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第7話 わかりあえる


「ぎぃぃ……やめて…………やめて…………」


「遠慮するな。まだまだ序の口だ。」


「お兄様」


 タウロス邸の地下室。中年は吊るされたままその景色をボンヤリと見つめ、取り巻きの男はシノブに殴られ早々に気絶。タウロス自身の抵抗も虚しく今は中年の隣に張り付けにされ


「ギャァァア!」


「もう少し雅に鳴いてみせろ。もう一本だ。」


 か細い針を体に打ち込まれる。既に十度。妹のレイラは不思議そうに兄の叫びを聞いている。タウロスの身体は出血はない。痛みは当然あるが痛がり方が尋常ではなかった。


 唯一なんの危害も加えられていないレイラが声を震わせながら質問した。


「そんなちっちゃい針で痛いものですの?」


「刺してみるか?」


 シノブは針をレイラに手渡した。受けとった針は何処にでもある裁縫針。毒も塗られてはいない。


「…………お兄様。ごめんなさい。わたくしこの人には逆らえませんわ。」


 そう言ったレイラの顔は恍惚な表情を浮かべていた。まるで自ら望んでいるかのように。兄のタウロスの腕に針を突き刺す。


「  ツッ 」

 

 タウロスは僅かに表情を歪めたがシノブの時とは雲泥の差。


「その隣……ここだ。根本まで要らんぞ。拙者の爪にそって刺してやれ。」


 シノブはタウロスの腕に爪をたてた。レイラが従うように針を突き刺す。


「ギャァァァァア!!」


「アハッ!お兄様が鳴きましたわ!」


「筋は悪くないが喜びの表情は隠せ。喜怒哀楽を悟られては相手に恐怖は与えられぬ。拷問にはならん…………淡々と……ひたすら薪割りをするように、没頭する。」


「………………はい!」


 シノブ.ヒイラギという青年は善人ではない。ただの忍び。この世界にとっては悪人なのかもしれない。




………………

………………………………


「どうだタウロス殿、まだ痛みはあるか?」


「…………いえ、大丈夫です。」


 中年とタウロスに手当を施し容態を確認する。タウロスは見た目などキレイものだ。小さな針で20ヶ所刺されただけ。1週間もうあれば傷は塞がる。


「これが初歩だ。また機会があれば教えてやろう」


「か勘弁して下さい!」


 シノブの冷酷な瞳に恐怖するタウロス。刻まれてしまった。自分の心に。この青年とは関わり合いになりたくないと。


「あの……お名前を教えてくださる?」


「レイラ!?」


 モジモジとシノブを見上げるレイラにタウロスは驚いている。自分が関わり合いになりたくないと思った矢先に妹が関わり合いになろうとしている。


「シノブ.ヒイラギ。これから魔法塾に入門する者だ。縁が会ったらまた会えるだろう。」



 シノブは音も無く歩き地下室から姿を消した。


「シノブ.ヒイラギ…………なんて素敵なサディストなのかしら!!そうは思わなくてお兄様!?」


「アイツには……関わるな」


「フン!お兄様には彼の……シノブ様の凄さはわからなくてよ。それにしても魔法塾?魔法学校のことかしら?わたくしもそこに行けばシノブ様にお会いできますのね!」


 レイラは兄を見下しながら踵を返した。すぐさま屋敷のメイドを呼び寄せる。姿は見えないがきっと居る。レイラ専属のメイドは主から目を離すことはない。


「メイデン!わたくしも魔法学校に行きたいですわ!手続きを済ませておきなさい!」


「畏まりました。お嬢様。」


 本来ならば入学受付は終了している。しかし世の中は金と権力を中心に回っている。多額の寄付さえ積めば入学も卒業すらもどうとでもなる。


………………

……………………………………


〜〜3日後〜〜


「では合否発表の場に赴くとするか」


 ジル家を後にしようとすると後ろからパタパタと走り寄る女性の姿。ジルだ。


「待ってシノブ君、私も行く」


「拙者も子供の使いではない。このような瑣末は一人で十分だ。気持ちだけ頂いておこう」


「私も魔法学校に用事があるのよ。合格者の受付とかしなきゃだし!」


「そうか、ならば共に赴くとしよう」


 ワシとジルは散歩のような気軽さで家を後にする。始めこそ余り歓迎されていない様子だったが母親の容態の回復と共にワシへの信頼も上がったようだ。

 現金な女よ。



 数十分程歩くと魔法塾の正面門にたどり着く。これからこの場で魔法の全てを学び研鑽し、可能ならば忍術に取り入れる。進化させてやる。


「私は合否の紙を取ってくるから広場……実技試験をしたところで待ってて。」


 ジルは手を振りながら入り口へと消えて行った。ジルの言葉に従いワシは広場に行くとするか。正直見る必要もないがな。



「あっ!シノブ様!」


 遠くからワシを呼ぶ名が聴こえてきた。目を向けると金髪に豪華なドレスを着た少女。


「ん?誰かと思えばタウロス殿の妹君、名は……レイラ、レイラ殿か。」


「まぁ!覚えててくださいましたのね!わたくしも魔法学校へ入学する事になりましたの!」


 指遊びをしつつワシを見上げるレイラ。


「そうか。これから共に切磋琢磨していこう。」


「はい!シノブ様!」



……………………


 レイラと他愛のない雑談に興じる。先日行った針の痛みの理由を熱心に聞くレイラ。見た所9.10歳。その年で鍼灸術に興味があるとは将来有望だな。



 周りのザワ付きが収まる。皆の視線を一身に浴びた女性。ジルが大きな紙を持って走ってくる。ワシに近づき小声で


「お……落ち込まないでね」


 小さく呟くと広場の掲示板に紙を広げ貼り付けた。



 掲示板までの距離50M。問題なく見える。わかりきっている。ワシの合格は。




「……………………なに!?」


 張り出された紙には



〈シノブ.ヒイラギ

魔法適正 C

筆記試験 15点

実技試験 50点

        不合格〉

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