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第30話  野盗団

 


「テメェ何やってんだよ!あんな小さい子……それに1人は服装からして何処かのお嬢様だ!すぐに捜索隊が派遣されるぞ!」


「え?でも冒険者じゃないし、今の時期にうろつかれたらこっちにも迷惑が」

「ハァ……もういい。とりあえず連れてこい」


 野盗のお頭はため息を吐きつつ少年少女を家に迎え入れた。バルザックは警戒しながら見渡し、レイラは興味深そうにキョロキョロしていた。



「お譲ちゃん達は……迷子はねえとして家出かなにかか?」


「僕達は魔狼の「悪党に興味があったからこの人達についてきましたの!」」


 隣のバルザックは小さな動揺を顔に出した。目で『全然違うでしょ?』と物語っているがレイラにはこの薄汚い建物に心踊らされていた。


「没落貴族か……こんな小さな子供が悪事に身を染めるしかないとは世知辛いぜ。しょうがねぇから見学していけよ。事情は聞かねぇからよ」


 …………

 ……………………


「見てくださいませ!薄汚い服ですわ!それにブカブカでみっともないですわ!」


 ツギハギだらけの服に着替え嬉しそうにピョンピョン跳ね回るレイラ。対してバルザックは普段通りの軽装。ドレス姿は流石にどうかと思い1番小さな服を貸し出されていた。


「……レイラさん、いつまで此処に居るつもりなの?」

「え?依頼に期限はありませんからずっと外に出ていいんではありませんの?」


 たしかに緊急性がないし僕が依頼を受けているから失敗扱いになるのはかなり先だ。

 でも姉さんも心配……するだろうし、


「レイラさんは大丈夫なの?元々3日ぐらいかかる予定だったけど心配されないの?」

「1ヶ月ぐらいなら心配いりませんわ!」


 何処からそこまでの自信が出てくるのかわからない。早いところこんな場所は出て魔狼退治に行かないと――


「2人は行く宛が見つかるまでは俺の部屋を使えよ。流石に女子供をむさ苦しい男共と一緒に寝させるわけにはいかねぇからな」


 なに!?レイラさんと一緒の部屋だと!?


「ありがとうございます。迷惑はかけないようにしますので」

「おう!従者の坊主はしっかりしてるな!没落したからって主を見捨てないとは気に入ったぜ!でも簡単な手伝いぐらいはしてもらうからな!」



 バルザックとレイラは各々が出来ることをし始めた。野盗達も小さな子供なので大して期待していなかったが



 バルザックは錆びた短剣を入念に品定めして小さな魔力の残り香を探り当てる。その一点に魔力を通し錆剣が淡い光を纏い魔剣へと変えていく。


「――ふう。はい。後は魔力をその短剣伝いに込めればいいから使い捨ての護身ぐらいにはなるよ」


「……オレ魔法具生成なんて初めて見たよ」

「俺もだ。遺跡から発掘される物かとばかり」


「ここは設備がないからしっかりした物は造れないけど十分でしょ?あと君達のせいじゃないけど……集中できない」


 バルザックは一息ついて窓の外を見つめた。おもむろに腰を上げ深呼吸をしながらレイラのもとへと歩み寄る。


「レイラさんは馬の扱い上手なんだね」

「ウフフ、お馬さんは可愛いですわ!毛繕いして撫でてあげたら仲良しですわよ」


「へ〜、そんなものなんだ」


 バルザックは不用意に馬の背後に立ち尻尾に触れようとした瞬間。


 馬が唸り声をあげ跳ねるように後ろ足をバルザックの顔めがけて突き上げてきた。


 ゴギィッ


 油断もあり咄嗟の事でまともに顎にくらい、バルザックの首は乾いた音をたてながら、空を見上げ後方を向くように折れ曲がる。


「バ……バルザック!?」


 レイラの悲痛の叫びが響き


「アハハ……馬の後ろに立っちゃいけないんだったね。忘れてたよ」

「首は大丈夫なんですの?」


「心配ないよ。ちょっとビックリしただけさ」


 バルザックは何事もなかったかのように馬の首筋を優しく撫で始めた。



…………

……………………


「食事は質素ですしお風呂も小さくて悪党生活はとっても楽しいですわ!」

「普通逆じゃないの?」


 屋敷を見れば誰でもわかるけどレイラさんは贅沢な暮らしをしているから逆に新鮮なんだろうな。

 僕としても野宿じゃないだけかなりマシな生活。普段の生活と比べると酷いが、それでも昔を経験しているからいくらでも耐えられる。


「バルザック!そろそろ寝ますわよ」

「え?早くない?」

「21時までに寝ないと幽霊が来ますのよ!常識ですわよ!」


 そんな常識聞いたことないか早寝は別に悪い事じゃないし……素直に寝よう。

 ベッドはレイラさん。僕は床に布団を敷いて……と。


「……一緒に寝ませんの?」

「…………寝るけど?」


 レイラさんは布団に潜り込み端っこに詰めて手招きをした。どうやら一緒に寝るとは……文字通り……


「いや、恥ずかしいよ」

「わたくしはお姉さんですわよ!お姉さんの言う事は聞かなきゃダメですわよ!」


 生唾を飲み込む音が妙に響いた気がする。いそいそとベッドに入り蝋燭の火を消そうと息を


「あ!消しちゃダメですわ!寝る前に火が消えると幽霊が来ますわ!」


 ……よくわからないけど単純に怖いだけなのかな?


「了解。それじゃあ……おやすみなさい」


 そう言いつつも……絶対に寝れない!こんな状態で寝れる程、僕は無神経ではない!



    そうだ。



 僕は   人間なんだ。




 




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