追憶の欠片 エイジス
夢を見ている。ワタシは夢を見ている。
ワタシは夢を見ていたかった。
薄暗く光が差し込まない部屋。日の光ではないなにかが差し込む不思議な部屋に老い先短い老婆とワタシ。
『いいのかい?あんたがいても居なくても世界に影響はもたらさない』
「ワタシもお役に立ちたいんです!」
老婆は銀のグラスに自らの血液を垂らし、それを私自身に差し出す。
『大前提として、魔法は本当に叶えたい願いだけは絶対に叶えない。アタシがそう創った。だからアンタの願いは自分の力で叶えるしかない。それだけ覚えときな』
目の前の老婆。不可能はないと周りに言わしめる魔法使い。始まりの魔法使いとも
世界を導く賢者の師匠とも言われていた。
この老婆はもうすぐ死ぬ。明日かもしれないし。今この瞬間にも死にそうだ。
そうやって、この老婆はもう。何百年生きているのだろうか。
まだ魔法が浸透していない時代。限られた極僅かの……現代とは比べ物にならない魔法使い達が奇跡的に、偶発的に揃った時代。
『今この瞬間からアンタの歯車は変わった。今日からアンタの名はエイジスだ』
「ありがとうございます。シグ様」
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「いいッスか?あっし達はインペリアルクロスと言う完璧な陣形で戦うッス!全てにおいて完璧なあっしを中心に置き、先頭にシャイボーイのタナトス!右方に死体大好き野郎のジュデッカ!左方に何も取り柄がないロクシリーヌ!新入りのエイジスは一番安全な後方ッスよ!」
「宜しくお願いします!足を引っ張らないように頑張りますので」
「セスの 知り合いなんだから あっちに行ってよ。 はっきり言って 邪魔」
ワタシの意気込みはメンバーの中で1番小さな女の子、ロクシリーヌに砕かれた
「おいロクロリ!新しいメンバーなんだから仲良くするッス!お前があっちに行っても良いッスよ!婆ちゃんにはあっしから言っとくッス」
「え? ごめんなさい。 ニーチェ姉様 あたしを嫌わないで 嫌わないで」
「あっしじゃなくてエイジスに謝れッス。あと引っ付くな!」
ニーチェの言葉に従いこちらに近づき
「その ニーチェ姉様が 謝れって 言ってたから ごめん なさい」
「あ、貴方達の邪魔にならないように頑張るから……仲良くしましょう」
ロクシリーヌに手を差し出すとしっかりと握りしめてくれた。満面の笑みをこちらに投げかけ
「ニーチェ姉様に 色目をつかったら 許さないから。 胸にたくさん 脂肪つけて みっともない。 ニーチェ姉様の 慎ましい胸を 見習ったら?」
しばし固まる私を尻目にロクシリーヌはニーチェの隣に駆け寄り嬉しそうに喋っている。
「ちゃんと謝れたッスか〜?また変なこと言ってないッスか?」
「うん。 物分かりが よかったよ」
「最初は戸惑うけどそのうち慣れるよ。一癖も二癖もある奴等ばかりだからね」
「ジュデッカさん……はい!わかりました」
「さんも敬語も要らないよ。僕たちは仲間だろう」
世界中で彼らの名前を知らない人間などいない。異常なまでに突出した人たちが互いに手を組み、1つの目標を掲げている。
「距離……5キロ先にいるよ。どうするの?エイ……エイジスの力を試してみるのもありと思うけど」
先頭に居る傷だらけの男タナトスがニーチェに尋ねた。当たり前だが人を束ねられる存在は認められなければならない。そしてニーチェはその素質は十分過ぎるほど
「あっしが一番乗りッス!一番槍ッス!あっしに続けー!全員突撃ーー!」
ニーチェは風のような速さで駆け出した。瞬きの間に姿が消え去り私は唖然としつつ
「ニーチェ姉様 格好いい…… ハッ!ニーチェ姉様の勇姿を 目に焼き付けなくちゃ!」
次いでロクシリーヌが走り
「僕達はゆっくり行こうか」
「え?バラバラになっちゃったけど陣形とかいいんですか?……いいの?」
「いつものこと……急いでもゆっくり行っても同じ。大体ニーチェが終わらせてる」
…………
「遅ーーい!遅いッス!待ちきれなくてもう悪魔を殺しちゃったッスよ!あとは逃げ惑う雑魚しか残ってないッス!」
私がニーチェの指さす方へ眼を向けるとズブズブと地面に飲み込まれる人型の……
「悪魔を……凄い。やっぱり凄い」
「おべんちゃらッス!エイジスはあっしの活躍を見てないッス!ちゃんと全員突撃って言ったのに……」
「ニーチェ姉様 あたしは見てた。 いつも以上に綺麗で 格好良かった!」
「…………もういいッス。悪魔は殺したから後は、ここいらの魔物はみんなで消滅させてやるッス」
ニーチェが両手を広げその場で軽く跳ねた。綿のようにフワフワと浮き上がり。フワリと地面に着地した瞬間。
「 Accel Down
いっけ〜ッス!野郎共と野女〜!君達に決めたッスよ!」
ニーチェの魔法が発動され周囲の世界が改変されていく。
「かハッ あ あ 」
呼吸が上手くできない。
足が動かない。手も動かない。
身体中の器官が正常に機能してくれない。
時間をかけてなんとか……なんとか眼球だけを動かせた。4人がワタシを見ている。ワタシはなにかしてしまったのだろうか……取り返しのつかないなにかを……
「無理に動かないほうがいいよ。洗礼みたいなものさ。僕達一度は全員やられたからね」
「是はやられてない。跳ね返してやった」
「ニーチェ姉様の 愛を 受け止められないなんて タナトスは不幸ね 」
「ん。流石に大丈夫とは思うッスけど突撃して死んだらセスと婆ちゃんに会わせる顔がないッスからね。今日は見てるッスよ…………ってかお前たちは突撃ッスよ!退却も傍観も許可してないッス!」
3人は散らばり10分後に戻ってきた。タナトスは全身の傷を更に増やし、ロクシリーヌはニーチェに駆け寄り詳細を報告して、ジュデッカは魔物の血にまみれ笑みを浮かべていた。
世界中の悪魔や魔物を殲滅する為に手を組んだ者達。ワタシがその一員になれたことは光栄だと思っている。
みんな変人ばかりだがワタシの大切な仲間達。
ブイ&ニーチェの感謝とおまけ
「えっと〜、ブクマしてくれた読者さんありがとうございました!…………大丈夫かな〜?よし!」
「ブイブイはどんだけジルジルに怯えてるッスか?恥晒しもいいとこッスよ」
「お前はやられたこと無いからそんなこと言えるんだよ〜。あんなの無理だって〜…………マジで……」
「え!?ブイブイは今回のあっしの戦チラを見なかったッスか?超強いンスよ!激強ニーチェちゃんッス!」
「なにセンチラって?あれはやっぱりニーチェ本人なのか〜?」
「当たり前当たり前!ってかブイブイも出てないだけで知ってるはずッス!」
「この時代背景は5~600年前だけどお前の年齢……」
「…………あ。やっぱり別人ッス。あまりにも可愛いから勘違いしたッス!この話し終わり!」
「ふ〜ん。別に良いけど、なんでまだエイジス出てるの?アイツ死んだクセに出しゃばりずきじゃね?」
「んなのあっしに聞くなッス!あの頃のエイジスは可愛かったッスね〜。素直で唯一あっし言うことを忠実にこなしてくれたッスよ〜……ん?なんスか その目は?」
「お前は少しだけ馬鹿になった気がするよ〜」




