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第6話 真摯なお願い

 

「ここがタウロス某の屋敷か?」


 街の中でも一際大きな家の前で一人呟く。中年と取り巻きの男の足跡が口以上に居場所を示している。このまま捨て置いてもいいがワシの居ない間に危害でも加えられたら堪らん。二人に危害を加えたのはワシ一人と言う事をわかってもらおう。


「同じ人間。話し合えばわかりあえる」



 仮面は必要ないな。顔を見られて困る事をする訳でもない。


 門を一息で飛び越え屋敷の屋根へと飛び移る。


「見張りは……1人」


 入り口の前で棒を持った男の背後に立つ。気配は断っている。姿は闇夜に溶けている。



 毎日毎日同じ仕事。夜間に入り口前に立ち尽くす警備兵。日の出と共に仕事を終え日暮れと共に立ち尽くす退屈この上ない仕事。


 今日もその退屈な仕事………………だったはずだ。





「動くな。」



 不意に背後から声がした。警備兵は殺気など感じる力はなかったが、声に逆らえば殺される。それだけは瞬時に理解した。



「えっ!?  ヒギィ……………………」


「声を出す奴があるか。馬鹿者が」


 警備兵の顔をペタペタと触る。念入りに、丹念に触り自分の顔を歪め造りあげる。



「骨格良し!声帯は……未来ある若者の声を盗む訳にもいかんな。声帯模写でいくか。」


 警備兵を担ぎ上げる。音を立てるような愚行は当然しない。運が悪くなければ朝には目覚めているだろう。


「少しの間借りていくぞ」


 シノブは入り口の扉を開け放つ。中は夜であっても光り輝いていた。前の世界のように。


「ん、急用か?見張りの仕事はどうした?」


 広間で寛ぐ男性がシノブに気さくに話しかける。間違っても知り合いではない。シノブと男性は初対面。


「………………タウロスさんは?」


「タウロスさんに用事か?今は馬鹿二人を拷問中だよ!お前も八つ当たりされたくなかったら時間を置いて会ったほうがいいぜ。」


 男性にはシノブには見えない。入り口の見張りと勘違いしている。顔の造り。身長、衣服が同じなのだ。別人と思う理由がない。



 男性に会釈をしつつ中に入り込む。男性は訝しんだ顔を向け


「お前……誰だ?魔法使いか?」


「ほう?拙者の変装を見破ったか。皮と声を奪っておくべきだったな。」


 顔の骨を鳴らし骨格を戻していく。あどけない青年。それは紛れもなくシノブ.ヒイラギ。


「賊なんかこねぇと思ってたが、殺すしかねぇなぁ!悪く思うなよ!」


 男性が槍を片手に突っ込んで来た。対するシノブは徒手。間合いが絶対的に違う。男の攻撃だけが届きシノブの攻撃は届かない。



 それが武器の理


 槍は容赦なく腹を裂き腸を滴らせた。


「殺気のこもった良い一撃だ。しかし殺すと宣ったからには急所を狙ってこい。掛け声も必要ない。」


「まだ他にもいやがるのか!?」


 目の前の警備兵は気を失っている。槍が突き刺された瞬間体をビクリと震わせたが、その前から気を失っていたかのような。


「手当してやらねば死ぬぞ?」


 広間に血溜まりができ始める。相変わらずシノブの声だけが響いてくる。姿は何処にも無い。


「コイツ、本物か?だ大丈夫か!?」



 男は慌てて警備兵に駆け寄り持っていた槍を手放し抱き起こした。真後ろの存在にも気付かずに。


「タウロスは何処だ?余計な事を喋ったら殺す。手当は続けていろ。」




「………………地下室だ。」


 男は静かにタウロスの居場所を告げた。返事はない。恐る恐る振り返るとやはり何もいない。


「なんだったんだ?俺は仲間を刺しちまったのか?と…とにかく治癒魔法を…………」




 ………………

 ………………………………



「止めてくださいタウロスさん!」


「うるせぇ!お前等のジルへの嫌がらせが甘いからだろが!挙げ句にジルに彼氏だとぉ!?許さねぇ!」


 外套を羽織った男が中年に鞭を撃つ。これはタウロスの部下への仕置。


「あとちょっとでジルは俺を頼るはずだったのによぉ!もう一発!」


 再度鞭が中年男の肌を傷つける。その光景を涙ながらに止めるよう懇願する取り巻きの男と興味深く中年の表情を覗き見る少女。


「お兄様。コイツ全然反省してないわ。もっと強く打って!肌が焼け付くように!」


「レイラ、これでジルは俺に惚れてくれるんだろ?」


「勿論ですわ!お兄様。」


 中年は狂った兄妹に雇われた事を後悔した。いくら金払いが良いとはいえ少しヘマをする度にこうした仕置があるなら身体がいくつあっても足りない。


 それに加え今回はジルに関係している。タウロスはジルに惚れている。なんとかジルを振り向かせようと金銭援助などを申し出たが断られ試行錯誤した結果が今だ。


 妹の趣虐も合わさりもはや金額の割にあっていない。


「まだですわお兄様!コイツ全然反省してないですわ!もっと強く!もっと激しく打って!」


 レイラの恍惚とした声が響く。


「…………そうだな。コイツは反省どころか反骨の相が出ておる。いずれ復讐されるぞ」


 シノブの無感情の声が響いた。


「誰だ!?どうやって入って来た?」


 タウロスが驚き振り返る。同時に取り巻きが慌てたように


「タウロスさんコイツです。コイツがジルの彼氏です!」


「へへへぇ、お前かぁ?ジルは俺の物だ大人しく別れたほうが身の為だぜ!」


 タウロスが鞭を片手にシノブに歩み寄って来る。


「意味がわからんな。拙者の伴侶は乙女殿(享年90歳)だけだ。生まれ変わろうとも他の女と不貞を働く気はない」


 シノブはタウロスを横切り吊るし上げられた中年の顎を掴んだ。薄暗い地下室ではシノブの表情はわからない。


「拙者が厄介になる間ジル殿の家賃をどうにかしてもらおうと頼みに来たのだが、タダと言うのも気が引ける。拙者が力になれる事があればと、思っていたが」



 中年だけがシノブの表情を見る事が出来た。彼は笑ってはいない。怒ってもいない。これから起こす事に対して一切の感情を持っていなかった。


「拷問か。先代様は拙者の拷問術は褒めてくれたのでな。貴様に拷問術の初歩をくれてやろう。その体に刻み込め。それを家賃とさせてもらおう」


シノブ&ジルのおまけと感謝



「シノブ君!評価を貰えたわよ!」


「フフ、ジル殿は幼子のようにはしゃぐ。もう少し落ち着いたらどうだ?」


「……でもシノブ君〈後書き〉に呼び出したら絶対スキップしてくるじゃない。今時見ないわよスキップする人。あと高速過ぎて気持ち悪いし」


「アレは忍術の修行だ!やらねばならんのだ!」


「じゃあシノブ君は嬉しくないの?ブクマも評価もPVもなくてもスキップして来るのね?」


「………ATOGAKIに呼ばれる度に浮かれておったのは事実」


「誰にも観られなくてもスキップ す る の ね?」


「…………しない」


「よろしい!評価してくれた方ありがとうございました!」



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