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第2話  いざゆかん!


 バルザック君に無料で貰った短剣を眺めながら思う。


 どれだけ価値があるか知らないけど、これを売れば私……両親の借金など楽に返せていたのでは?そんな事は思う事すら失礼なので心の奥底に蓋をする。


「これで……もう大丈夫かな?メイデン……さん、今からカーター家に行っても大丈夫なの?」


「あの愚兄は見た目に反して忙しいお方。仕事が一段落つくのは17時以降。それ前はご遠慮願います」


 見た目関係あるの?意外と忙しいんだ。でも……


「レイラちゃんはいつ来ても良いって言ってたんだけど……」


「お嬢様は見た目通りお優しいお方。建前と本音は当然あります。それを鵜呑みにされてはお嬢様の心遣いも報われませんね」


 うっ……メイデン……さんの言ってる意味はわからないけど今行くのは不味いらしい。そうなると時間が空いてしまう。


「つかぬ事お伺いしますがジル様。カーター家にその様にみすぼらしい格好で来るおつもりで?」


「えっ!?ダメなの?」


 一応毎日洗濯しているが服はクタクタ。糸のホツレなど指摘されると恥ずかしくなる。動く分には楽なんだけどなぁ。


「ハァ……まずは身なりを整えましょう」


「え……でも私お金あんまり持ってな――」


「キビキビ動く!時間は待ってくれませんよ!」


「あ……はい!」


 反論を許さないメイデン……さんの一声。彼女の後ろを付いて行きたどり着いたのは


〈レイラ.カーター様御用達 アルフィー1の仕立て屋〉


 看板にデカデカと書いてある。外装も立派。高級感漂う雰囲気は貧乏人には縁のない場所。メイデン……さんに続き店へと入る。


「いらっしゃいませ」


 入り口から男女それぞれから挨拶をされた。二人は入り口前からずっといたのだろう。店番が眠りこけてるミシェルの武器屋とは大違いだ。


 最高峰の魔法使いが店番してるのは、それはそれで凄いけど……


「彼女にドレスを一着。」


「畏まりました。それではこちらへ……」


「え!?ドレス?私お金持ってないわよ」


 独特な雰囲気に逆らえず店奥へ……この流れはまさか……


  借金させられる!?返済と同時に借金スタート!?


 

 頭が真っ白になった私は店員の女性にされるがままにスリーサイズを測られた。


「あの……値段……私、お金……」


「当店はオーダーメイド専門店でございます。貴女様がお気に召さなければ代金など頂けませんのでご安心下さい。」


 私の不安を女性は笑顔で払拭してくれた。


 安心など微塵も感じられない。こんな店に来る人はいくらぐらい持っているのだろうか?所持金が銀貨2枚の私は場違いを通り越している。


…………



「私はお嬢様をお迎えに行って参ります。楽しい時間をありがとうございました」


 ドレスが出来上がるのを呆然と見続ける私の何処に満足したのかメイデン……さんは丁寧なお淑やかなお辞儀をして仕立て屋から去って行った。


 もう……謝るしかない。金がないのにドレスを発注した無責任な女。私は犯罪者だ。出された紅茶の味などわからない。



 魔法で作られたドレス。私には一生縁のないと思っていた豪華な衣装。昔読んだ絵本のお姫様みたいだった。職人さん達が私の予定に間に合うように一切手を抜かず作ってくれた私だけのドレス……


 私の困惑の顔に店員が不安そうに聞いてきた。


「どうされましたか?お気に召しませんでしたか?」


「違います!私お金持ってないんです!でも絶対払いますんで!本当にごめんなさい!」


 店員はキョトンとしながらも深くお辞儀をすませ


「こちらはメイデン.カーター様よりご注文を承っております。貴方様から代金はいただけません」



 …………メイデン……さん。1言、言ってくれれば良かったのに、でも私が絶対断るからかな?……ありがとう。



…………

……………………


 豪華なドレスに身を包んだ私を周りが見ている……気がする。普段なら気にしない水溜りも絶対踏まないように注意している。


 ゴブリンの巣以上に警戒している私がいる。絶対ドレスを汚さないように。

 


 でも全部貰い物……私は銅貨1枚も出してない。


「すいません。この花ください!」


 ハナミズキ……だっけ?花言葉はたしか《返礼》だったと思う。

 これをタウロスに贈ろう。お礼一つでえらく苦労しているがこれも感謝の一環だ。


 …………

…………………………


 町の中心に位置する大豪邸。門前には二人。入り口には一人。絶えず警備の人間がいる。それがカーター家。


「あ……あ……あのあの私……じる……ジル.ローレス」


 目の前まで来ると恐怖しかない。シノブ君はよく平気で入れたものだと関心してしまう。


「……ジル.ローレス様……お見えになりました……はい……」


 警備の人が何かを確認し門を開いてくれた。ここから屋敷までは一直線。100Mぐらいの距離。


「「「ようこそお越しくださいました。ジル.ローレス様」」」



 その直線にキレイに並んだ人達。百人では足りない。前にレイラちゃんが30人ぐらい住んでいると言っていたが……住み込みが30人だったのか?


 何が起こっているのか理解出来ない。


「嘘……でしょ?こ……これが……カーター家……」


 お茶菓子などと言ったお土産では恥をかいている。くたびれた私服を着ていたら生き恥をかかされていた。


 生唾を飲み込む音が屋敷内に響いた。

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