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第17話 賭博の真髄


 タウロスは仕事の手を止め一人の女性の名を呼んだ。


「メイデン」


普段なら自分の声では姿を現さない。しかし、今回はすんなり出てきてくれた。メイデンは何も言わずにタウロスを見つめている。


「レイラが賭博場に行くつもりだ。俺は止めれないから熱くなりそうだったら止めてやってくれないか?」


「…………どれぐらいまで許容なさるおつもりですか?」


「破産……財産や土地の権利を賭けようとしたら止めてくれ」


 メイデンは頷き、タウロスは天井を仰いだ。カーター家の実子レイラ。本人に家督は譲られないがそれでも莫大な財産を所有している。


 レイラ本人はまだ10歳の子供……しかし間違いなくウィルとライラの血を引いている。


「頼むよ……これ以上忙しくなるのは勘弁だ」



…………

…………………………



 この町の賭博場は2つある。ポーカーとルーレットが盛んな賭博場。丁半博打、フィンガーフィレットが盛んな賭博場。


 ワシとレイラとニーチェが赴いたのは、


「華やかなカードで勝負するッス!指の合間にナイフを突き立てるフィンガーフィレットなんてギャンブルじゃねぇッスよ!」


 フィンガーフィレットはワシも修行でやったが一生終わらんからな。勝敗もわかりにくい。


「シノブンは銀貨1枚!金髪ロリは銅貨10枚!ギャンブルマスターのあっしは銀貨98枚と銅貨90枚で勝負するッス!目標は100倍!…………突撃ッスーー!」



 ポーカーかルーレットか……花札があれば前世では乙女殿以外には負け無しだったが、


 ルーレットは存在は知っていたが見るのは初めてだ。玉が落ちる場所を当てるだけの単純なゲーム。回転速度で何処に落ちるか丸わかり……それに加えディラーの気配で二重の答え合わせが可能。ワシにしてみればこれこそギャンブルではない。試されているな。


 賭博場で一番重要なのはいかに出禁にならない事。決して目立たず気がついてても勝っていない。それが理想。


 ルーレットの椅子に腰掛け銀貨1枚を賭ける

「14番……一点張りだ」


 徐々に勢いをなくした玉はユラユラとポケットに吸い込まれた。ディラーは笑顔でワシに対して配当を支払らった。


「おめでとうございます。銀貨36枚です」


 目立ってもしょうがない。残りの時間は赤×黒を予想しつつ茶を濁すとするか。


…………

……………………


 ポーカーの醍醐味はゴミ手で相手を降ろすことにある。一度でもその快感を味わえば昇天することは必至。


「残りの有り金オールベットッス!」

「へへへ、手札が良かったのかいお嬢ちゃん?」


「う……うっせーッス!さっさと降りろッスよ!」

「……コールだ。Kハイのワンペア」


「う……うぅ……10ハイのブタッス」


 ポーカーは単純なゲームではない。心理の読み合い。仮に相手の手札がわかっていても大勝ち出来るとは限らない。駆け引きの強さこそが問われる。


「もう金無しかい?」

「……座ってろッス!このバァァカ!あっしのお金ちゃんを取り返してやるッス!」


 ニーチェにはその才能は備わっていなかった。そして熱くなりやすいと言うおまけ付き。破産するタイプ。



「金髪ロリは待合室でミルクでも飲んでるはずッスけど……シノブン!シノブンならきっと馬鹿勝ちしてるはずッス!ちょっと分けて貰うッスよ!」


 シノブンの周りには人だかりが出来ていた。あっしが潜り込もうとしても跳ね退けられる。


「あっしはシノブンの知り合いッス!どけどけー!」


 身を屈め突進突進!そしてシノブン発見!どれどれ?シノブンはどれぐらい勝ってるのかな〜?


「…………当たったな」


 丁度シノブンの声が聴こえ周りの喝采が響く。シノブン自体は……銀貨が20枚。ちょっと勝ってるけど期待外れッスね。


 ディラーは青ざめた顔でボールを回す。1.2.3.4回転したところで


「……黒に銀貨10枚だ」



「俺は赤!」「俺も赤!」「財産全部レッドじゃー!」


 勢いが失われた玉がユラユラと吸い込まれる。赤の26番ポケットへと。瞬間周りからの大喝采。


「これで何連続だ?」

「交互に当てて外しているから、多分15連かな?……次は当てる番だ」



「次で最後だ……投げろ」


 シノブンはディラーを殺す目つきで睨み、狼狽と共に投げられた一投。クルクルクル円を描く。


「……手元が狂ったな。00に銀貨9枚だ。これにて拙者は失礼する」

「おぉー00だ!賭けろ賭けろ!」「こんなチャンス二度とねぇ!」「ありったけだ!00に全財産ぶち込んでやる!」


 周りの熱狂とは裏腹にシノブンが席をたった。まだ結果も見ていない。見るまでもないのだろうか?


「勝っても目立ってしまうのでな。プラマイゼロで締めさせてもらう。今回の当たりはポケットから真反対の0だ」


 シノブンのアホ言動に周りの客が凍りついた。しかし今更まったなど通らず玉は当然のように0へと吸い込まれ……

 客達の阿鼻叫喚が木霊した。



「シノブンはアホッスね〜……今日はお開きッス。金髪ロリを迎えに行って帰るッス」


「レイラ殿はハイレートのポーカーをやっていたな」

「ハイレート〜?チョコレートの間違いじゃないッスか?銅貨10枚で買えそうッスね〜」



 シノブとニーチェはハイレートのポーカー場ヘ足を運んだ。他とは違い最低ベットが金貨1枚と言う金持ち御用達。その中でレイラは不機嫌そうに頬杖を付きながら大きなアクビをしていた。


 レイラの側には相手から巻き上げたであろう1000枚を越える金貨。



 

ジル&メイデンのおまけと感謝


「ブクマしてくれた読者様本当にありがとうございます」


「ねぇ、レイラちゃんって10歳だよね?」


「レイラお嬢様と言う天使が降臨されて10年と312日です。今日もお嬢様の可愛さに感謝しながら生きてください」


「相変わらず気持ち悪いわね。賭博場って年齢制限ないの?シノブ君は17歳……どうなんだろ?ニーチェの年齢もそのくらいかな?」


「年齢制限はありませんよ。胴元としてはお金が入ればいいんですから。寒い地域出身の私とアイシャも5歳からお酒を飲んでましたし。常識なんですけど…………あ」


「なに?なにか問題があるの?」


「ジル様は貧乏でしたね。常識を知らなくても無理もありませんでした。機会があれば出向いてはいかがです?銅貨1枚握りしめて……銅貨1枚も厳しいですか?」


「……メイデン、テーブルに手を置きなさいよ。フィンガーフィレットで貴女の指を落としてやる」


「その前に『メイデンさん』と呼びなさい。本編と後書きで呼び名が変わったら読者様が混乱するでしょう」


「……く……メイデン……さん」


「もっと親しみを込めて!」

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