⭐︎第3話 囚われの女神
エイジスを地獄に落としたインユリア。本来ならば嬉々として喜びを爆発させるがその表情は暗い。
『あの馬鹿女〜。地獄に行って後悔しろ!なにもしなかったクズが!ただ才能を持っていただけの無能が!ふざけるな!』
なにもない白銀の空間に当たり散らす。当てる物も無ければ散らす物もない虚無の空間。
空間の一部が僅かに輝き男の声が聴こえてくる。
「女神様!お聞きしたいことがあるのですが」
『私は今機嫌が悪いのよん。後日いらっしゃい』
「はい!申し訳ありません!」
『…………要件だけ言いなさい。答えるかどうかはこちらで決めるわ』
「悪魔と名乗る者がいまして……よろしければ確認をしてほしいのですが……」
インユリアのイライラは増していく。自称悪魔など吐いて捨てるほど見てきた。その中に本物などいない。今いる悪魔はクズ共に捕まるほど弱くはない。
だから今回も見るまでもなく
『偽物よ。そもそも貴方達はなにを見て悪魔と思ってるの?少しは…………努力……しな……さい』
最後の言葉はとてもか細く、男には聞き取れなかった
「女神様?」
『…………!なんでもないわよん!でもちゃんと見極めなさい!私は忙しいのよん!貴方達はなにを見て悪魔と思ったの?』
現在外見から悪魔と判別出来る者はサタンだけ。クリーヴァも怪しいがアレを悪魔と呼べる者は本当に魂を見極める目を持っている。
「自ら悪魔と名乗り……両腕を無くしても……痛みを感じる素振りを見せず……お手を煩わせて申し訳ありません」
『……見せてみなさい』
「はい!」
男の威勢の良い返事と共に光が大きくなり、縦横1Mほどの四角い鏡が現れた。そこに映し出された両腕を無くしブツブツと呟くシルクハットを被った男。
『ブイ!?』
ーーーーサイド インユリアーー
間違いなくブイだった。あり得ない光景を目にしている。
『だ……誰が?……エイジスを殺した……バルザック.ガーソン?』
「いえ!報告ではタウロス.カーターと聞いております!一撃でこの男の両腕を破壊して廃人に追い込んだ悪魔のような男です!」
タウロス.カーター?……あぁ多分タウロス.ヴィントね。ヴィント家の出には《英雄の加護》を与えているけど使った形跡はない。魔法適正は……D。普通の一般人ね……可能なの?あのブイを一撃?
知恵を巡らせ不意を付けば一撃でブイの腕を破壊することは不可能とは言えないだろう。ブイを廃人にする事も可能かもしれない。
しかし……ブイならば……悪魔ならばあの程度の傷は数秒で復活する。
ヨダレを垂らしながらブツブツ呟き続けるブイ。
ブイに魔力が宿っていない。世界から悪魔に供給されるはずの魔力を纏っていない。
タウロスがそれを消し飛ばしたのか。ブイが力を持てないように世界から拒絶させ、隔絶させている。そのうえで……ブイの命だけは生かし続けている。
『こ、こんな事……人間では……誰であろうと無理よ』
お師匠様ならできるかもしれないけど……お師匠様ではない。お師匠様はもういない。お師匠様は
貴方じゃなかったわよ
地獄に落ちたエイジスの言葉が酷く耳に残っている。
『お師匠様の……後継者?』
絶対に違う。適正Dはドミナートルを染めることが出来ない。お師匠様は絶対に嘘をつかない!なにかおかしいことになっている。
『…………その男はブイの名を持つ悪魔。捕縛した男……タウロス.カーターだったわねん。悪魔を滅ぼしてないから……なんでもいいわ!何らかの功績を作って私の前に来られるように計らいなさい!あと暫くは来ないでくれるかしらん?』
「わかりました女神様!」
これで邪魔者はいない。考える時間は十分過ぎるほど有り余っている。
まずタウロス……お師匠の後継者はあり得ない。エイジスは『あの娘』と言っていた。タウロスは男。ドミナートルの示すと通り……でもブイを一撃なんてどうやったの?
聞くか?エイジスに……エイジスはなにかを知っている。私自ら地獄に……
天を見上げる。その存在は変わらずそこにいる。なにも言わず私を覗いている。
『……地獄に赴いてもよろしいですか?』
『 』
その存在はなにも言わない。良い訳がない。仮に――の許可がおりても閻魔王の許可もいる。何年かかる?
……せめて様子だけでも……
あの存在は覗いているだけだ。極稀に覗いているだけ。干渉しない。干渉してこない…………
手鏡を下に向け光を集める。ゆっくりと地獄の光景が映し出された。
こちらが覗くだけなら……規律違反にはならない。
地獄で苦痛に歪むエイジスを拝むだけでも……私は満足できる。そのつもりだった。
『なによ……これ……これが地獄?』
「その男は遺言になんと言ったと思う?威勢良く『始め!』じゃぞ!ワシは腹筋が千切れるかと思うたわ!」
「刀様を前にして威勢を保てるとは……その男もなか中の硬派ですな!」
「ア……ハ……ハハハ」
「ん?娘さん。お茶のお替りかの?」
「あ……はい!いただきます」
「恐れながらこの閻魔が……失礼致します」
「あ、閻魔さんありがとうございます」
「ほう……茶柱を3本も立てるとは腕をあげたのう?」
「これも刀様の指南のおかげ……これからも我等に御指導ご鞭撻のほどをお願い申し上げます」
「しかし閻魔よ。娘さんを励ます為の茶会を覗く不届きな輩には気付けんようじゃのう?」
『…………!?』
慌てて手鏡を叩き割った。
気づかれた?
ってか……あの状況なに?なんでエイジスと閻魔王が仲良くお喋りしてるの?仲良くじゃない。閻魔王がエイジス程度に敬語を使っていた。
なにが……あったの?
もう考えたくない…………仕事サボって寝よう。1ヶ月ぐらい寝よう。バルザック.ガーソンに加護を渡したりと仕事はたまるけど……お休みなさい。
↓地獄の責苦を全て免除され閻魔王との謁見を上座で許されたエイジスさん
「(鬼をも酔わせるって言われている伝説のお酒飲んでみたい……)はい!お茶おかわりお願いします!」
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