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道中

馬車で王都を目指し3日目の朝を迎えた。順調に街道を進んでいる。普通なら8歳で親元を離れるのはありえないという感覚が強いがこの世界では普通らしい。

なんというか色々強い世界に来てしまったなぁ…。

にしても、子供のために馬車と御者を雇ってくれる親って……。


「坊ちゃん!前で馬車が壊れて道が塞がれているので少し止まりますね。」


そう言われて馬車から前方を覗いてみると、確かに馬車が止まってる。なんか色んな人が作業してるみたい。というかなんか家紋が付いてる?

とりあえず聞いてみるか。


「すみません!何かあったんですか?」


すると馬車の中からこれぞメイド!というようなバッチリのメイド服を着た20代前半か10代後半程の年齢に見える女性が降りてきた。そして


「どうしたの?迷子になったのかな?一緒にお母さんを探してあげようか?」


……。どうやら迷子と思われたみたい。


「いや、僕は「あ!でもごめんね。今馬車が壊れてお嬢様をお守りしないといけないの。馬車が直ったら近くの街に連れて行ってあげるからね。」」


全く人の話を聞かないタイプの人かぁ…


「僕は迷子じゃありません!」


こういう時は大声で叫ぶに限る。これでわかってくれた「もう!強がらなくていいのよ!」わかってなかったのかよ…

どうしようかなと思っていると、


『グルルル!!ギャーオ!!』


突然、茂みからウルフが飛びかかってきた。


「きゃあーー!お嬢様!隠れてください~!」


メイドは馬車の中まで走り、10歳くらいの金色の髪を肩くらいまで伸ばした女の子を外に担いで出てきた。そして…逃げた。その背後で先程まで馬車の復旧作業をしていたと思われる兵士たちが武器を構えて2人を護衛している。


「君も逃げなさい!」


何を焦ってるんだろう?ただのウルフなのに…まぁ、ちょうどいいや。


「大丈夫ですよ!ちょっと見ててください。」


そう言ってウルフの前に立つ。そしてケインは右手をウルフの方へ向ける。


「edge of the wind」(風の刃)


するとケインの目の前に暴風とも取れる風が吹き荒れる。その中に不可視の刃が現れウルフを襲う。


『ギャーオス!』


当然抵抗することも出来ずウルフは攻撃をもろに受け絶命してしまう。

しかしそこでふと気づく。ウルフは本来群れで行動する。なぜなら個々の力が弱いからだ。なのに一体でいることに疑問を覚えた。更に本来ウルフは灰色の毛並みをしているはずだ。なのにこのウルフはどちらかと言うと黒に近い色をしている。

どうしたものかと悩んでいると、


「お前は何者だ!魔族なのか!?正体を現せ!」


と先程の兵士たちに囲まれていた。

は?魔族?こいつらは何を言っているんだ?


「何を言っているんですか?僕は魔族なんかじゃないですし、武器を向けられるようなことは何もしていません!」


必死に反論する。しかし兵士たちは聞く耳を全く持たず、ついには攻撃をしようと剣を振り上げた。もうこれは戦闘もやむを得ないかなと思った瞬間、


「ちょっと待ってください!」


僕を含めその場にいる全員が声のする方ーーー兵士の後ろに注目が集まる。よく見てみると、さっき馬車から避難させられた女の子が大きな声で叫んでいたのだ。


「助けて頂いたのに礼もなく武器を向けるのはいけません!」


「お嬢様!こいつは危険です!現に見た目通りの歳とは思えない戦闘をしていたではないですか!」


当然のように兵士のひとりが反応する。


「そんなことは関係ありません。なんと言ったって助けていただいたのは事実なのですから。」


その女の子の一言で兵士が皆黙ってしまった。そしてこちらに足を進め目の前までやってくる。そして


「助けていただいてありがとうございました。私はエルミーナ・ルフレリオと申します。先程の無礼に対して謝罪を申し上げます。」


そう言って綺麗に腰をおって謝罪の意を示してくれた。それなら許さない訳には…ん?ルフレリオ?…!!


「まさか侯爵様のご令嬢だったとは!」


そうだ。僕が父さんや母さんと暮らしていたのがルフレリオだった。そしてルフレリオは侯爵様が収めている土地。となればルフレリオ侯爵のご令嬢で間違いないだろう。

するとご令嬢はニコッと微笑んで


「あまり気になさらないでください。それより先程の()()()()()()()()はどのようにして倒されたのですか?」


グイッと詰め寄って聞いてくる。ちょっといい匂いがしたような気がした。

というか、グレーターウルフ?


「話が見えません。グレーターウルフとはなんですか?あれはウルフですよね?」


僕の返答を聞いてキョトンとしている。しかし直ぐに


「何をおっしゃいますか!あれはグレーターウルフですよ!危険度ランクで言うところのCランクの魔物です。」


Cランク!?父さんから聞いた話だと確かウルフはEランクの魔物だったはずだ。ちなみにこの世界の魔物は冒険者ギルドによってGランクからSランクで分けられている。ざっくり説明すると


Gランク

冒険初心者でも一体一で倒せる程の強さ(兵士1人未満)

(例)ノーマルスライム


Fランク

冒険初心者のパーティか冒険中堅者が一体一で倒せる程の強さ(兵士1人分)

(例)レッサーゴブリン、レッサーコボルト


Eランク

一人前の冒険者が楽に倒せる強さ(兵士4人分)

(例)ウルフ


Dランク

一人前の冒険者がパーティを組んで楽に倒せる強さ(兵士10人分)

(例)オーク、デス・スケルトン


Cランク

一人前の冒険者がパーティを組んでも苦戦する強さ(兵士25人分)

(例)グレーターウルフ、オーガ


Bランク

一人前の冒険者のパーティが3つほど集まれば倒せる程の強さ(兵士80人分)

(例)リッチ


Aランク

伝説的パーティでやっと倒せる強さ(兵士200人分)

(例)ケロベロス


Sランク

国軍が出動し甚大な被害が引き起こされる前提の戦闘で何とか倒せる強さ(兵士1000人分以上)

(例)フェンリル、エンシェントドラゴン


とまぁこのように分かれており冒険者のランクはこれを基準に決められている訳では無いので、冒険者ランクがSランクでもリッチに苦戦する人はいるのだとか。(父情報)


つまり僕がCランクの魔物を倒したから必要に迫ってきたわけか。納得


「昔から魔法は得意なのですよ。なので得意の魔法で倒しました。」


「そうでしたの。あまり聞き出すのはよくありませんわね。申し訳ございませんでした。」


「いえいえそんな。」


本当に申し訳なさそうにするから何も言えない。


「ところでこの道を通られているということはあなたも王都に向かわれるのですか?」


「はい。今確かに王都に向かっております。」


すると申し訳なさそうにしながら


「もしよろしければ私も一緒に馬車に乗せていただけないでしょうか?」


………へ?

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