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 第1話  ここではない世界へと

 

 ーーーー 

 ーーーー


『やっと目覚めたかしらん?エイジス、貴女はちゃんと挨拶したいから待っててあげたのよん。』


 そこは一面が白銀の世界。


 ワタシは……あの青年相手に全力でも負けて……坊やに魂を開放されて………それから……!?


「インユリア!会いたかったわ!500年間!貴女を恨み続けてた!」

『恨む?随分と勝手なのねん。悪魔を殺して回ってたんだからん。次の生は悪魔に決まってるでしょう』


「お前が振りまいている加護……アレのせいでワタシは……みんな、みんな狂ってしまった!それが許せない!許さない!」


 そうだ。コイツだ。どれだけ狂ってもインユリア。コイツに対する恨みだけは忘れたことはない。

 力ある者に加護をと言う名の呪いを与え、使えば使う程、人でなくなる呪いの塊。


『対価もなく力を振るうなんて許されない。それを理解できないお馬鹿さんはいずれ後悔するのよん。でも貴方達はニーチェのおかげでマシな部類じゃないのよん。サタン達なんてブイくらいよ……理性と生前の姿を保てているのは」


 ……インユリアの言うとおりワタシ達は加護を使う機会が少なかった。ニーチェが自ら殆どの悪魔や魔物を殲滅させていたから。


 魔法と違い簡単に与えられる力に酔いしれたサタン、セス、クリーヴァは……それに、



「おかしいと思ってたのよ、ブイになにかしたのも貴女ね!」

『ブイ?彼がどうしたの?私は世界の様子を探れないから知らないのよ。興味もないし。さて……人間を殺した者はどうなるかわかるわよねん?』


 目の前の女は余裕の笑みを崩さない。本来ならば死んだワタシ自身はなに1つ喋ることなく次の決を受けいれなければならない。


 今ワタシが生前の……人間だった姿を取り戻しているのは


 コイツの悪趣味故


「………………」


『ここより更に下。地獄で永遠の責め苦にあいなさい!アハハハハ!キャハハハハハ』


 目の前の偽物の女神は笑っている。ワタシではなにもできない。でも……その笑みを……




「…………貴女じゃなかったわよ」



 せめてその笑みだけでも崩してやる!




『……なに?ちゃんと説明してくれないかしらん?』


「始まりの魔法使い、シグ様の力を継ぐ者は貴女じゃないって言ってるのよ!貴女はドミナートルを黒く染めても資格を持っていない!インユリア……不正の意味名を持つ者にシグ様が力を与えられるはずがないわ!」


『その意味名は魔法文字(ロストワード)よん。また1人……私の意味名を知る者が消えてくれて清々するわね。それに黒く染める者。魔法適正Gは全員殺すように言っているわよん。7歳を超えて私の前に現れた人間はいないわ。嘘を言うなら――』


 インユリアの言葉が止まった。思い当たる節があるのか……それとも……それでも、


「私は見たわよ。あの()よ。あの娘は不条理な死を受けない運命を持ってる。だからはワタシは喜んで地獄へ行くわ。インユリア。地獄で貴女を待っててあげる」


 インユリアの表情が醜悪に崩れていく。目尻は釣り上がり憎悪を滾らせワタシを眼力だけで呪い殺すように。



『……この馬鹿が……私を怒らせやがって!規律なんか知ったことか。お前はそのままの姿で地獄に送ってやる。痛みは魂に留まらず肉体すらも永遠の苦痛を味わいなさい。貴女まぁまぁ美人だから鬼達は喜ぶかもね。鬼達に犯され続けても泣いちゃダメよ〜!』


 インユリアはなにかを探すように……確認するかのように天を見上げ息を吐ききった。


『でも〜、貴女とは知らない仲じゃないんだし今謝れば許して……そうだわ!地獄行きはやめにしてあげるわよん!新しく人間としての生をおくりなさい』



「え?」


 死んだはずの心臓が跳ね起きる。意味をなさない心が躍動したのを感じた。



『うん!それがいいわねん。貴女はエイジスとしてではなくて新しく楽しく生きてみなさい。…………そのかわり―――黒く染めた者。その娘の名を教えなさい』



 動悸が激しい。ワタシを……ワタシ達を陥れた張本人。それがワタシだけは助けてくれると。


 でも……


「ワタシは――」

『まぁ嘘なんだけれども!貴女の困惑した表情を、希望が射した表情をみれて満足よん。毎晩薄汚い鬼達の慰み物になれるなんて良かったわねん。愛しの子や孫を喰らって薄汚く生き続けた貴女にお似合いよ!喜んで地獄に行くのよねん?当然よ!天国にいる子と孫は貴方に会いたくないでしょうからね!アハハハハハ!』




 ワタシの身体が更に獄へと落とされる。本来ならば魂だけで済んだはずなのに。でも


『お師匠様の言ってたとおりねん!貴女は……エイジスは世界に対してなにも影響を及ぼさない。貴女はいても居なくてもどちらでも良かったのよ!』



 なにも後悔はない。なにも……悲しくは……ない。


 ワタシは……どこかに意味があったのだと





 あの金髪の少女。名前はわからないが……きっとシグを……シングルの名を継ぐに相応しい名前なのだろう。





 そう  信じている





 ああ……地獄はどんなところなのだろうか……ジュデッカに少しだけ聞いたことがあるけど……怖い。


 



「なんじゃ?このような荒れ地に麗しき一輪の華が咲いておるのう」


「ひっ!?あ……あ  あ」


 思わず竦み上がり声が漏れた。なにが起こっても怯えるような情けない真似はしないつもりだった。それでも……刻まれた恐怖は拭えない。


「怯えさせてしまったかのう。ワシの旧名は柊刀(ひいらぎかたな)。前世では柊流12代目当主、柊忍の名を継ぎ、何故か極悪人として地獄に落とされてしまった者じゃ。しかしようやく合点がいったわ」


「あ あ あな あなた は」


「お主のような綺麗な娘さんを言葉も出せぬほどに怯えさせてしまうとは。ならば確かにワシは極悪な罪人じゃわい!閻魔の奴に謝罪せねばならぬのう!カッカッカッ!」 

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