第29話 警戒
レイラとバルザックが町を出てすぐ、屋敷にギルド職員が入ってきた。
「お〜来たッスね〜。苦しゅうないッスよ!金ロリが誰とデートに行ったか教えるッス!」
「バルザック.ガーソン様です。魔法適正Sの彼がレイラ様と一緒に行ってくれれば一安心ですね」
職員には前もって言ってあった。町を出発したらここに伝えに来るようにと。その結果は最高の人材がレイラ様と同行してくれる幸運。
タウロスとマイストは胸を撫で下ろした。メイデンも多少は心配しつつもほかよりは遥かにマシ。
シノブの表情は変わらずニーチェ1人が表情を曇らせた
「ジルジルは居なかったッスか?」
「ジルジル?誰でしょうか?」
「……まぁ別にいいッス。100%死なないのが99.9%死なないに変わっただけッスね」
「お言葉ですがジル様はそこまで強くありませんよ。魔物退治だけを見るならバルザック様のほうが安心できます」
「ジルジルが強いとか弱いとか知らないッスよ。シノブンや鉄メイデンが一緒にいても100%安全とは限らないッス」
シノブとメイデンは互いに目を合わせた。物事に100%などありはしない。様々な不運が重なり合い呆気なく死ぬなど何度となく見てきた。
シノブに至っては餅を詰ませて死ぬなどと言った醜態まで晒している。
「やはり私が影で見守ってはいけませんか?」
「はい!鉄メイデン減点1!最初は1人だと不安って言ってたからこっちは妥協案出したッス!お前どんだけ強欲なんスか!?金ロリもいつまでも周りにおんぶに抱っこされてたら何も出来なくなるッスよ」
ニーチェはヤレヤレと肩を竦めながら指を1本ずつ立て始めた。
「あっしもとんだ甘ちゃんッスね。次の4つを守れるならコッソリ見に行っていいッスよ。
1つ 金ロリに呼ばれても出ていかない事。
1つ 多少の怪我は見過ごす事
1つ 朝帰りしても許してあげること!
1つ 最重要!タウカスはあっしにお小遣いを寄越す事!
以上!質問は受け付けないッス!」
「え?最後おかし「質問は受け付けないッス!二度も言わせるなッス!こんの バカカス!」」
ーーーーSideバルザックーー
「今から行く廃村は10年以上昔から魔物が巣を作ってる場所だね。今回は魔狼」
「どうしてそんな村は焼き払わないんですの?」
「ん〜、廃村だけど魔物が巣を作りやすいのは人間からしてもありがたいんだよ。森奥や洞窟と違って数や種族を把握しやすい。退治も準備も楽になってくる」
レイラさんは『へ〜』と口にしながら山道を歩く。警戒心は全くない。育ち故に仕方ないけど……
「レイラさん、服装はそれでいいの?」
「?おろしたてのドレスですわよ?」
その格好は動き回れないよ。魔物退治どころかピクニックでもそんな格好はアウトだ。山道と言うこともあって息があがってる。でも――
可愛いからいいか。僕が守ればいいわけだし。一応注意だけしておこう。
「あのさ……町から出るとそれなりに危険があるんだよね。そいつ等は格好で判断するんだ……だから」
言い終える前にそれはやって来た。馬に跨った人間が……2人。嗅ぎ付けるのがお早いことで。
「そこの二人待て待て!見たところ何処かの貴族令嬢と……従者だな!」
「今の時期は危険だからお兄さん達と一緒に行こう」
レイラさんの服装を見れば金持ちだと判断するのは容易い。そして子供2人が町の外にある山を不用意に出歩いているのだ。家出ぐらいに思われているのか?
「レイラさん、コイツ等は野盗……盗賊?まあ碌でもない連中なのは確かだよ」
「まあ!わたくし初めて見ましたわ!悪い事をして生きてる人達ですわよね?」
「世間知らずなお嬢様か……とにかくこんなところで彷徨いてると危険だから」
野盗の一人が手招きをしながら麓の方へと歩き始めた。
おかしいな。無理矢理連れて行かないのか?もう一人も別の場所を警戒している。どうするかな。
「レイラさんが決めていいよ。ここで奴等を懲らしめてもいいし。無視してもいいし」
レイラさんはキョロキョロと辺りを見渡し
「この人達について行きますわ!今日はメイデンがいないから何をしてもパパとママに怒られませんわ!」
嘘だろ?自ら拐われるのか?いや、僕が試されてるんだな。レイラさんの騎士に相応しいかどうかを。
「それじゃあついて行こうか。なにか悪さしそうになったら僕がレイラさんを……まま守るから!」
「バルザックはとっても優しいですわね!わたくし前から野盗の生活には興味ありましたの!」
好奇心旺盛だなぁ。でも気になる事を言っていた。
「メイデン.カーターはいないの?」
「いませんわよ。ニーチェ先生様がついていってはダメって言ってくれましたの!」
メイデンがずっとレイラさんに付きっきりと言うのは間違いなのか?結構前も1人で姿を現したし。
野盗の指示に従いながら歩くとすぐに大きな一軒家が姿を現した。1人が先に入ると
「テメェなにやってんだよ!!」
外にまで響く怒声が木霊した。




