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第41話 涙の価値


 片腕を亡くしたギースを無理矢理立ち上がらせ尚も追撃を加えるジル。自分が負けたらレイラが悲しんでしまう。合否の問題ではない。同じ学び舎で僅かな期間とはいえ育った仲間が泣いている


拳の硬度を上げる。鋼鉄と化した拳を躊躇なくギースの顔面にめり込ませ殴る。殴る。殴る。


 ジルは試験を受けられないだけで実力はあった。しかし金がなければ機会すらも与えられない。その機会は……凄惨な怒りと共に噴出された。


「……そこまで……ストップだ」


「…………ハァ……ハァ……」


 主審の声がかかりジルは殴る手を止めた。そしてジルに近づき。


「今のは開始の合図よりも速く攻撃したな。ペナルティを与える」


「…………は?なんでよ?私は――」

「次に反抗すればお前は失格だ。後ろに下がれ!」


 ジルの不服も解さずにギースに治癒魔法をかける審判の男。腕は戻らなかったが……腫れ上がった顔は戻り怒りの目をジルに向けている。


「……テメェ……殺してやる……」


「……もう一回ボコボコにしてやるわよ」


 互いに一触即発。しかし審判はジルに宝石を手渡した。


「ジル.ローレス、これを身に着けて戦え。次は失格にするぞ」


 ジルが宝石を手に取った瞬間変化が現れた。身体に纏った魔力が……宝石に吸い取られていく。

 このままやりあってもジルに分があると踏んだのだろう。上級魔法使いの二人としても絶対に負ける訳にはいかないのだ。


「まともにやっても勝てるんだけどよぉ……運が悪いとか抜かすなよぉ!」


 魔力のないジルなど多少気の強い女性程度。相手になる理由はなかった。非常な一撃がジルの顔を歪めた。



 シノブは己が勝つ算段をつけていた。




 なる程。この程度か……ワシならば


『シノブ……お主は何をしておる?』


 頭の中に声が響く。自分の師匠でもある先代様。


 ワシの試験故に口出し無用に願いたい。心揺さぶられる事なく試験を―――


『このタワケが!!』


 ギースが殴る手を止めた。全員の時が止まった。一人の青年を見ている。顔は見れない。足元でさえ殺気の塊。それが地面を伝い斬殺される錯覚を見ている。


 いつの間にか青年がジルを抱きかかえている。顔を腫らしながらも泣いていた。そっと地面に置き涙を優しく拭う。

 悔し涙だ。自分の無力感……友を無念も晴らせない無力感。青年はその涙をそっと拭った。


「ジル……ごめんなさいですわ!わたくしのわたくしのせいで」


「確かにレイラ娘のせいじゃな」


 レイラ以外は誰もが口に出さなかった事をはっきりと青年が口にした。


「その幼年で周りを妖艶にかけるとは……恨むのなら己の美しさを恨め。お主はまだまだ美しくなる。歳が経つに連れ、周りはお主の為に命を張りたがる」


 青年はレイラの涙をそっと拭った。レイラには言っている意味がわからない。目の前の存在を完全に理解できる者などいない。


「シ……シノブ……様……ですの?」


「乙女……そこの女……今はメイデンとか言ったな。その女もお主に惑わされた被害者じゃ。メイデンを恨む前に己の美しさを磨け!次は周りを自分の手で容易に操れるように!良いか?女の美しさは罪だ。お主は罪深い……故に何をやろうと許されるのじゃ。それを刻め」


「な……何を……言ってますの?」


「フハハハ!わからなくて良い!まずは己の本心を伝えて来るのじゃ。時が経つと凝り固まるでのう」


 レイラの頭を強引に撫で回しメイデンに向けて背を叩いた。


 いつの間にかメイデンは青年を凝視していた。レイラが目の前にいても気付かない程に、


「メイデン…あの……あの……」


 レイラの声で我に帰る。それでも完全に視線は反らせない。青年はメイデンに見向きもしていない。


「あの……メイデンがいつもわたくしを思ってくれてる事はわかってますの……でも……わたくしは……わたくしは……」


 拭われた涙が流れ落ちる。


「……自分の力で……頑張ってみたかったんですの……」


「全て……私の指示です。申し訳ありません。兄にも注意を受けました。レイラが傷つくと……本当に……申し訳ありません」

 

 メイデンの謝罪にレイラはゴシゴシと目元を拭い笑顔を見せた。本当は両親が絡んでいるのはわかっている。それでも自分が悪者になってくれる、誰よりもレイラの味方であるメイデン。


「つ……次は……前もって教えてほしいですわ! 


「……はい。お嬢様…………」


 メイデンはレイラの手を握り、空いた片手でレイラの瞳を覆った。

 アレが動いている。被害を抑えなくてはいけない。


「お嬢様……アレを観てはいけません」


 メイデンはリング中央に座す青年を見ていた。


…………

……………………


 青年は怪我をしたジルと話しを終え、リング中央で正座していた。隙だらけであり一分の隙もない美麗の象徴。


「……まずは貴様……女を欺いた罪は軽罪じゃ。よって斬首に処す。遺言を言え。貴様が死ぬまでは覚えておいてやろう」


破裂した片腕をツキバキだらけで復元を終えたギース。


「……とっとと終わらせようぜぇ」



「シノブ.ヒイラギ魔法適正C加護無しだな。


シノブ.ヒイラギ……ギース.アルバイン実技試験……始め!」



 審判の掛け声。正座のまま体勢を変えない青年は含み笑いをした後。盛大な笑い声を上げた。


「フハハハハ‼ワシも幾万と人間を斬獲してきたが……よもや遺言に『始め』とは……笑わせてくれるのう!」


「はぁ〜?なに言ってんだお前……気が狂ってるのか?」


 青年は微動だにしていない。目の前に置かれた刀に触れてもいない。そうとしか見えなかった。



 ボトリ 歪な球体が落ちた。審判を務めた男の首が無い。リング上に落ちてしまっている。審判をしていた男は気付かない。斬られた事実。首を落とした事実。死んだ事実。それらを男は何1つ理解していない。


 血飛沫1つみせないまま……男はこの世と別れを告げた。完全に死亡した後、亡骸から血が溢れ出した。


「さてギース(なにがし)……貴様は斬首など楽に死ねる希望は持っておらんじゃろうのう?女を泣かし女を傷つけるなど百度惨殺しても足りぬぞ!釈明も、酌量の余地なく魂を斬獲させてもらおう!」


 柊忍がゆっくりと誰の目にもわかるように幻魔刀に手をかけた。










ジル&メイデンのおまけとお願い


「気が進みませんね。ステータス公開は私が最後ですか」


「出落ちでしょ?早くオールSを見せなさいよ」



 メイデン.カーター



筋力C+

敏捷A+

体力B+

精神A+

魔法適正S  思うだけで魔法を行使出来る。人体に関係する魔法が得意。全ての能力に+補正がつく。


加護  隠密の加護S 風の加護S 防人の加護S 仁愛の加護Sその他諸々


「……別にコメント出来ませんよね。」


「加護がひどいになってるわよ。魔法適正Sは加護がぶっ飛んでるから貰う程強くなるのよね」


「役に立たない加護ばかりですよ。いつかお嬢様に関係する加護で埋め尽くしたいですね」


「宜しければブクマか最新話から評価お願いします!」

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