第36話 膨れ上がる幻想
ブイがアルフィーの町に向かって歩いている。身体のどこにも異常はなく、全てにおいて異常しかない。
「オレは……誰かに……なにをするんだ」
目的もわからない。足に力が入らずフラフラと町に向けて歩いている。
「オレはブイ……覚えている。オレは……悪魔。覚えている。何故身体中から警告が出ている?魔力が……ない。わからない。わからない」
「ちょちょ、お前大丈夫か?」
入り口付近で悪党顔の男に駆け寄られた。自分が心配される謂れなどない。いかに顔面蒼白で今にも死にそうな顔付きをしていても本人にはわからない。
「お前……タウカす……だったか?オレはなんで知ってるんだ?何故お前を覚えてないんだ?」
「許可証あるか?持ってなくても詰め所で休ませるから……肩を貸そうか」
タウロスがブイの腕を持った時。
「あ……あ……うわぁぁァァァ!!!やめろーー!止めてくれ!止めてくれ!もう止めてくれ!」
「え!?うわぁぁ!」
ブイの悲痛な叫びと共にタウロスは恐怖の叫びをあげた。ドサリと地面にヘタリ込むブイ。呆然としながらブイから離れた腕を持ったまま立ち尽くすタウロス。
「やめ……あ……なにを止めてほしいんだ……オレは……覚えている。なにを覚えていない?オレはブイ。オレは悪魔……覚えている……思い出せない」
「タウロスさん、どうかしましたか!…………タウロスさん。貴方、許可証がない人は追い出す決まりでしょう。それが腕を引き千切るなんて……人間をなんだと思ってるんですか!」
入り口見張りの兵士が冷たい視線をタウロスにぶつける。傍から見ていれば死にそうな旅人がやっとこの町についた瞬間。町を治める存在に腕を奪われたのだ。まさに外道の所業。
「俺……なにも、俺はなにもしてない!そ、それにこの人は自分で悪魔って言ってた!」
「なに言ってるんですか!悪魔みたいな残虐な行為をしていおいて!」
…………
……………………
「え?その話しを信じろって無理がありませんか?触れただけで腕がもげるなんて悪魔ではなくガガンボではありませんか」
必死で弁明するタウロスに対して冷め切った表情を向けるメイデン。因みにガガンボとは蚊の一種で貧弱さは割愛する。
「誰かに嵌められてるんだ……そうだ!ヒイラギさんの仕業ですよね!俺が悪魔封印に選出されたから前もって死にかけの悪魔を用意してたんでしょう!」
「拙者は何もしていない。悪魔を捕縛とは畏れ入った、タウロス殿は何処まで高みを目指すつもりだ?」
「全然畏れてないじゃないですか!あぁ〜もう!この人が悪魔でも人間でもヤバいことになる……なんとかしなくちゃ……たまに外に出たらこれだよ!」
タウロスは頭を掻きむしりながら自室に戻り引きこもってしまった。
「タウロス殿は……拙者の心眼で見る限り困っていたな」
「そうですかね?よくわかりませんが滑稽極まりないのは確かです」
「タウロス殿には随分と世話になっている。陰ながら力を貸すとするか」
「フフ、シノブさんは優しいですね」
……
…………
……………………
後日自ら悪魔自称するブイは王国首都に引き渡され。とある方法を使い、ブイの名を持つ悪魔と確定された。
その報せは国中を駆け巡り国外まで響き渡り11年振りに世界中が沸いた。
「なん、なんじゃ……こりゃー!」
数日後の新聞に目を通していたタウロスが素っ頓狂な声をあげる。内容は至って事実。
《女神のお告げによりエイジスの名を持つ悪魔が滅ぼされた。滅ぼした人物はバルザック.ガーソン。まだ10歳の少年だが彼は魔法適正Sと言えば納得がいく。やはり人々とは一線を画しているのは間違いない。
11年前に悪魔を滅ぼしたメイデン.トゥリー(現メイデン.カーター)も悪魔を滅ぼしたのは10歳の時だった。彼には国から勲章が送られるそうだ。アルフィーの町の誇りバルザック.ガーソン。本人のコメントが貰えなかったのは残念ではある》
タウロスがワナワナと震えている。この文章は問題ない。事実などタウロスにはわからない。それよりも
《そしてもう1つ。甲乙付けがたい程の功績。ブイの名を持つ悪魔を無力化し一撃で粉砕した男タウロス.カーター。彼については正式な許可を取り彼をよく知る人達からのコメントをそのまま掲載させてもらった》
《護衛 Mイストさんのコメント
『いつもは外に出ないのにその日だけは違いやした。そわそわしながら仕切りに外を気にしていて……今思えば悪魔が来るって直感が告げてたんでしょうか?悪魔襲来を被害ゼロで防ぐなんて流石ですぜい!』》
《彼と共に住む メイデNさんからのコメント
『愚兄……兄は常々これからは剣1本で殺っていくと聞いていましたが、1本拳で殺っていくと言う意味だったんですね。お見逸れしました』》
《同じく共に住む 0ラ様からの有り難いコメント
『愛の力ですわ!お兄様は愛ゆえにアクマを倒したんですわ』》
《最後にタウロス.カーター(旧タウロス.ヴィント本人からのコメント)
『俺は一日も鍛錬を欠かしていない。悪魔を捕縛したのも未熟と知っていながらも鍛錬の成果を実感したかったからだ。しかしこの程度では、まだまだ1人前の忍者への道は遠い。俺はもっと精進しなければならない。立派な忍者になるためにな!』》
《ニンジャがなんのことかは、わからないが彼には国王から直々に褒美が与えられるそうだ。アルフィーの町に住む二人の英雄。わたし達の誇り
筆者トーマス.ダウン》
「あ……俺……コメントなんて出してない……それに新聞だって情報規制させて俺に関する記事は書かないように言ってたのに」
「トーマス殿は拙者の知人だ。喜んでこちらの意を汲んでくれたぞ。タウロス殿は忙しそうだから拙者が変装して代わりに代弁しておいてやった。礼はいらんぞ、困っている者は見過ごせん」
「ヒイラギさん……なんて……ことを……」
「因みにその新聞は無料で国中に配りますので。読み書きできない方の為に代読師も派遣しました。これで有名人ですねタウロス兄様」
「メイデン……なんて……ことを……」
「お兄様、格好いいですわ!素敵ですわ!」
「レイラ……ありがとう はは すてきかー うれしいなー まいったなー…………本当……まいったな…………」
第二章 完
レイラ&ブイのおまけと感謝
「ほら。先程教えた通りに」
「嘘だろ〜?ブクマしてくれた読者様ありがとうございました〜。皆様のおかけで2章を終わることができました、っと〜。これでいいの〜?」
「もっと心を込めて感謝しないと……ん〜〜っと……あ!ほら!ジルが多少不満顔ながらも帰っていきましたわよ!ジル撃退に成功しましたわ!」
「マジかよ〜。こんなのわかるわけないじゃんか〜」
「わたくしもシノブ様も散々怒られましたのよ!ジルが怒らないように後書き初めての方はお教えしてましたのに……一緒に来た人は誰でしたの?」
「ん〜?最後がインユリアは覚えてるけどその前はずっとなにか被った女だったぜ〜」
「覆面かしら?……シノブ様?でもシノブ様は殿方ですし……他に情報はありませんの?」
「『お嬢様お嬢様』って言ってて会話は不可能だったぜ〜。ありゃオレと同じで気が狂った奴だ〜」
「気が狂ってるは酷いですわ!アナタみたいなアクマに教えなければよかったですわ!それはメイデ――」
「あ!あとさ〜、覆面じゃなくて多分子供用の下着だぜ〜。『お嬢様の脱ぎたて!お嬢様の脱ぎたて!』ってよ。汚ったねぇ〜シミのついた下着を頭に被る奴なんて関わりたくないだろ〜?」
「そ……そうですわね。誰かはわかりませんけどそんな人は早く死んでほしいですわ」




