地を治める伯爵様が選んでくれた。


 これは素直に嬉しいことだ。バルカン様は今年で32歳になるけれど、今回で3度目の婚約になる。ややその回数が気にはなったけど、蓋を開けてみるとそういうわけだったのだ。


「幼馴染の方を含めて、複数の女性と関係を続けていますよね? それを止めていただけませんか?」


「それは無理な注文だ、アリサ。私はアリサを大切にしていきたいと思っているが、浮気は止められないのだ。ああ、こういう場合は浮気とは言わないか。私の立場が必要とする付き合いみたいなものだろう」


「……」


 もっともらしいことを言ってはいるけど、単なる浮気を誤魔化す為の手段でしかない。1年間この方の傍に居てそれが分かってしまった。


 私はこの1年間、彼の領地について色々と勉強してきたのだけれど、彼は色々と理由をつけては仕事をサボる人でもあった。


「バルカン様のお言葉にはもう騙されません。お願いですから、今の浮気相手全てとの関係を絶ってください。お願いします」


「……ちっ、お堅い奴だな。そんな気はしていたが……この1年間、身体を許さなかったのもそれが関係しているのか」


「ば、バルカン様……?」


 その時、バルカン様の口調が変化した。普通に怖い……私の印象はそんな感じだった。


「もういいよ、アリサ。お前の美しい身体は非常にもったいないが……婚約破棄だ。今すぐ、この屋敷を出て行け」


「バルカン様……!? 何をおっしゃっているんですか……?」


 意味が分からない言葉が飛んできた。何を言っているんだろう、この人は……?


「うるさい! お前とは婚約破棄だ! 単なる男爵令嬢が良い気になりやがって! 私に対してそんな口を利けるとは良い度胸だな? ああ?」


「バルカン様……そんな……」


「今すぐ出て行け、アリサ。お前は顔と身体が非常に好みだったが、仕方ない。別の男を見つけることだ。まあ、身分の低いお前など私が捨てれば誰も拾ってはくれないだろうがな。婚約破棄と言う汚名はお前の家に直接のダメージを与えるだろうし、誰も近づかないだろう。街の裏通りで娼婦でもすれば生きて行けるんじゃないか? ふはははははっ!」


 信じられない言葉がバルカン様から発せられた。こんな人の傍には居たくないというのは私も同じではあるけれど……こんな一方的な婚約破棄があるだろうか? しかも、悔しいことにバルカン様の言葉は的を射ているのだ。


 22歳の男爵令嬢にして、婚約破棄をされた者……こんな人物を貰ってくれる方が果たして今後現れるのだろうか? 私は半ば放心状態で彼の屋敷を追い出されることになった……。


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