第8話 書かれていた事が事実
「拙者が……不合格だと!?」
何処でミスをした?
魔法適正 C 問題ない
筆記試験 15点 大問題!
実技試験 50点 平均超え問題ない
合否をいち早く確認したワシ。隣のレイラは付き人と共に結果を確認しに行ってしまった。
「シノブ.ヒイラギお前カンニングがバレてるぞ。証拠が見つからないけどな」
声だけで誰かはわかる。拙者の理解者
「試験官殿、バレたとは?」
試験官はため息を吐きつつワシに真っ白の答案用紙を手渡す。筆記試験の問題か。全問見るまでもない。問1からして意味不明だ。
〈問1
1000人規模の町で上級魔法使い1名。中級2名。初級5名が治水を行う場合、最短で何日かかるか答えよ。また誰がどの魔法を使ったか示せ。(加護は無いものとする。)〉
…………ん?おかしいな?拙者は火の魔法と答えを書いた。意味がわからん。皆自信満々に火の魔法と書いておったが、
首を横にひねるワシに試験官がもう一枚の紙を手渡してくる。
〈問1
A君は焼きリンゴを作る為に火の魔法を使いました。では焼き芋を作る為には火の魔法か、水の魔法どちらを使ったでしょうか(※引っ掛けはありません。)〉
まさか……まさか…………
「お前がカンニングした相手は金貨30枚を払った特別枠の回答だ。そもそもお前とは問題からして違ったんだよ。」
「クッ……卑劣な罠を!計られたわ!」
よくよく問題に目を通すと○×問題ですらワシの答えは『チューリップ』だ。頭がお花畑過ぎる!軽々にカンニングに走ったワシの策略を見破る者がおるとは……侮れぬ!
「シノブ様…………メイデン!なんとかなさい!」
「畏まりました。お嬢様。」
合否発表を視て戻って来たレイラは付き人に指令を出す。レイラも特別枠なのだろう。
魔法適正 F
筆記試験 ー点
実技試験 ー点
試験を受けずとも合格するような逸材だ。もしくはこの世の中も金が全てだと言うのか。
そしてレイラ殿の助けを借りればワシも問題なく合格出来るのだろう。忍びなど必要ないと言うのか?
否!
「レイラ殿、気持ちだけは受け取っておこう。ここに書かれている事が全て。拙者は不正をしてまで合格したい訳ではない…………サラバ!」
「あ…………シノブ様」
その後1週間。シノブ.ヒイラギの姿を見た者はいない。
…………
…………………………
「今日から見習い魔法使いとして新たなメンバーが加わる。自己紹介をしてくれ。」
「タイラー.ヴィント!オレはすぐに見習いは卒業して上級魔法使いになる!邪魔はしないでくれよ!」
試験で1番の好成績を上げた男。
「まあ、早い奴なら半年で見習いを卒業する奴はいるな。遅い奴は3年たっても見習いだけどな。」
新入生以外の生徒がチラリと一人の女性を見つめた。相手はジルだ。ジルは恥ずかしそうに顔を俯く。
『下を向くな』
そんな声が聴こえた気がした。合格発表から1週間。一度も姿を見せずに姿を消した怪しい青年。ジルは周りを見渡すがいる訳がない。彼は試験に落ちたのだ。
「レイラ.カーター。お父様……パパとママの顔を立てて1日だけ来てあげましたわ。今日で辞めるから覚えなくていいわですわよ」
豪華なドレスを着たレイラが不機嫌そうに自己紹介を済ませる。レイラの目的はシノブ.ヒイラギだ。彼のいない学校などなんの興味もない。しかし無理矢理入学した手前、今日だけでもと説得され来た次第だ。
「ミシェル.ガーソンです。皆さんの足を引っ張らないよう頑張りますのでよろしくお願いします。」
次々と自己紹介を済ませ教員が声をあげた。
「以上10名が新しく見習い魔法使い第2班だ!」
「一人忘れておるぞ」
「お前……どうやって、いや、何しに来た!?」
教員が顔を強張らせながら口を開く。ジルは呆気に取られレイラは尊敬の眼差しを向けている。他の者は訳もわかっていない。
「試験官殿、いや教官殿。もう一度出席名簿に目を通してみよ。」
青年に言われた通り目を通すが目の前の青年の名前、シノブ.ヒイラギの名前などない。シノブが近づき名簿を擦る。
摩擦により浮かび上がる。
《シノブ.ヒイラギ》の名前が
「拙者の名前があるのなら拙者が此処にいるのは当然の事だ。何か問題があるか?」
「問題だらけだ!…………ちょっと待ってろ!」
教官が名簿片手に走り去って行く。もはや手遅れ。ワシが一歩先を歩んでおるわ。
空いた席に腰を下ろすとジルとレイラが近づいて来る。
「シノブ君、何処へ行ってたの?母さんも心配してたし私だってお別れの挨拶ぐらいしたいと思ってたし。」
「別れは暫しお預けだ。少し野暮用でな。拙者も家に帰る暇すらなかった。説明せずに姿を消したコトを許してくれ。」
ジルを見据え真っ直ぐに頭を下げる。家主に黙って何日も家を空ける。これが許されるべき事ではないのは承知のうえ。ジルは頬を掻きながら
「私は別にいいけどお母さんが…………」
「シルエ殿にも後で謝罪しておこう。そしてレイラ殿」
レイラに向き直る。レイラは体をビクリとさせ
「はい!シノブ様!」
元気よく挨拶をした。これ程元気がありながら
「残念だ。」
「え?」
「同じ学舎で共に切磋琢磨しようと誓った矢先レイラ殿が退塾するとは。」
先程のレイラの自己紹介はしっかりと聞いている。『今日限りで辞める』と。理由は聞く気はないが決意は変わらんだろう。
「あ……ちょっと……待って……えっと……」
レイラは狼狽しながら後方に視線を投げかけるといつの間にか付き人の女性メイデンが姿を現した。メイデンは表情を変えずに頭を下げる。
「申し訳ありませんお嬢様。退学手続きを済ませるのを忘れておりました。後程、私めに罰をお与え下さい」
「え?あ……そうですの?じゃあ辞めるのも面倒だからもうちょっとだけ続けますわ!」
「はい。旦那様もそちらのヒイラギ様もお喜びになられますよ。」
メイデンがワシに視線を送る。面白い侍女だ。此処にいる誰よりも心がある。そして主に仕えるその忠義…………似ている。
シノブ&レイラのおまけと感謝
「シノブ様!ここは何処ですの?」
「レイラ殿、ここはATOGAKI!HONNPENNとは隔絶された空間、ブクマや評価をいただければ召喚される」
「召喚?シノブ様、ブクマってなんですの?」
「いい質問だな。正しくは、ブック本 マーク印……忍者秘伝の巻物《虎の巻》を狙う者達だ。」
「悪者ですの!?」
「虎の巻は忍者全ての憧れ!ブクマとは忍者の卵の数と言ったところだな!フハハハハハ!」
「わたくしもブクマしたいですわ!シノブ様の虎の巻をブクマしますわ!」
ーーーーーー
「…………貴方達ちょっと適当過ぎるわよ。これでブクマ剥がれたら本当に怒るからね。
ブクマしてくれた方、本当にありがとうございました。作者はいつも一喜一憂しております!また次回があればお会いしましょう!」