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 ジャッジメント


 タウロスを殺したブイは悠々と町へと入り込む。目的は1つ。さっさとジル.ローレスを殺してこの町からおサラバするだけ。モタモタしていたら自分に危害が加えられる。


「エイジスに保険を打ってもらったけど〜イズヴィ怒らなきゃいいけどな〜と、ここだな〜」


 ジルの根城は把握している。今の時間は家にいない事も把握している。いるのは一人だけだ。ジルにとってそれは大切な存在。



 把握できない事は、何故知っているのかがわからない。知らないはずだった。しかしもう何度も足を運んでいる。



「あら?もう来たのかしら?ちょっと待ってね。今ドーナツを揚げてるからお皿を出しててくれないかしら?」

「………………」


 不意に開けられた扉に家主が見向きもせずに料理に夢中になっていた。ブイは静かに近づき真後ろに立った。


 口を大きくあけ人間など簡単に覆えるほどまでに、流石に気配を感じ取った家主は笑いながら後ろを振り向き


「ツマミ食いはお行儀悪いわよ。も〜……1つだけよ」



   「ニーチェちゃ――!?」

   「いただき――!?」



 突如出された名前に激しく戸惑いながらもつけられた勢いに抗えず



 ブイはジルの母親シルエを一息で食い千切った。膝から崩れ落ちるシルエに対して目頭を抑え考え込むブイ。


「ヤバい、ヤバい! なんだ!? ニーチェ? ニーチェ!? ニーチェの知り合いとかマジかよ〜。雰囲気的に仲良さそうだったぞ〜。どうする。逃げるか?」


……………


「逃げ切れる訳がない。ここで確実に殺す」


…………………………



「ただいまー!母さ……母さん?」


 ジルが帰宅するとすぐに異変に気付いた。部屋に充満している血の匂い。


「母さん……」


 警戒など全くせずにジルは部屋を探し回る。荒らされた形跡などまるでない。棚を物色された形跡もない。


「母さん……どうして……誰が……」


 その姿がジルにはすぐにわかった。上半身のない人間が台所で倒れている。顔などない。しかしそれは自分の母親だと気付くのに時間など必要なかった。



「先に来たのはお前か、オレは運が良い。じっくり痛ぶりたかったけど時間がないからさっさと死んでくれよ〜」

「貴方が……お前が母さんを……殺したの?」


「そこで上半身を無くして無様に死んでる女の半分はオレが食ってやった。不味かったぜ〜下半身は味付けしてじっくりと」

「殺してやる!殺してやる!」


 ジルは怒りに身を任せてブイの首を掴んだ。力を込める。殺意を込める。魔法を……加護を




「オレに触れたな?消え去れ


   vanishバニッシュ    」




「手が……私の……」


 なにも掴めてはいない。込めれてはいない。動揺するジルにブイは笑みを浮かべた。


「手だけでじゃないぜ〜。ちゃんと見てみろ。お前の左半身を消滅させた。お次は右腕だ」


「ヒッ!?」


 ブイはジルの右腕を軽く撫でた。それだけでジル腕は消滅していた。


「これが本物の魔法だ。堪能したか〜?」


 両手……片足を失ったジルはモゾモゾと芋虫のように這いずる。消えかける命の灯火。その最後の力を振り絞り母親の元へと。母親であった亡骸に身体を合わせ


「どうだ?後悔したか?死ぬ前にオレに何をしたのか吐いてから死ね!」

「私は……オマエなんて知らない。勘違いで母さんを……」


「い〜や、絶対にお前だ。今も力が無くなっているのがわかる。本当は頭以外を消滅させるはずが出来なかった。オレになにをした!オレはお前を目にすると恐怖しか感じない……何故だ!?」

「私はなにも……なにも知らないわよ!」


 互いに意志の疎通が不可能なほど喰い違う。どちらかが嘘を言っているのか。


「……もういい。お前は跡形も残さない。丸呑みにしてやる」

「……お母さん……お母さん……」


 ジルが最後にみた光景は大口に飲まれる自分自身。

 ジルがみた走馬燈は




 『これを 使いたい時に使いなさい』



 ジルはブイに飲み込まれ世界から姿を消した





     審判(ジャッジメント)




 



…………

……………………


「結局なんであんな雑魚を恨んでるのかわからないままだったな〜。力もそれなり……加護は…………即激の加護……だけ。まさか本当に知らなかったの〜?だったら最初に言えよ〜。オレ人間殺すの好きじゃないんだからさ〜」


 ブイは血の一滴まで喰い切ったジルの力を分析して不思議に思う。

 シルクハットを深くかぶりなおしその場から消え去った。残されたのはシルエの下半身だけ。



 ブイは町から遠く離れた場所に姿を現す。


「ニーチェにバレてないけど良いけどな〜。ま!バレても責任は全部エイジスに押し付けてやろ〜っと!アハハハハハ!………………」


 ブイの高笑いが不意に止まった。周りの全てが止まっている。ブイの――存在――が掴まれる。それは今まで何度も掴まれ続けここに来て初めて掴まれた。その都度忘れてきた。思い出せなかった。思い出せるはずがない。


 そしてようやく思い出す。


「あ……あ…………嫌だ!なんでオレは忘れていたんだ!手を出してはいけなかったのに!そもそも……何故オレはまたジル.ローレスを殺してるんだ!?…………………………」


 世界中の町が消え去った。人々が消滅した。空が消去され大地が虚無と化した。



 ブイを残した世界の全てが一切の音をたてずに崩壊した。

 


 崩壊した世界に残されたブイが落とされる。なにもない世界。




ーーーーーー



 崩壊した世界が創られる。

 何一つ変わらぬ姿を。

 何も変わらないはずが1つだけ変わった世界へと



ーーーー


「シルシルおばちゃ〜ん!おやつ食べに来たッスよ〜!金ロリの家で出される食事は健康に気を遣いすぎた薄味ッス!あっしのように濃密な時を生きる女は蜂蜜タップリな〜……」


 ジルの家へと意気揚々と足を運んだニーチェ。ここ最近の日課。おやつ後にジルの家へと赴きシルエと女の話しに花を咲かせる。それが今日は違った。


 台所で首を切られたシルエ。その隣で寄り添うように全身をボロボロにされてうつ伏せで死んでいるジル。


 そして片腕を破壊されて息を必死で整えているブイ。


「……さ、殺人現場に遭遇したッス!第一発見者あっし!そしてあっしの名推理によると犯人はお前ッスね!バッチャンの名に賭けてお前ッス!面倒だからお前にしとくッス!」


「ガ…ハァ……ハァ…イズヴィか……クソっなんで連絡しねぇんだよ。オレはこの女さえ殺せればよかったんだ。お前の邪魔をする気はない」


「さてはタウカスの腕をへし折ったのもお前ッスね!ん〜……それに関してはグッジョブ!」


 まるで事情のわからないニーチェは事情を全て把握したかのように親指をあげた。対してブイは


「……何を言っている?オレは……ジルに関する奴を殺して……オレは……どうなってる?なんでジル.ローレスが……オレの腹の中にいない?なんで……目の前で死んでいる?」


 今起こっている現実を理解していなかった。



 

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