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第25話  噂の男

町外れの一角。普段から人通りはなく今そこにいるのは1人。ビクビクしながら帽子を深くかぶり直した。


「待たせたな。定刻より30分前に来るとはわかっているな」

「見てたんですか?」


「当たり前だ。拙者は常に見ていると言っただろう」

「…………」


 ハンチング帽の男、トーマスは目の前の青年シノブヒイラギが恐ろしくて仕方なかった。今も全ての情報を渡すために辺鄙な場所に呼び出されている。


「これを今週の新聞として出そうと思っています」


 渡された新聞に目を通す。確かな真実と混じる嘘。見る者が真偽を判断すればいい。目に見たもの全て真実などありえない。


「それで?カーター家が調べられる理由はなんだ?」

「あ……あの、カーター夫妻が権力を集めているのは昔から有名ですけど、知ってますか?」


 知っている。この国に限定すればカーター家の名前だけは誰もが知っていた。夫妻は目を付けられ王国首都で事業に精を出している。国の監視下にあるのか国を監視しているのかは判断がつかない。


「最近になってある人物が危険だと判断されました。それを調べるのが私の……仕事で……」

「怯えるな。トーマス殿が真実を話す限り拙者は味方だ。その男は誰だ?」


 トーマスは生唾を飲み込んだ。自分でも信じられないのだろう。


「タウロス.カーターです。魔物を絶滅させた町の冒険者達が目標はタウロス.カーターだと言っていたました。それ以来様々な貴族がタウロスさんをマークしています。」


 ……ほう。タウロスの顔は町に留まらず国中に広がっているのか。拙者が一目置く男だ。他の者が目をつけるのも当然だな。


「でも……町に住んでいればわかりますけどタウロスさんは強い男じゃない。どこかで情報が狂ってると思い……調べようと……」

「認識の違いだ。白兵戦ならば拙者は遅れはとらんが他の分野ではタウロス殿は拙者を凌駕している」


「ヒイラギさんから見て……何処からそんな情報が出たかわかりますか?……あ、あなたは……不法入国者ですよね?」


 怯えながらも本題を聞き出そうとする精神は立派だ。しかし


「拙者には見当もつかんな。こちらでも調べよう」


「…………東方連邦から来たんですか?」

「その地名は拙者も一度足を運びたかったが行き方がわからん」



…………


「タウカス!さっさと金を寄越せッス!あっしのマシンガンジャブが更に速度を上げていくッスよ!」

「…………後1分お願い。」


 ドンドンドンとタウロスの肩を叩き続けるニーチェ。ニーチェなりの金の稼ぎ方。金の稼げないワシよりも立派だな。


「ありがと。……はいお駄賃」

「おや?いつもは銀貨1枚なのに今日は気前いいッスね!?金貨ちゃんゲットッス!おやおや?シノブン…………シノブ〜ン。あっしお小遣いほしいッス。タウカスはドケチッス」



 面倒な女だ。しかし拙者もなにも渡さん訳にはいかんな。


「これをくれてやるから消えろ」

「オマ……銅貨1枚って……何も買えないッスよ、まぁいいッス。ありがとッスよ!」


 タウロスがニーチェを見送りチョイチョイと手招き、失礼と思ったのか椅子から立ち上がり金色の封筒を見せてきた。



〈悪役封印選抜通達  タウロス.カーター〉


 何だこれは?見せただけで誰でも理解できると思っているのか?普通に考えてタウロスが悪魔を殺す部隊に選ばれたのだろうな。


 前世では妖怪退治は下忍の仕事だった。命を落とす者もいたが2.3回死線を越えれば恐れるに足りん存在。しかしタウロスはガタガタと……ワナワナと震えている。



 武者震いか……血の気の多いやつだ。忍者に憧れているのならもっと心を鎮めてみせろ!ワシのように!



「……ヒイラギさん、俺なんかしましたか?悪魔封印なんて無理無理!これは死刑ですよ!死刑!」

「タウロス殿の実力を見せればいいだけだ。限界を超えるチャンスだぞ」


 死線を潜らねば到れない境地がある。タウロスも一皮向ける時か。


「ヒイラギさん……怒らないで聞いてくださいね」

「フフ、拙者を怒らせる事ほど難しいものはないぞ」


 常に平静を保っているワシの心を揺さぶるつもりか?この半年で更に心に磨きがかかったワシを?バガバカしい奴だ。


 おおかたワシの修行を欲している。そんなところか。仕方のない奴だ。ワシがとっておきの――


「2ヶ月後に俺の代わりに出兵してくれません?本当に悪魔が出たら逃げていいですから」

「  この  馬鹿者が!!!  」


 怒声によって窓ガラスがヒビをたてた。しかし関係ない!そもそもワシの部屋でもないしな!


「拙者を替え玉に使おうと言うのか貴様は!?落ちぶれた貴様など見るに耐えん!この場にて拙者がそっ首落としてくれるわ!」


「え、でも、でも前にヒイラギさんは試験の替え玉をたてたじゃないですか?」

「拙者は試験で計られ落とされる可能性故に替え玉をたてた!今回はたかが退魔!消滅など七五三を済ませた者ならば誰でも出来ることだ!さっさと一皮向けてこい!」


 あ然としているな。ここまでの正論は中々言えん。タウロスも己が過ちを認め鍛錬に励む事だ。


「…………俺……ヒイラギさんに貸しがありますよね?」

「ないな。拙者は全て返している。心当たりを言ってみろ」


「試験代金の金貨50枚。あれって俺の自腹ですよ。ヒイラギさんって受けた恩に報いるってジルさんが言ってました。ヒイラギさんは……俺に恩とかないですか?」


「……………気が進まんが仕方ないな。タウロス殿の願いを成就させてやろう。退魔のみと言わずその封書に関係する奴等を暗殺してやる」


「ちょ、違います!穏便に逃げ隠れして……消え……消えないで!ヒイラギさん!」


 



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