表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

50/508

第3話 予想を超えてくるもの

 

 ジルがカーター家にお礼をする1週間前。


 タウロスはレイラの暇潰し相手になりつつも普段と変わらない仕事をこなしていた。何を言われようと止まらないはずの手がピタリと止まった。


 止めざるを得ないワードが耳に入ってきたからだ。


「え?もう一回言ってくれない?」


 しっかり聴こえていたがあまりにも不意打ちすぎて聞き返してしまった。


「ですから、ジルがお兄様に挨拶したいらしいですわよ」


「な、ななななんで?」


 動揺を必至で隠しながら慎重に探りを入れる。


「知りせんわよ。わたくしもちょっと会っただけですもの。たしか……要件を言っていた気もしますけど、忘れましたわ!」


 そこは覚えといてよ!……落ち着け落ち着けタウロス.カーター。思い当たる節を考えるんだ。


 俺が唸りこんでしまって不満なのかレイラは常に彼女の側にいる人物を呼び寄せた。


「メイデン!ジルが何を言っていたか聞いてないですの?」


「……たしか……タウロス兄様に自分の好意をお伝えしたいと。私は記憶しております」


「う……嘘……だろ?」


 たしかに俺はジルが好きだが、一目惚れでジルは俺と話した事も無いんだぞ。一回だけ……俺がヒイラギさんに変装させられたときに挨拶したぐらいだ。


「タウロス兄様は女心がわかりませんからね。一度落としてみてはいかがです?」


 何を?


「そうですわ!お兄様は鈍感ですわ!ジルは時折物思いに(ふけ)ってはお兄様の名を呼んでましたわ!あれは恋する女性の瞳でしたわ!」


 マジか?


 ちょっとこれは……仕事が手につかなくなるぞ。二人して俺をからかっている事もあるが……レイラはともかくメイデンは自分から率先しないから……信憑性は高い。高いと信じたい。


「いいいいつ来るって?俺も都合つけないといけないし」


 その日は仕事サボろう。今日でも明日でも大丈夫だ。


「いつでも良いって言いましたわよ。お兄様は毎日家に居て暇ですわよね?」


 嘘だろ?暇に見えるのか?今だって書類に目を通しながらハンコ押してるんだぞ。俺の平均睡眠時間教えてやろうか?最近また目の下にクマが出来てるんだぞ。



「それで?お受けなさるのですか?」


「俺……誰かに好きになってもらえるなんて初めてだし……お友達から」


「女々しいですわ」「女々しいですね」


 レイラとメイデンの声がハモった。二人して俺を蔑んだ瞳を向けている。


「ジル様は一大決心して愚兄に告白するのに貴方はお友達から?脳ミソが腐ってますね」


 うん。本人の前で愚兄はやめようか。傷つくから陰で言ってくれ。


「お兄様!恋は押せ押せですわ!恋愛ならわたくしにお任せですわ!」


 うん。レイラは押せ押せした結果かは知らないけど、ヒイラギさんはどこかに消えちゃったよね。



「でも俺どうしたらいいかわからないし……」


「こう見えて私は7年間世界中を旅していました。恋の1つや2つ、経験済みです。私とお嬢様でお出迎えの準備を整えます。タウロス兄様は自分の心に素直になるべきです」


 メイデンが優しい言葉をかけてくれる。これは……


 罠だな。俺を陥れるつもりだ。人を馬鹿にしやがって!


「わかったわかった。恋愛経験豊富な二人に任せるから。頼んだよ」


 大人の女性と見られたレイラは喜んでいる。嘘じゃないのかな?あんまり期待せずにいよう。どうせジルは来ないさ…………


 …………

 ……………………


 来ないと思っていたジルがやって来た。美しいドレスに身を包んでいる。王国の王女様みたいだ。顔は緊張しきっている。


 本当に……告白しにきたのか?嘘……これ現実?


 執務室のソファーに腰掛けるジル。全身を包むような柔らかな弾力に驚いている。落ち着かないのかキョロキョロ部屋内を見渡しながら言葉を発した。


「え……ええと……その節はありがとうございました」


「あ……その節……うん。その節?」


 どの節?……アレか?ローレス家の家賃を免除してることか?あれはヒイラギさんが俺に針を刺しまくるからやったことだし……他にも色々やったなぁ……無駄だったけど……


「こ、これ!お礼の品です!ミシェル……私の学友の武器屋で貰ったんだけど……あとこれは私が買った花…………どうぞ」


 コトリと置かれた短剣と一輪の花。俺は武器の事はわからないな。でも装飾から言って価値は高い。精密に造られた鑑賞用の武器かな?もう一つは可愛いらしい花……ハナミズキかな?



『――聴こえますか?聴こえますね』


 え?その声……メイデン!?


『今タウロス兄様の精神を本人の意志とは無関係に無理矢理削って私の思念を飛ばしています。初めての試みですが成功して一安心です』


 それ……俺に害はないの?


『安心して下さい。私一人程度の思念ならば今日明日程度で害がでる魔法ではございません』


 怖いからやめて!


『お兄様!ガンバですわ!』

『タウロスさん……応援してますぜぃ!』


『お嬢様とマイストも陰ながら応援してくれてます。かなりの負担ですが、タウロス兄様の精神が崩壊しようとも思念は送り続けますので心を強く持って下さい』


 …………コイツら……なんなんだ?レイラとメイデンは百歩譲っていいけど、俺の護衛してるマイストは俺に負担かかる事は止めろよ!


 俺の心の訴えは全く通じずにメイデンは淡々と説明してくれる。俺にとっての有益情報。


『ジル様が渡された短剣、中に二振りの刃が仕込まれている夫婦剣(めおとけん)です。その意味は言わずもかな』


 本当かよ……本当なのか?


『それと……これは私としても予想外でしたが、博識なタウロス兄様は当然知ってますよね。ハナミズキの花言葉』



 予想外って何だよ?


 ハナミズキの花言葉、知ってるよ……たしか〈永続性〉と〈返礼〉と…………





 〈私の想いを受けてください〉

レイラ&ジルのおまけと感謝


「たくさんのブクマと評価ありがとうございました!」


「やっとジルに出番が回ってきて良かったですわ!後書きで出番がないとぴゃーぴゃー鳴いてたジルが懐かしいですわ!」


「う……いいじゃない。本当に出番無いしメイデンには馬鹿にされるし……」


「なんで本編ではメイデンに、さん付けですの?」


「え?だってあの女が気軽にメイデンさんって呼べって言ってたから……一応抵抗してるんだけど」


「でしたらわたくしもレイラさんってお姉さん扱いしてほしいですわ!」


「いや……年下だしレイラちゃんでいいでしょ」


「これから次第ですけど……わたくしがジル義姉様って呼んでも構いませんのよ?」


「……この勘違い話はまだ続くの?」


「今回はあと1話ですわよ」


「今回……まあ……出番貰えるならいいかな?」


「現金な女ですわね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ