第15話 恐れられる者
ーーーSide ジルーーー
あった瞬間変な女性だとは思った。ボロボロのローブに三角帽子を被ったニーチェと名乗る女性。初めて見る顔で町でも見たことない。最近引っ越して来たのだろうか?
「ジル、どうしたんだ?なんか空気重いぞ」
「タイラー!待ってたのよ。緊急の依頼が来て依頼人はお金をあんまり持ってないらしいの……それで」
「よし!すぐ行こうぜ!……でもジルはどうする?稼ぎたいよな?」
やっぱりタイラーはそう言うと思っていた。金の損得ではない、もっと別の思いで冒険者資格を取っている。
「借金返し終わったから、あんまり気にしないわよ!早く行きましょう」
受付へ行き正式に依頼を受ける。早く行かないと村もニーチェも危険だ。……周りの視線が気になる。私とタイラーが安く掠め取ったからだ。
半年も冒険者ギルドにいてわかったがこの依頼はもっと額が跳ね上がる。村全体から金を徴収すると依頼人から名言させれば良かった。そこまでやってやっと冒険者は動く……でも、
「近いな!急ごう!」
「…………うん!」
彼は気にしないし私もそんな事は気にしないようにしている。強い人は気にしない。だから私も少しでも強く……
………
………………
こんな現場は初めてではない。しかし
「……遅かったのか?」
「せ、生存者を探しましょう」
村のアチコチから火の手が上がっている。悲鳴を消すように雨が降り注ぐ村。魔物も……村人もいない。呼吸を整えて……まだ魔物がいてもおかしくない。巣に持ち帰られた人間もいるかも知れない。
「……なにか来る!油断するな!」
タイラーが腰を落とし剣を引き抜いた。視線の先には走るオークと箒を持った女性……ニーチェだ。
「タナトス、あいつぶっ殺してやるッス!あっしを辱めやがって〜待てッス!まずはお前をあっしがぶっ殺してやるッス!」
両手を地面につけ大地の杭がオークを貫いた。しかしまだ息はある。タイラーが踏み込み一閃でオークの首を跳ね飛ばした。
「ニーチェ無事だったのね!良かったわ!」
「ああ……あっしの仇……あっしを辱めた仇が…………」
オークは人間の女性を孕ませる。元気そうに見えるニーチェもきっと……この痛みは男ではわからない。そして経験した事無い私でもわからない。
「私……ニーチェの側にいてあげてもいい?」
「ピンチになったら呼ぶから来てくれよ」
タイラーも事情を察して生き残りを探すために民家に入り始めた。
…………
「うぅ〜〜あっし……あっし……悔しいッス!なんであっしがこんな目に……ウッ、うぅ〜〜」
「うん。大丈夫……大丈夫だから」
かける言葉に心がこもらない。なんと声をかければいいのか……なにを言っても傷つけるだけかもしれない。ニーチェはそれだけ深い傷を負ってしまった。
私は大丈夫と言いながらニーチェの背中を擦る事しか出来ない。
「………あっしって……魅力ないッスか?」
不安そうに呟いた一言。本心から言える。
「そんな事ないわよ!ニーチェとは出会って間もないけど元気があって素敵で女の私から見ても羨ましいわ!だから……」
「そ……ッス……よね。オークがあっしを襲わなかったのはあっしがあまりにも魅力的過ぎて荷が勝ちすぎていると思ったからッスよね?」
ん?
「ニーチェ……貴女は……その……言いにくいけど……オークに襲われなかったの?」
「うん。せっかくの《くっ殺》チャンスだったのに……オークがあっしを素通りしやがったッス。女を孕ませるしか脳がないオークに無視されるなんて、女として最大の辱めを受けたッスよ。」
なによクッコロって?でも無事で良かった。
…………
……………………
「ジルジルに背中を擦ってもらって落ち着いたッス!村人達は森に逃げてるッスよ。あっしはお腹空いたから帰るッス!」
「い……生きてるの?探さないと!一人で帰れる?」
ニーチェは後ろを向き手を振っている。大丈夫と言う事だろう。私も森を見据え1歩踏み出した。
「ジルジル……その力はインユリアに貰ったんスか?」
「インユリア?」
急いで村人を探さないといけないのに……しかしニーチェの言葉は聞き逃してはならない警鐘だ。
「薄っっすい布纏って呪いを振りまくビッチな女ッス。ジルジルが貰ってるのは本物ッスからインユリアはあり得ないッスね。変な事聞いてゴメンッス」
…………
………………
「ねぇタイラー、インユリアって知ってる?」
「加護を授けてくれる女神様の名前だろ?俺は3回会ってるけど次会える機会は不明だな。加護を与えられる条件は王国の魔法具でしかわからないからな〜」
タイラーと二人アルフィーの町へと帰る。村人達は何人か被害にあったが大半は無傷だった。魔物もオーク以外にもかなりいたらしいが……行方不明。
「ジルは加護なに貰ったんだ?全然見せてくれないよな」
「……あんまり使い勝手が良くないのよね」
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『……貴女は〜っと《即激の加護》でいいわね〜』
一面白銀の世界。なぜ自分がここにいるのかはわからない。しかし私は目の前には縫い目無き衣を纏う女神から力を授かろうとしている。
『はい終わり〜。回れ右して帰りなさ〜い…………え?……はい…………申し訳ありません』
女神に似た何かは独り言を呟き一人白銀の空へ向けて謝った。
『ジル.ローレス、上を見なさい』
言葉に従って上を見上げると……私の両親?違う……でも……間違いなく私の親だ。その存在は私を覗いている。
『 これを…… 使いたい時に使いなさい 』
その存在が一言呟き、私が目をパチクリさせていると
その存在は消えていた。
『……それは本物。この世界に存在する加護程度では足元にも及ばない力。……でも、おめでとうとは言えないわね。私は勿論、神様相手でも発動できるから』
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《 審判 ランク 無し
神の力。
言語を喋る存在に対してカウンターを発動させる。
自分を含めた対象二人を隔絶された空間へと引きずり込む。
対象にされた存在は何処にいようと、仮に死んでいても逃れられない》
ジル&インユリアのおまけと感謝
「ブクマしてくれた読者様ありがとね〜!女神様でお馴染みのインユリアよ〜」
「女神様!私はチートっぽい能力をもらっちゃった!」
「使えない能力でよかったわね〜」
「使い方わからないけど凄いんじゃないの?」
「チートはチートなんだけど〜、おバカさん以外に発動させてもあんまり意味ないわよ〜」
「…………凄くないの?」
「同じ質問ばかりしないの〜。私としては《即激の加護》は当たりの部類だと思ってるんだけど、流石に比べられないわね〜」
《即激の加護 ランクB(ジル基準)
自身に眠っている魔力を叩き起こす。魔法適性を1段回上昇させる。この状態で更に加護を使用すると周囲の魔力を取り込み擬似的な魔法適性Sになる事が可能》
「凄そうだけど……反動が怖い」
「日に2.3回も使えば死ぬけど本望じゃないの〜?目立てるわよん!」
「その手の能力ってなんだかんだ死なないんでしょ?使い放題なのよね?」
「…………死の定義次第よ。あと、審判の強さは貴女が1番知っているはずよね」
「いや、知らないわよ。使ったことないんだから」




