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 審判


 ブイは破壊された片腕に目をやり忌々しく舌打ちをした。そして現れた最悪(ニーチェ)に対して必死で動揺を隠そうと努めながら。


「参ったッスね〜。これ目撃者のあっしまでヤバくないッスか?……ついでにあっしにやらしい事するつもりッスね!それがお前の本当の目的ッスね!」


「お前、まさかニーチェか?」


「あっしの名前まで知ってるッス!こんのストーカー野郎!」


 ブイは息を整えながらゆっくりと立ち上がった。対面には長い髪を三つ編みにした三角帽子の女。

 ブイの識っているニーチェであり、少し話した限りではまるで別人。


「いや、ニーチェがいる訳ないよな。お前どうしたの?オレだよ。ブイだよ。ブイ」


「………………」


 ニーチェはスタスタと歩き黒焦げのドーナツを掴み取った。高温の油に手を入れた事もあり手は焼け爛れそれに関して一切表情を変えない。


「あ〜あ〜シルシルおばちゃんの手料理好きだったんスけどね〜。馬鹿が邪魔ばっかりしやがって」


 ニーチェが目を見開いたままのシルエに手をあて瞳を閉じさせた。炭になったドーナツを不味そうに噛りながらブイを見つめる。


「……演技か?この町に潜り込んでたがイズヴィがいるのに平和なのはおかしいと思ってたんだ」


「はいはい。喋りたい事は全部ど〜ぞ。それが終わったら粛清ッス」


「…………エイジスに許可は取った。粛清対象はエイジスだろ〜?」

「もういいッスか〜?行くッスよ〜。」



 ニーチェは全身の力を抜き軽く跳ねた。


 ニーチェが地面に足をつけるまで1秒もかからない。




 故に  ブイに残された時間は1秒未満だ。




「待てイズヴィ!オレはお前に忠告しに来たんだよ!」

「はい。それがお前の最後の言葉……100年後におはようぐらい言ってやるッスよ


   AccelDown(アクセルダウン)



 ニーチェが音も立てず床と接地した。訪れることのない変化。変わることない世界。


「………………」

「……………………」


 お互いの時が止まっている。「…………それはまるで天使だ。天使のように可愛いニーチェちゃんが殺伐とした世界に降臨したのだ。人々の希望。その姿を見れただけでもブイブイは己の愚劣さに自ら――」


「あのさ、お前なに言ってんの〜?」


ブイは許されたのかと怯えつつもニーチェに目を向けニーチェはここに至り自分が魔法を使えないことを思い出し、


「こ、今回だけッスよ。あっしの慈悲深さは感謝して土下座しても足りないッスよ!か、勘違いするなッス!別にブイブイが好きだから許した訳じゃないッスからね!」


…………



「お前イズヴィだろ〜?」


「言うに事欠いて誰がイズヴィかぁ!あっしは夢を見続けていたかったのにこのボケ!ボケナス!バカナスビ!」


「だったらニーチェって事で話してやる。オレは目的達成したから帰るけど久しぶりに起きたのなら顔出してやれよ。ロクシリーヌとエイジス二人とも小便ちびると思うぜ〜」



「は?会ってねえッスよ!たかが1.2ヶ月会わないだけでどんだけ寂しがり屋さんなンスか?仕方無いとは言え、あっしの溢れ出るカリスマ性に頼りすぎるのもどうかと思うッスよ」


「…………300年だろ?」

「へ?」


「いや、ニーチェに会ったのは300年振りなんだけど〜、オレとかは気にしてなかったけど、そっちの奴等はずっと探してたぞ〜?」


「……記憶にございません。人違いです。あっしはうら若き娘っ子なので300歳超えた仙人お婆ちゃんではありません。むしろ見ろッス!このピチピチのお肌!水を弾くティーンのお肌!……あ、やっぱりそんなにエッチな目で見るなッス!」


「お前……頭大丈夫か〜?ってか300歳どころじゃないだろ〜……いや違うか。うん。お前は歳は取らないから年齢なんてないよな。んじゃ帰るわ。身体治らねぇし〜、多分《即激の加護》で魔力を取られたんだな〜」


「それ、未来から来た影響で魔力取られてるんスよ。誰かとの会話をトリガーに発動してる」


「はぁ、未来っておま、まぁいいや〜。俺からも一回忠告だ〜。この町に隕石群を降らせて壊滅させる作戦。アレは二重の意味で失敗するからやめとけってさ〜……はは、やっぱり俺は未来から来てんのかよ」


「……いつ?」


「あ〜っと、正確な時間は決まってないな。タウロスとメイデンがこの町から離れたら、だよ〜。ってかお前それ知らないならニーチェじゃねぇだろ。知らん人と話すなって言われてるからサヨナラ」




 ブイは2つの死体を尻目に席を立った。ニーチェ自ら並べたキレイに揚がったドーナツと炭と化したドーナツには一切手をつけず、


「……お前…………ちゃんと殺したッスか?」

「そこにある死体のこと〜?死体は死んでるから死体っていうんだぜ〜」


 ニーチェの真剣な目付きに並べられた死体を観察する。一人は一撃。遺体はキレイなものだ。


 もう1つはボロボロの死体。不意を打たれた訳でもないのに身体が怯え一撃をもらってしまった。

 しかも未だに回復しない。


「ジルジルがこんなにもボロ雑巾になった程度で終わりなら貰った力は本物じゃないッス。慎重に探りたかったッスけど……ブイが生け贄になったッスね。観測出来る代物なら良いッスけど。多分無理ッスよね〜」


 ニーチェは瞬き1つせずにボロボロの死体。ジルであった亡骸を見つめている。


「オイオイ〜。リビングデッドで復活する落ちか〜?」


「……………………」


 ニーチェは答えない。応えない。動かない。微動だにせずに止まっている。


「あれ?なんだか……前に……違う。今――おい!ニーチェ!」


 ブイの言葉は世界の何処にも響かない。一回の瞬きの間に。ニーチェは消え去り。世界にはなにも存在していなかった。





 ブイの存在が掴まれ。強引に引き釣り降ろされた。






ブイ&インユリアのおまけと審判



「なんだここは〜……オレは死んだのか?死ねたのか?」


「ここは後書きよ。本編とは隔絶された空間よ」


「ホンペン?それに……インユリア!……思い出して来た。思い出した!オレは何度もここに来ていた。そして何度も……何度も」


「私が言えることは1つだけよん。早くジルが満足する言葉を口にしなさい。でないと…………来たわよ」


「……ジル……ローレス……止め……グァァァァ!止め、なんで触われない!なんで……なにも効かない!何故何度も………………やめ」


「アハハハハハ!今回は一段と酷いわね。鼻も潰れて腕もないじゃないの〜。ここに来た誰もが口に出せた事がブイにはできなかった。それが貴方の敗因よ〜ん。誰であろうとこの空間においてジルに勝てる存在はいないと決まっているの!でも諦めちゃダメ!《審判》が発動された瞬間から世界でどれだけ頑張っても貴方が勝てる要因なんて1つもないの!

《審判》に従い不都合なことは壊され再生される!全部無駄なのよ!だから何度でも諦めずに挑戦し続けなさい!」


「…………インユリア……テメェの仕業か……わかる訳…………な」


「あら?世界に戻っちゃったわね。わかる訳ない……か、それもそうかも知れないわね。貴方が本編に出てきてから一度もおまけをやってないんだからわからないわよね?

この空間で受けた恐怖は僅かずつ蓄積される。貴方が受け続けたダメージは継続され続ける。いずれ貴方は負けることができるから安心なさい。



それではブクマに評価してくれた読者様……ありがとうございました」



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