第27話 魔法の意味
「これはどうですかい?やっぱりゴブリン討伐が1番難易度低いと思いやすが」
「……それはダメ。報告の大きさと巣の規模。今は時間が経ってるから10体以上はいる。単独だと後方を警戒できないから危険だ」
「オークでいいじゃねッスか。金ロリはお子様だから相手されないッスよ。不意打ちし放題ッス」
「いけません。オークの下賤な瞳にお嬢様が晒されるなど、それにお嬢様はもうお子様ではありません!」
あ〜でもない。こ〜でもないと唸りに唸るタウロス、マイスト、メイデンにニーチェ。ソファでは魔法具の宝石を握りしめ4人の話し合いを黙って聞いている。
「拙者が隠れてついて行こうか?危険となれば参上しよう」
「それじゃあ意味ねぇッスよ!金ロリにやった物は十分な魔力を蓄えてるッス!アクシデントがない限りは、ん〜……サイクロプスぐらいなら一撃ッス!」
「大型巨人の魔物を一撃?それはいくらなんでも……メイデンあたりじゃないと不可能じゃねぇですかい?」
「どうでしょうかね?アレは急所がありませんから私でも一撃は無理だと思いますよ」
話しは全く進まない。秘蔵っ子レイラの魔物退治。周りが心配するのは無理もない。前世のワシも息子や孫娘の初任務は心配しっぱなしだったな。
尤も……孫娘は別の意味で心配だったが、
「あの、ニーチェ先生様……わたくし1人で魔物退治しないとダメですの?」
レイラの不安もわかる。生涯複数人で任務に当たる人もいれば、いずれ単独の任務を与えられる者もいる。適材適所だ。しかしレイラが適材とはまだ思えんな。経験が足りん。
「1人で十分ッス。金ロリは攻撃魔法ばっかり使ってたじゃないかッスか。魔法は遊びや自慢する道具じゃないッスよ。空や木々さんに放つぐらいなら魔物にぶっ放してお役に立つッスよ。出来ないならそれを返すッス!……シノブン使ってみるッスか?シノブンは初っ端から魔物に使いそうッスね」
まぁ使うだろうな。この世界は魔物相手ならばなにをやろうとお咎めなしだ。面倒な搦手も必要ない。永遠に減らない実験台。
「でもシノブンは良からぬ事に使いそうだからダメッス!」
「拙者が?聞き捨てならんな」
「……じゃあどう使うか言ってみるッスよ」
「限界性能を計る……差し当たっては150時間程連続で使用出来れば文句はない」
他にも忍術と組み合わせる……これは胸が高鳴る。修行不足も甚だしい!が、新たなる1歩が目前なのだ。魔物は出来るだけタフな奴がいい。
「首を跳ねても動く魔物はいたな、微塵切りにしても活動出来る魔物相手に試させてもらう」
「……スライム相手にやってろッス。やっぱりシノブンはダメッス!わざと壊しておかわり要求してきそうッス!あれ作るの超面倒なんスよ!」
ここは大人しく下がるとするか。大事なのは同じ物をワシが作れるか否かだ。下手に強奪してく壊れでもすれば二度と手に入らない……そんな気さえする。元より一度は壊すつもりだからそれは不味い。
「ニーチェ様、やはりお嬢様お一人では心配ですしお嬢様ぐらいのお歳で一人で魔物退治する者など……余り存じあげません」
言葉から察するに、いるには居るのだろうな。
「ハァ……屋敷以外の住人なら同伴していいッスよ。ただし難しい依頼を選ぶッス!難易度ベリ〜ハードゥを与えてやれッス!」
「難しい依頼か……複数人でのゴブリン退治かな?報酬の安さで仲間同士よく揉めてるってどの町でも有名だし」
「ゴブリン退治ですね。臭いですし」
「ゴブリンは一瞬の油断が命取り!最難関ですぜい!」
3人の意見が初めて会った。
「別に良いッスけど、金ロリは1人でギルドに行って一緒に退治してくれる優しい人を見つけてくるッス」
…………
………………………
レイラは1人ギルドの扉を開けた。人の出入りが激しいので周りの冒険者達は気にも止めない。しかしその中でも視界に入った者は違う。
「レイラ.カーター?」
「なにをしに……視察か?」
「シッ!下手に喋れば殺されるぞ」
レイラを確認した者達が静まり返り、やがて喧騒なギルドは静寂に包まれた。レイラの一挙手一投足に注視している。
レイラは依頼書のボード前に立ち直筆の紙を持ち顔を伏せた。冒険者達がその内容を確認し……その場を後退った。
《一緒に魔物退治に同行してくれる方お願いします》
冒険者達は意図がわからない。レイラがやっている行為事態は冒険者資格を持っていない者はよくやる手だ。
しかしカーター家がやる意味がない。金がある者がわざわざ危険な魔物退治などやる意味がない。
現にメイデンはカーター家の養子になってからは一度もギルドの仕事をしなかった。
裏でなにがあるかわからないうちは安易に飛びついてはならない。
レイラは立ち尽くしたまま一時間が経過しようとしていた。瞳には薄っすらと涙を浮かべつつも立ち尽くすだけ。
「レイラちゃん何やってるの?」
優しい声をかけられた。顔を上げると腰を落としレイラと同じ目線で語りかける女性。
「ミシェル……わたくし――」
レイラは涙声で現状の説明をした。やっと声を上げるかけてくれたのは自分の友人。しかしミシェルは冒険者資格を持っていない。祖父の営む武器屋の品を渡すためによっただけだ。
ミシェルは笑顔でパンと手を叩き
「レイラちゃんちょっとだけ待っててね!魔物退治したい人を連れてくるから!」
レイラの頭を撫でて足早にギルドを後にした。
…………
…………………………
10分も経たないうちにギルドの扉が開かれた。10歳ほどの少年は髪を掻きながら不機嫌そうに受付へ向かい
「これ……姉さん……ガーソンが卸すはずだった魔法具。全く、姉さんは何をしにギルドに行ったんだよ」
「バルザック?」
「誰だよ!?僕を気安く呼ぶのは…………レイラさん!?ななな何してるの!?」
驚きと狼狽が混じった声を出したのはバルザック.ガーソンだった。




