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第20話  貴方との再会

ーーSideメイデンーー


 忍さんが私に向けて明らかな殺気を放っている。あぁ、懐かしい。忍さんはなにも変わっていない。嬉しい。



 でも私は私の為に……



 一瞬でも忍さんから目を逸らす事はできない。逸らさなくても彼は私の呼吸にあわせてくる。瞬きの合間を狙ってくる。


 私から先手を打つ。暗黒に存在する刃を握り闇と共に切断する。


「シャドウエッジ」

「 土遁  影潜り    」


 射程は視界に入った存在。目視できない刃は肌に触れた瞬間初めて気付く。気付いた時には忍さんの胴体は離れ離れだ。幾千の刃が衣服に触れ皮膚を傷つけ――




「…………ッ!いない!」


 たった一度の(まばた)き。目の前にいた忍さんは消え去っていた。影潜りは周りの景色に溶け込む術、視覚では捉えられない。気配を……忍さんの気配を探り当てる。



 気配がまるでない。

 何処にいるのかわからない。


 風の加護で探す?(間に合わない)

 隠密の加護で隠れる?(その間に殺される)


 私には彼の居場所はわからない。

 それでも私にはわかる。

 私は忍さんを知っている。


 私の背後から貫手により心臓を抜き取るつもりだ。


 我が身を懸命に捩り忍さんの貫手は空と肉を切る。脇腹は抉られ地面が朱に染まっていく。魔法壁は張っているが……彼が相手だと気休めにもならないようだ。



 空振った手を握り直し私を見つめている。忍さんの服はズタズタに裂かれているが無傷。皮膚に触れた瞬間に移動したのだろう。〈シャドウエッジ〉は視えていないと考える。


 ……あんな魔法程度で通用するとは思ってなかったが、


 表情は隠しているが私にはわかる。自分の一撃を躱す存在に対しての嬉しさ半分。次の一手で自分が死ぬかもしれない恐怖が半分。


「取ったと思ったが命の取り合いはわからんものだな。メイデン殿はかなりの手練、拙者の予想以上だ」


「お褒めの言葉ありがとうございます。お互いの為にこのまま引いてくれませんか?」


「………………」


 忍さんは考えている。別に手を引いても良いと本気で思っている。それよりも私に隙がないかを見ている。私が気を抜けば……命を奪われる。


 気は抜かない。片時も貴方から目を離さない。



「そこの悪魔に聞きたい事がある……一人逃げたな」


 気配でわかる。私の後ろには片腕を失った悪魔。女性の悪魔は洞窟の奥へと……逃げたのだろうか?


「お前達の目的だ。人間を殺し何を得ようとしている?」



『アナタは後悔させてあげるわァ』


 片腕を失った悪魔は大地と同化していく。陰鬱な気配が完全に消え去った。残されたのは干乾びた大量の死体と私と……


「……逃走方法は把握した。メイデン殿に聞くとするか。多少手荒になるが……文句はあるまい」


 忍さんが初めて腰を深く落とした。獣のように身を屈ませ片手を地面に置き息を吐く。


 せっかくならこんな薄汚い洞窟ではなく外で思いっきりやりあいたかったが……無理だろう。忍さんが本気になれば私はすぐに殺される。一合すらもたない。




 それでも簡単にはやられない。私を貴方に刻むまでは



「次の一撃も躱してみせろ」

「今宵は存分に(あい)し合いましょう。忍さん」


 ーーーーーー


「―――――忍さん」


 確実に思考が停止していた。真剣勝負においては致命的となる時間。目の前の女性が放った一言により。


 懐かしい呼び名。ワシをその名で呼ぶ存在は一人しかいなかった。ワシが許さなかった。確証などは何処にも無く憶測だけで物を言うしかない。


「…………乙女殿……か?」


 メイデンはコクリと頷いた。ワシの前世での妻。最愛の女性。なんの因果かもう一度彼女に会えたと言うのか。


 戦意が削がれる。メイデンの言葉の真偽は読み取れない。嘘を言っている可能性も……ある。それでも万が一メイデンが乙女殿だとしたら……ワシは……


「説明してもらおうか。お主は何をしている?」

「説明して忍さんが納得するかは別問題ですよ。納得いかないから殺すとかやめてくださいね」


 ……思わず頬が緩む。油断しかしていない。それでも構わない。乙女殿に殺されるならそれも良し。


「場所を変えましょうか……ここは臭いです」

「変わらず死臭は嫌いか?」

「あんなもの馴れる人の気がしれません。忍さんとジジィは死臭が好きでしたね」


「拙者も好きではない。鼻が効きにくくなるのでな。先代様は……たしかに死臭を嗅ぐと興奮していたな……懐かしい」

「本当に……」


 …………

 ……………………



 乙女殿はワシに小さな石を手渡した。淡い光を放つ石。


「それがあれば魔法が使えますよ。忍さんは魔法適性が……Gなんですよね?」

「………………」


 小さな石を握りしめる。手のひらに包まれた輝きは光をなくし完全な石ころへと変わってしまった。手のひらが輝いている……なにをどうすれば良いのかがわかる。


「 ウィンドスラッシュ   」


 軽く指を振った。指先から真空が作り出され勢い良く射出され小枝を切り刻んだ。威力としては下の下、それでもシノブは初めて魔法を放った。


「……これが……魔法。鍛錬もなくこの力を常に扱えるのか」

「忍さんが使った代物は使い切り……試作品らしいです。私はこの完成品をレイラお嬢様に差し上げたい……あの子にはずっと笑顔でいてほしい」


 …………乙女殿は全てを説明しない。その為には必要な事がある。洞窟へ誘き出された冒険者の末路。それが関係しているはず。


 ならば拙者の取る行動など1つだ。


「……拙者に協力できる事はあるか?」

「止めないんですか?私は……私は人を……名も知らぬ人間を犠牲に自分の欲望を叶えようとしているのですよ」


「拙者もお(こぼ)れにあやかりたいのでな。レイラ殿の後で構わん。それに……妻の願いは叶えてやりたい」


「忍さん……私達、今度こそ地獄行きですよ」

「今更だな。地獄でも乙女殿を愛すると誓おう」


「ずっと……ずぅぅっと!私に気づかなかったくせによく言いますね!今度も私が先に忍さんを見つけますから。好き勝手してくれて大丈夫ですよ」





ジル&先代様の感謝とおまけ



「ブクマしてくれた読者様ありがとうございます!」


「小娘よ、ちょっとシノブを呼んでくれんかのう?」


「なに?出番ならシノブ君でもどうにもならないわよ」


「違うわい!シノブがワシの悪口を言うんじゃ!死臭が好きじゃと!?ワシをなんじゃと思うておる!小娘よ、小娘はワシを優しい漢じゃとわかっておるじゃろ?」


「先代様って殺人狂のお爺さんでしょ?第1章でメチャクチャ楽しそうに人を殺してたじゃない。正直引いてるわよ」


「……ぷるぷる、ワシ……ヒトゴロシ……キライ。ワシ、ワルイ先代ジャナイヨ」


「……はぁ……私は先代様が無双してる姿は好きよ」


「そ、そうじゃろ?仕方ない小娘じゃ!またワシに出番があれば目につく者は皆殺しにしてくれるわ!そして更にワシに惚れるのじゃ小娘!」


「冗談なんだから好きになる訳ないでしょ」


「ワシをあげて落とすとは……」


「あっ……凄くションボリしてる。なんかごめんなさい」

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