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第24話  善意的な協力者

 

 男はハンチング帽を脱ぎ机に腰掛け筆をはしらせた。盗聴の魔法は仕掛けた。発動はまだ早い。ボロを出すとも思えないが、まだ機ではない。


 カーター家が国を乗っ取ろうとしている噂は本当のようだ。アルフィーの町での権力は絶大。他の町からも移民希望が後を断たない状況。最近町外で噂になっている男。それに加えて水面下で殺人をしている疑惑……絶対に突き止めてやる。


 懐の絵を取り出す。魔法の羽ペンで正確に描かれた妻と娘。これが上手く行けばしばらく休暇を取って折りを見てこの町からも出よう。田舎……魔物を絶滅させた町に行ってゆっくりしたい……その為に


「正義の鉄槌をくだす」


「単刀直入に聞く。タウロス殿の部屋を盗聴しているのは貴様か?ガーソン家か?知っている情報を吐け」


 両肩を掴まれた。慌てて振り返ろうとしたが首が……振り返ることができない。誰だ?どうやって……声は男だ。


「考える時間など拙者は与えておらん」




 俺の真後ろに狂人がいる。なんだ?何を突き立てられている?刃物?わからない……わかることはカーター家が殺し屋を雇ってきた。……逆にここさえ凌げば



「脅しでは威勢は落ちぬな。当然だ」


 ……舐められたものだ。命をかけてお前達を没落させてやる。


「殺してみろ」

「拙者が拷問を行う前は皆口にするな。だが途中から殺してくれと頼みだす……最後はなにを願うかわかるか?」


「ガッ!?………………」


 首に衝撃を受け気を失う。担がれて……町の外に…………何処に連れて行かれる……………………


「貴様は拷問などせんから安心して眠っていろ」

 …………

 …………………………


「気がついたか?ここは人など来ない。安心して喚き散らせ」


 意識を取り戻すと目の前には口元を隠した青年。……カーター家に訪問したときにいた奴だ。名前を名乗っていた……シノブ.ヒイラギ。

 身ぐるみを剥がされ手足を縄で縛り付けられている。力を込めるたびに更に固く結ばれていく。


「何が望みだ?言っておくが俺は悪事には屈しないぞ」

「勘違いするな。拙者も悪事に興味はない。タウロス殿の部屋を盗聴した卑劣な奴を探しているだけだ」


 俺がやったとバレていないのか?当然だ。発動していない魔法など見破れる訳がないのだから。ならばどうやって?それよりもどうする……喋れば俺は用済みになる可能性がある。


「俺は……知らない」

「答える気になれば口を開け」



 ヒイラギは口に指を当て一際甲高い音を放った。そもそもここは何処だ?吐き気がする家。時間こそ経過しているがここで何か事件があったのだと俺の感が告げている。


「随分と余裕だな」

「…………」


 何も喋る気はない。俺が行方不明になれば領主が動く。俺が喋れば俺は……。俺は黙っていればいい。



 ギ ギ ギと、鈍い音をたてて扉が開かれた。


「……魔物…………ゴブリン……ゴブリンキング?」


 最弱の魔物ゴブリン達の親玉。それがこちらを睨んでいる。


 おかしい……おかしい…………なんだ……なんで魔物が、


「この絵に描かれた二人を拙者が連れてくる。お前の好きにしていいぞ。殺しても構わん」

「ギャギャギャキャ!!!」


 ヒイラギはゴブリンと会話しているのか?コイツは……人間の皮を被った魔物だ。それに俺の妻と娘を……


 ゴキッ……ゴギィ……ヒイラギは骨を鳴らしながら自分の顔を歪め始めた。俺の顔を念入りに見つめ骨を歪めていく。


「あ…………」

「髪の色は後に毛染めを使う。声は……あ――あ―。こんなところか。この姿でお前の妻子を誘き出してやろう。偶然にも貴様の身分証がここにある。タウロス殿に頼んで妻子の外出許可を貰うとするか」


 目の前には俺と瓜二つの存在が出来上がっていた。


「……妻と娘は……関係無いだろう」

「関係ないな。ここで魔物に殺されようと拙者には関係無い。貴様だけが助けられる可能性を秘めている。この絵に描かれた二人を殺すのは拙者でも魔物でもない。貴様だ」


 話しが通じるのか?何を言っている何をすれば……守れる……何を喋れば……しかし喋れば


「貴様は意志が固そうだな、特別に時間をくれてやる……面倒だがオークをおびき寄せてやろう。奴らは女を殺さず孕ませ出産させるまで生かしておくからな。妻子が殺される前に情報を吐け。その後貴様だ。それとも賭けてみるか?助けが来ることを」


「カーター家の盗聴魔法(リスニングスティール)は俺が仕掛けた!」

「ミシェル殿……ガーソンの者達の指示か?」


「……違う……貴族の指示。なにかデカイ事を企む前に情報を集める指令を受けている」

「お前の上に立つ人間の名を言え」


「ディヒト.ラウンジ………様…」


 ヒイラギはゴブリンに近寄り腕を軽く振った。勢いよく首が跳ねられ暗緑血が辺りに飛び散る。


「ゴブリンの親玉は調教の割に2ヶ月もたてば復讐心が芽生えるのでな。邪魔な芽は摘み取っておく……貴様は…………いつ復讐の芽が出る?拙者は常に見ているぞ」


 縄を解かれ手足が自由になる……ゆっくりと手足の状態を確認したが縄の跡はついていない。キツく縛られていたと感じたが特別な縛り方だったのだろうか?


「お主が役に立てば拙者も労苦に報いよう。役に立たずとも見逃そう。……しかし拙者の邪魔をすれば容赦はせん。なにをもって役に立つか、邪魔となるかは自分で考えろ……お主の名を聞こうか」


 カーター家で俺は自分の名を名乗っている。ヒイラギは身分証から俺の名前を知っているはず……それでも名を告げさせた……俺を縛る魔法の条件か?……抵抗する気はない。


 ヒイラギはまばたき1つせずに俺の瞳を見つめている。魔法ではない。経験から……嘘を……見抜く目だ。



「トーマス.ダウン」

「トーマス.ダウン……しかと覚えたぞ。トーマス殿はディヒト.ラウンジと拙者、どちらにつくか良く考えて答えを出せ。責任は誰が取るかも考えろ」


 俺は仕事がら誰かに恨まれることもある。しかし、それはあくまで〈誰か〉だ。人間に恨まれる覚悟しか持っていない。


 ヒイラギと名乗った青年。アレは絶対に人間ではない。魔物ですらない。アレは感情など一切持っていない。アレと目があっただけだ。それだけで……妻と娘は死ぬより酷い目にあわされていたかもしれない……


 そしてその恐怖は永遠に続く。


 …………

 ……………………


 不気味な程穏やかな森を抜け町へと戻り第一次調書を完成させる。


 《盗聴魔法の発動に成功。行方不明者とカーター家の関係は無いと思われる。引き続き調査を続行する》



ジル&メイデンの感謝とおまけ(説明)


「ブクマしてくれた読者様。本当にありがとうございます」


「……シノブ君って普通の悪役だよね?」


「誰視点かで善悪なんものはコロコロ変わりますよ。トーマス様視点だと……悪役?私視点だと……お茶目さんですね」


「疑問系じゃなくて悪よ。それになによお茶目さんって。身内だからって甘やかすんじゃないわよ」


「……そもそも盗聴魔法は私が発動させてます。タウロス兄様はそれに勘付いてヒイラギ様に場所を探してもらおうとしましたが、ヒイラギ様は勘違いしてトーマス様を犯人と断定しました……可愛いですね」


「全然可愛くないし!なんでアナタが身内に盗聴仕掛けるのよ?」



「以前タウロス兄様の脳内を覗いたときに私とお嬢様とマイストのことを三馬鹿と罵ってました。今度は確実に言質を取って首をへし折る為です。私を馬鹿呼ばわりした事を後悔させてやります」


「……色々言いたいけど……やっぱりアンタはイカれてるわね…………ん?『私を』ってレイラちゃんを馬鹿呼ばわりはいいんだ?なんだか意外ね」


「  あ  あ……え…と、それも含めてお嬢様の魅力なので!お嬢様は馬鹿わいい!」


「それレイラちゃんの前で言ってみなさいよ」



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