第6話 石の行方
「今なんて言ったッスか?もう一度言ってほしいッス。あっしの聞き間違いだと信じてるッス」
「あの……その……」
ニーチェの寝室でレイラが申し訳なさそうにゴニョゴニョと口ごもっている。自分の非を2度も言うのは少々辛いものがある。
「拙者が代わりに言おう。魔法を使える石を無くした」
「聞き間違いじゃなかったッスか。まぁ別にいいッスよ〜。それは金ロリにあげたから捨てようと無くそうと自由ッス」
以外にもお咎め無し!ワシの目からしてもかなり稀少の部類だと思っていたがこれならば
「そこで……だ。もう一つ作っては貰えんだろうか?」
倍プッシュを提案する!
「かーーつ!!かつかつかつ!!カツーーッスー!」
ニーチェが突如奇声を発しはじめた。
「喝のことか?ニーチェ殿。喝はそのように使うのではない」
「うっせーッス!うっせーッス!あれ作るの本当に大変なんスよ!それを壊したならともかく無くしたからまた作れ!?まずは探しに行けッス!」
もっともだな。……無くした場所は心当たりがあるが
「探したがなかった」
「イギギギ!せめて申し訳なさそうな顔しろッス!…………ん?ひょっとして……金ロリは持ってないッスよね?いつ無くしたッスか?」
「ごごめんなさいですわ!町の外に出かけて……家で気づいた時にはありませんでしたの……」
フムフムとなにやら思案している。禄な事を考えていないな。
「シノブンと鉄メイデンは金ロリと一緒に帰ってきた……だったッスよね?」
「そうですね……散歩していたら偶然遭遇しました」
そう言うことになっているな。レイラは本気でメイデンがいないと思っていたし、手を出したのもワシ達ではなく先代様だ。
「……盗まれたんじゃないッスか〜?」
ーーーー
…………
………………
「それではバル坊やをここへッス!」
「なんの真似?僕しばらく一人になりたいんだけど?」
「犯人は〜…………この中にいるッス!」
「はぁ、これなに?説明してくれない」
「お前たちが狼退治をほったらかしてイチャイチャしてる時まで石はあったッス!お前は容疑者の一人ッスよ」
バルザックは冷めた瞳でニーチェを見つめている。 バルザック自身からも色々聞きたいことがある。が、目の前の女ニーチェは絶対にはぐらかしてくる。何故悪魔がニーチェを知っているのか。ニーチェのことを話す悪魔は何処か怯えていたし……石を盗んだと勘違いし、偉大だとも言った。
「石は悪魔のエイジスが呑み込んだよ。その後はたしか――」
バルザックは途中で言葉を切った。真正面にいる少女レイラが涙目で見つめているのだから。
「バルザック……わたくしは信じてますわ。でも間違いは誰にでもありますから……その……返していただければ……わたくしお友達を信じてますの。でもお友達の物を盗むのはダメなことですわ」
「いや、僕は盗んでないよ。悪魔の身体と一体になって溶け落ちたのか?そこの馬鹿女。そんなことあるの?」
バルザックはニーチェに目を向けたが当人はぼんやりと窓の外を眺めている。間違っても馬鹿女は自分ではないのだから。
「そこで外を見ながらアホ顔晒してるお前のことだよ」
「………………え?あっし?馬鹿女ってあっしッスか?」
「お前以外この部屋に馬鹿はいないだろ?」
「ほぉ〜 『まぁ!利発そうなお子さんね!永遠の神童ね!』で通ったあっしを馬鹿女?」
ニーチェは目を見開きバルザックの両肩にそっと手を置いた。言い知れぬ圧迫感。ここに来てバルザックは虎の尾を踏んだのだと理解した。
「金髪ロリ!石は何処にしまってたッスか?」
「……糸を通して胸にしまってましたわ」
「胸ッスか〜。バル坊や〜。金髪ロリのちっちゃなお胸ちゃんにしまわれた石は暖かったッスか〜?」
「…………知らないよ。僕は触ってないんだ」
「触ってないッスか〜……正直に答えるッスよ〜。お 前 は!金髪ロリに……一切触れてないんスね!?」
「クソッ、誘導尋問じゃないか…………触って…………ない」
「はいダウト」
バルザックは呆れたように腰をあげ、この場にいる白を証明できる者に目をやる。
「メイデン。僕の心を読んで石を盗んでないと証明してくれよ。流石に心外だ」
「別に構いませんが私が黒と言ったら納得していただけるんですか?自分の都合の良い結果だけを受け止められる気ではないですか?」
「な……なに言ってるの?あと、怒ってる?」
「怒ってませんよ!あの石はお嬢様の大切な物です!お嬢様の慈悲も私の憤怒も限界ですよ!速く返却なさい!貴方様の心は真っ黒ですよ!お嬢様の温もりを返しなさい!」
「う……嘘だろ!?……れ……レイラさん!僕は盗んでない――信じ……」
「ぴぇーー!わたくしはバルザックを信じてましたのにー!大嫌いですわー!バルザックなんて大嫌いですわー!」
「レイラさん落ち着いて聞い――「びぇぇ〜〜!!!」
レイラの雛鳥のような鳴き声をあげながら泣きだしてしまった。
バルザックはよろよろと椅子にもたれかかりガックリと項垂れた。
『バルザックなんて大嫌いですわ』
その1言がバルザックの気力を奪い尽くした。
魔法など一切使っていない。しかしその言霊はバルザックの心を破壊しつくし、癒しの魔法など受け付けない威力をもっていた。
「バル坊や……頭脳明晰、雪月花なあっしを怒らせるとこうなると覚えておけッス。なにか言うことはあるッスか?」
「僕は……盗んでません。信じてください………り…利発そうなで……キ 綺麗なニーチェお姉さん」
「その本心が聞きたかった!でもあっしはプリチー系に所属してるッスよ!次からは可愛いニーチェちゃんと呼べッス!次!容疑者2!鉄メイデン前へ!」




