第8話 困った娘
空から突如降ってきて名前をニーチェと名乗った女性。魔法で空を飛ぶ事は可能と知っていたが……凧のような物か?制御を失い落下するのなら危うくて使えんな。
「あ〜目的もあったと思うっス。ちょっとシノブ?シノブンは何か知らないッスか?ちっちゃい情報でも構わないッス」
「南西へと向かっているようだったな。その方角に目的地があるのではないか?」
「なんせ〜?……あ〜わからんッスけど行ってみるッス!」
「達者でな。お前の無事を祈っている」
「…………」
なんだ?ニーチェは片腕を抑えながらワシを見つめている。
「女の子一人残して行くッスか?あっしはか弱い女の子ッスよ!こんな山奥……絶好のエサッス!ゴブリンやオークに襲われるって決まってるッス!」
「つまりなんだ?」
「一緒になんせーに行ってほしいッスよ。さっき困ってる人探してたッスよね?あっしが今、この世界で一番困ってるッス!」
…………
……………………
「そう言った訳で拙者はニーチェ殿を何処かに送り届ける。世話になったな」
冒険者達を集めて手短に挨拶をする。これを機会に隣の馬鹿女……ニーチェを送ったらアルフィーの町へ戻るか。
「ヒイラギ様……」「お達者で」
田舎町の冒険者達は名残惜しそうな瞳をしている。別れは辛いが1つ発破をかけてやるか。
「……この町に来る前に忍者の卵がいた。その男は拙者でも難しい試練を難無くこなし、それだけではまるで満足していなかった。拙者は奴に会うのが楽しみでもある。奴は拙者がいずとも1分1秒を惜しんで鍛錬をしているはずだ。どれ程成長しているのか拙者には想像もつかん。」
「うっ……ヒイラギ様も認めるニンジャ!?」
「どれ程の手練なんだ!?」
「その男の名を教えて下さい!」
冒険者達は話しに食いついてきた。ワシが誰かを褒める事はあっても此処にいない存在を褒めるなどなかったからだ。
冒険者達は嫉妬の感情を燃やしている。
「奴の名はタウロスだ。お主達も拙者がいなくとも鍛錬を続けよ。成長し続けるのだ!」
……
…………
「シノブンって人望あるッスね〜」
「人望はわからんが人には長年教えていたからな。目的地はアルフィーの町で良かったのか?」
「覚えてないからそこから当たるッス。それよりもお腹ペコペコちゃんッスね〜。シノブン何か食べ物ないッスか?」
面倒奴だ。騒がれてもうっとおしいので懐にしまった非常食をニーチェに手渡す。
「ん〜?なんスかこれ、お団子?」
スンスンと犬のように匂いを嗅ぐが当然匂いなどしない。ニーチェは恐る恐る一口齧り
「ん……美味しくない。最悪な見た目よりも美味しくないッス。これ材料なんスか?」
「森の幸だ。嫌なら返せ」
「ブーッ!もう口つけたからあっしのッス!」
ーーーーーSideニーチェッス!ーーー
ハァ……参ったッス。なんであっしは地面なんか歩いてるんスかね?いや、あんまり覚えてないけど空を縦横無尽に切り裂くように飛び回って……なんの為に飛んでたっけ?
目的があったはず……たしか、家で食っちゃ寝食っちゃ寝してたから怒られて、ムカつくから家出したんだった。うんうん!思い出してきたッス!
「思い出したらムカついてきたッスね〜!」
「記憶は戻ったのか?心を静めよ」
ああ、いけないッス。思わず声に出てしまったッス。女の子としてあるまじき言動。あっしはお淑やかな女。花も恥じらう女の子!
「少しだけ思い出したッス!ちょっと聞いてほしいッス。もうプンプンッス!あっしはその日もグッスリ寝てたら急に叩き起こされたんスよ!それでムカつ……怒って家を飛び出したんス!多分あっしは知り合いの家に厄介になろうと思ってたんスよ」
「親御さんが心配する前には帰れ」
うわ〜……シノブンってつまんね〜ッス。普通はこんな可愛い女の子を前にしたら『俺の家に来いよ』の1択なのに……どんだけシャイボーイなんスか。
「シノブンって女の子にモテないッスよね?」
「否定はできんな。それよりもう少し早く歩けんのか?」
「あっしのキレイなあんよちゃんを見てみるッスか?多分普段は空飛んでたから歩き慣れてないんスよ!…………も〜〜!歩きたくないッス!おんぶ!おんぶしてくれなきゃ動かないッス〜!」
シノブンが溜息をつきながら近づいて来た。フフ。美少女と密着出来るチャンスッスよ。身に余る光栄をまお「ブッ!?……えぇ…な…んで……腹……パン?……………」
無防備に両手で迎え入れようとしたあっしのポンポンに深々と突き刺さった右拳。胃液とさっき食べたクソ不味い団子を吐き、あっしの意識が遠のいていく…………
「暴れられると面倒なのでな。目が覚める頃にはついている。ゆっくり眠ってろ」
………………コイツ……キ…ケ…ンダ…………
ニーチェ&ジルのおまけと感謝
「ブクマしてくれた読者様!評価してくれた読者様本当にありがとうございます!」
「やっとメインヒロイン登場ッスね。展開が遅すぎるッス!」
「何処の世界に腹パンされるヒロインがいるのよ?いや、いるかもしれないけど」
「……なにビビってるッスか?ここは好き勝手していいんスからジルジルもキャラを立てろッス!お淑やかなあっしがジルジルのボケをそっと受け止めてやるッス!」
「え?いいの?……でもどうやってボケればいいの?」
「そんなの知らねッスよ。あっしは真面目しか取り柄のない清楚な女なんスから。ボケはさっぱりッス」
「でも私ってツッコミ担当だし、いきなりボケても大丈夫なのかな?いいのかな?」
「いいっスよ。あっしもジルジルと同じで何のキャラも立てられない没個性ッスけど一緒にちょっとづつ頑張るッス!」
「うん!ニーチェにはツッコまないからね!」




