第26話 発動された力
アルフィーの町には入り口に見張りが立っている。仕事の大半は冒険者や商人などの許可証の確認がほとんどたが……稀に……ごく稀に……ニーチェのようなバカがやって来る。
「ちょ〜っと失礼!この町にドミナートルが来てるだろ?ここで待ってるから呼んでくれない?」
シルクハットを被った長身の優男。肌は色白く血色も悪い。
「ドミナートル?」
「あれじゃないか?1ヶ月前の騒ぎの……カーター家の客人」
「それは知らんけどメチャクチャ被害出ただろ?目つき最悪で口応えした瞬間殺して来るようなこの世の全てを憎んでる怖い女さ」
シルクハットの男はドミナートルの容姿を伝えるが見張り達は頭を捻らせた。
「いや、そんな人相悪い感じじゃなかったぞ?」
「ん?あれ?ハズレかな……三角帽子に……汚い箒……訂正!年季の入った箒に〜薄暗いローブを着てて……随分前だからこれは当てにならないな」
「……やっぱりその女かな?…………っと!個人情報だからこれ以上は言えん。許可証を拝見する」
見張りの役割は許可された者を町の中へと通すことだ。許可されてない者は当然……通せない。
「……え〜っとさ……右手見てみて?」
「…………?あれ?手がない?俺の手が!手が」
「慌てない慌てない。手はちゃんとあるから。本当に消してもいいけど面倒だから止めといてやった。……お前達次第だぞ?オレを怒らせるのか、素直にドミナートルを呼んでくるか」
見張りが生唾を飲み込みもう一度目を向けると……右手は確かに存在していた。見張り達は互いに頷いた。
「カーター家に伝えて参りますので……お待ちいただいても……よろしいですか?」
「もちろんさ〜。最初から言ってるだろ?ここで待ってるって。機嫌が悪そうだったら無理して連れてこなくて良いよ。ブイが来たって伝えておいてよ」
…………
……………………
「今その男は町の外に……スイマセン」
タウロスは小さく舌打ちをした。ここ最近問題が多いのにまたまた厄介事の気しかしない。それでも今回は
「知り合い探してたんだろ?良かったじゃん向こうからお迎えが来たぞ」
「ブイねぇ……ブイ……豚さんブヒブヒ?」
「お前何言ってるの?」
「やれやれ。タウカスは本物のバカッスね!それはあっしを拉致しようとする変態の罠に決まってるッスよ!こんなに可愛いあっしなんて誰から目をつけられるのが当然!」
ニーチェは近くで聞いていたシノブに駆け寄り上目遣いで瞳を潤ませた。
「シノブ~ンあっし変態野郎に襲われそうッス〜。困ってるッスよ。あっし困ってるッスよ」
「困っているのはお前の頭だ。拙者も付いて行ってやるから挨拶をしにいけ」
「やだやだヤダッス!ブヒなんて変な名前の奴は絶対視姦するって相場が決まってるッス!……あれッスよ!シノブンが不意を付かれてあっしだけ攫われる展開ッスよ!」
ーーーー
「そういった訳でニーチェ殿は会いたくないそうだ。」
拙者自らパリシを買って出た。あの女の素性はいまいちわからない。ニーチェの言動は嘘しかない。嘘が日常になるほど虚を吐き続けた者。
蒼白のシルクハットの男は顎に手を置き思案にくれている。
「疑ってる訳じゃないんだけどさ……そいつ本当にニーチェ.ドミナートル?なんか別人の気がする」
「本人はそう名乗っていたな。記憶喪失の疑いがある」
「記憶喪失……ん〜〜試してみるか……君でいいかな?結構鍛えてそうだしさぞかし芳醇な魔力を――持っていそうだ」
ブイはハットを脱ぎ捨て瞳の色を変えた。吸い込まれるように身体が萎み
「あ!シノブ君!おはよー……その人は?」
瓦解した。
「ガッ…………あ……なんで……なんで?」
入り口の門からジルが現れた瞬間だった。ブイの目は恐怖に濁りきり身体は怯えきっている。
「なんでオレは忘れてたんだ。いつから覚えていない?違う!何処で何をされたんだオレは?なんでオレは生きている?…………オイ!」
ブイがジルの肩を掴んだ。それ事態にブイは驚きつつも慌てて口走る
「何を言えばいいんだ!?何を口に出せばオレは開放される?教え……教えろ!早く!オレが……またあの場所に引き込まれる前に早く!」
「痛い!ちょ、ちょっと離してよ!」
「――痛い?それに掴めてる……触れてるのか?……ハハハハ!なんだなんだ?ただの幻覚だったのか?当然だな〜、そんな事はサタンでもニーチェでも不可能だ!」
ブイがシルクハットを被りなおし目線を隠した。深く被り口元を、首を、肩を腰を足を隠し残されたのはシルクハットだけ。
「この世界ならお前を殺せる。待っていろよ、後悔させてやる」
「なにあの人?こわっ」
「あれは人ではなく悪魔だ。ジル殿も恨みを買うぐらいならさっさと消滅させるべきだったな」
「悪魔?嘘でしょ?私会った事も見た事もないしこんな場所に出た報告はないわよ」




