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第6話  魔物退治


 シノブと若い冒険者二人が山奥へ入っていく。赤い狼煙に向かって。近づくに連れて他の冒険者達と合流し徐々に数を増やす。


「ヒイラギ様!ゴブリンの巣を発見しました!現在見張りを3名つけてます」


 ゴブリン。魔物の中でも最弱。普通の大人ならば一匹ぐらい楽に殺せる程の弱さ。その巣に対して20人の冒険者が集まっている。


「拙者は見に徹する。お主達の成長を見せてみろ…………散開!」


 シノブさんの一声で冒険者達は足音を立てず消えていく。シノブさんは辺りを見渡し暢気にキノコ採取に勤しんでいた。


…………

………………


 「一匹逃がしたぞ!目は潰している!」


 荒々しい声が森に響き私の前にゴブリンが一匹……身構える前に呆然としてしまった。


 そのゴブリンは片腕が無い。両目は杭を打たれ、耳と鼻は削ぎ落とされている。ヨロヨロと片手を前に突き出しながら私達に近づいてくる。


「威の勢がなくなっているな。上々だ」


 シノブさんの声が聴こえたと同時にゴブリンの醜い悲鳴があがり慌てて踵を返した。その足も切り落とされた。


 ゴブリンは呻きながらも這いずっている。死に体。片腕だけで地面をナメクジのように這う。


「ととトドメ!早くトドメを……」


「こいつはこのまま逃がす」


 逃がす?シノブさんはゴブリンに慈悲をかけるつもりなのか?慈悲というのなら一思いに殺すのが慈悲だ。


「こいつを含めたゴブリン共は見せしめだ。人間の領地に巣など作ったらどうなるかを理解させる為のな」


 次々と私達の前に運ばれる瀕死のゴブリン達。ゴブリンは再生能力がない。四肢を失えば一生失ったまま。


 シノブさんは一匹一匹丁寧にゴブリンを観察している。余力がありそうなゴブリンの舌を引き抜き、両手のないゴブリンには別のゴブリンの足を雑に縫合し野に逃がす。


 生き残れる術はない。精々他の魔物に養ってもらうぐらいだが……


 その光景は戦慄と吐き気と…………言い知れない何かをもたらしてくれた。



「……これから三日間は警戒レベルを上げる。町の住民が外にでる時は3人付け」


「ハッ!」「了解」「御意!」


 このゴブリン達がどうなったのかはわからない。森で野垂れ死んだのか、別の巣に辿り着いたのか、辿り着き復讐を誓ったのか……二度と人間に関わろうとしないのかは、わからない。



…………

……………………


 冒険者ギルドに戻って来た。交代の時間のようだ。この町の冒険者は全員で魔物退治を行っている。単独やパーティなどではなく集団。統率のとれた一枚の岩壁。


「お主達は何かしら得意な事はあるのか?」


 シノブさんの問いかけ。得意というか……旅をしながらその仕事しかしなかった。


「あ……え…と……汚水処理……です」


 幼馴染みの男と共に私も顔を伏せる。仕事なのだから笑われる謂れはないのだが、明らかに下の下の仕事。汚物に塗れ、匂いは身体に染み込んでいく。


 どの街でもその依頼で喜ぶのは受付の人。周りは蔑んだ瞳を向けてくる。依頼を終えると受付の人ですら鼻をつまみながら報酬を渡してくる。


「聞いたか?皆の者」


 シノブさんが全員を見渡した。他の人達は黙っている。


「誰もが嫌がる排泄物の処理を進んでやる。若いのに立派な奴等だ」


 明らかに年下のシノブさんに褒められた?のかな?


「良し!お主がこの町に滞在している期間は名前をくれてやろう!」


「えっ!?」「このような若造に!?」「早過ぎます!」


「黙れ!そうだな……お主の名は…………雲光」


「う……ウンコ!?」

 

雲光(うんこう)だ!馬鹿者!」


 ……私の幼馴染みの彼は……雲光というか名前になった。ここの人達は気さくで全員が家族のようで居心地が良く……つい……長居をしてしまい……



…………

……………………


「雲光君!お疲れ様!」


「……3ヶ月も経つとその呼び名に慣れてきたよ。慣れると結構格好いいよな」


「う〜ん……前よりは、ね!」


 シノブさんは誰かに名前を付ける事は滅多にないらしい。私も貰えてないし、雲光君の他には絶狼(ゼツロウ)さんだけだ。偽名はいざという時に役に立つらしい。シノブさんも偽名を2つ持っていて、本名は別にあると言っていた。



 私の仕事は雑用が主だ。料理やケムリダマの調合。料理は最初こそ抵抗があったが雲光君の名前と同じで慣れてしまえば


 芋虫やイナゴなど見てもなんの感情も沸かなくなる。ただの栄養価が高い食べ物。それだけ。味付け次第で美味しいから最近では料理が楽しいまである。


 ケムリダマはシノブさん監修の元で作っていたが最近やっと一人で任せて貰えるようになった。危険度の高い毒入りは私一人ではまだ無理だ。



 多分こんな町は何処にもないと思う……楽しい!


…………

……………………



 冒険者ギルドに見慣れぬ男二人が入ってきた。衣服は破れ顔は泥だらけ。


「ここに来ればタダ飯食わせてくれるって噂は本当かい?」


「飢え死にしそうなんだ!なんか食わせてくれ」


 冒険者の成れの果てだろう。私が厄介になっている町は平和そのものだ。危険が来る前に排除してしまっている。余所から見れば安全地帯。国からの補助金は全て冒険者ギルドの収入……私達が何もせずに金を得ていると思われている。


「雲光……奴等を連れて来い」


「御意のままに」


 雲光君……すっかりみんなと同じ喋り方になってる。前だったら絶対言わなかったのにな……


…………



 あの二人がどうなるか……私は見なくてもわかる。


 多分埋められてる。頭以外を土に埋められ、魔物や獣の囮として仕事をしているのだろう。


 シノブさんは……全ての人達に優しい人間ではない。

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