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第1話  忍者のいない町

 

「ジル!今日はどの魔物を討伐しに行くよ?」


「あ、ゴメン今日はちょっと用事があるの」


「そっか……それじゃあまた明日だな」


 初級魔法使いになって半年。私ジル.ローレスは再試験の結果やっと認められた。正直再試験の理由はわからない。シノブ君が町から消えたのと関係あるのだろうか?


 初級魔法使いとは国が認めた魔道士だ。冒険者ギルドでの単独活動を許可される。


 つまり、力さえあれば金が稼げるのだ。ここ半年はタイラーと一緒に魔物退治に明け暮れていた。彼は実力があるのに金に興味がなく7:3で私の方が多く貰っていた。


 タイラー.ヴィント……悪魔封印を生業にしていた家系。悪魔を殺せる存在、メイデン.トゥリーがいなければ彼はこの町にはいなかったかも知れない。


 タイラーには家柄の事を忘れて成功してほしいと願っている。彼のおかげで私は早く借金を返済する事が出来た。


 今日は借金を肩代わりしてくれて利息をつけないでくれたタウロスカーターにお礼を言いに行こうと思っている。前もってレイラちゃんに伝えているから大丈夫。



 …………


「お礼の品……やっぱり必要だよね」


 町を散策しながらふと思った。感謝の一つよりもお茶菓子の一つの方が嬉しいだろう。行き当たりばったりだが今気づけて良かった。


 羽根ペンかな?紅茶葉?カーター家は大金持ちなんてレベルではない。下手な一品を渡しては逆に不快を買いかねない。


「私もお金あんまりないし……」


 青空を見上げながらため息を一つ。気が重い。


「ジル様……どうされました?」


 ふと視線を下げると艶のある長い黒髪。メイド服に身を包んだ無表情な女性。


「メイデン……メイデン.カーター」


「……貴女とは歳も変わりませんし気軽にメイデンさんと呼んでくれて大丈夫ですよ」


「えぇ……?こんにちはメイデン…………さん」


 レイラちゃんの付き人なのかメイドなのかわからない人。滅多に会うことはないのだが私は苦手だ。


「今は私暇なのでご一緒しても宜しいですか?」


「え?私は今から……」


 私がカーター家に行くからか、メイデン……さん。は当然知っているだろう。だから付いてきてくれるのか。正直一人でカーター家の門を開くのは怖い。


 「よ…宜しくお願いします」

「お願いされました。ホラ、キビキビ歩きなさい!時間は有限ですよ」


 「あ、うん」


 なんか私に厳しくない?レイラちゃんと一緒の時は会釈しか見た事なかったけど、普段はレイラちゃんも厳しく躾けられてるのかな?なんか違和感あるけど。


…………



 町にある武器屋の1つ。寂れた店。来る者拒む雰囲気纏わせる建物。つまりここは……


「ここってミシェルのお爺さんがやってる武器屋よね?本当にタウロスは武器がほしいの?」


「はい愚兄は『これからは剣1本で殺っていく!』と、申しておりました。間違いありません」


 ……一緒に住んでいるメイデン……さん。が言うのならそうなのだろう。折れた剣から造る御守ならばそこまで値も張らない。



 鈴の音を鳴らしつつ扉を開ける。


 中には少年が椅子に座ったまま眠りこけている。ミシェルの弟。バルザック君だ。5人目の魔法適正S。


バルザック君は瞼を擦りながら大きなアクビをしつつ


「ん…ぁ…?冷やかしお断りだひ、今は弟子もお断りだよぉ」


 私の身なりを見て瞬時に貧乏を看破した。間違いではない。そしてバルザック君は私の隣メイデン……さん。を見て眠たげな瞳を見開いた。


「メイデン.カーター!試験の時以来だね。ボクに用事?それとも…………やっと動くのかい?」


「……今日はジル様が――――」


 メイデン……さん。は私に聴こえない声でバルザック君に耳打ちをしている。真剣な眼差しのバルザック君は一瞬だけ驚いた顔をした。 


「ふぅん。そう言う事ならボクも祝いたいから無料で良いよ…………これでいいかな?」


 祝う?借金返済祝いかな?それより戸棚から取り出された小さな短剣。高い武器とは無縁の私でもわかる。これは……高価な武器だ。


「え?これ……無料でいいの?バ、バルザック君」


「お祝いって言ったろ?ケチ臭いマネもしたくないし、タウロスだっけ?渡してやりなよ」


「う……うん。ありがとう!」


…………

……………………


「あぁ〜……眠気が覚めたよ。時間は……姉さんはまだ学校か、魔道士の資格なんか要らないんだけど……ボクが言っても仕方ないし……早く姉さんと遊びたいな〜」


 二人が店を後にしてバルザックは再び大きなアクビをした。

 メイデン.カーターは試験前からずっと探していた。絶対に町に居るはずなのに……レイラ.カーターの側に居るはずなのに会えない。


 それが今日は会えた。


「……姉さんは……レイラ.カーターと一緒だね。メイデンは目を離したのか……ボクに会いに来てくれたからてっきり悪魔を殺す気になったかとも思ったけど……」


 違った。相変わらず彼女は悪魔を滅ぼすことに興味はないようだった。世界で一人しか持っていない力を……人類が望む力を行使しない女性。一度考えを聞きたかった。予想はついている。


  この世界の悪魔は殺してはいけない。

そして今はそれ以上に大事な事がある。メイデンはそれに注力している。


「ボクは男だからよくわからないけど、異性から見たら魅力あるのかな?」


 高価な短剣も渡したし……試験で元弟子がした粗相に対して最低限の義理は果たした。あの短剣の意味は知っているだろう。短剣を貰って喜んでたし、




「でも……女性から結婚の申し込みなんて……よっぽどタウロス.カーターが好きなんだね。ジル.ローレス」

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