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第十一話 忘却の約束


「本当にごめんなさいぃ!」


 レイラを連れて煌びやかな一室でリドヴィアは大きな声と申し訳なさ全開の態度で謝った。


 しかしレイラには何が何やら、そもそもリドヴィアは、


「リドヴィアはわたくしのことを覚えていますの!?」


 微かな期待が込められた一言。

 全員がレイラの存在を覚えていない訳ではない。と言う期待。

 ならば探せば他にもレイラを知っている人物はきっといると。


「残念だけど覚えてないよぉ。姐さんにレイラって存在が確実にいるって真実を教えてもらっただけぇ。そんでもって姐さんにものっそ怒られたからリドヴィアちゃんは手助けする為に連れてきた訳だしぃ」


 またしてもハズレだ。しかしレイラからすればリドヴィアとの付き合いはかなり浅い。普段でも忘れる可能性すらある人物が今更覚えてくれても


「う……ヒック……うぅぅう。どうして。どうしてわたくしだけ」


 嗚咽と共に涙が溢れてくる。

 どうしてこんな事になっているのか。

 レイラには身に覚えが全くない。


 そんなレイラにバツの悪さを感じたのかリドヴィアはまたしても頭を下げた。


「言い辛いんだけどさぁ。誰もレイラちゃんの事を覚えてないのはリドヴィアちゃんにもちょっぴりだけ責任があったり、なかったり、無きにしも有らずなわけでぇ」



「リドヴィアがわたくしに何かしましたのね!戻して!今すぐ戻してほしいですわ!」


 突然の意味不明な告白にレイラは慌ててリドヴィアの肩を揺すった。それはもうガクンガクン。ムチ打ちになろうともお構いなしだ。


「アババババ!!犯人はわかってる。でも戻す方法がわからない。聞いた限りだとそいつは戻す方法を知らないと思うからねぇ」


「……誰ですの?」


「メネント・ジルガ。風貌はよく変わってるけど三日前に会った時は痩せこけて腕を何本も生やした男だったよ」


 その名とその風貌を知っていたレイラはすぐさまここを出ようとした。自分をこんな目にあわせた元凶。何処にいても関係ない。必ず探し出して元に戻してもらうのだと。


「メネントを殺しても戻らないよ。『永別』ってのはそんなに都合の良い武器じゃない」


 しかしリドヴィアにご丁寧に止める理由を付けられた。


「永別ってなんですの?」


 このような質問が来ることは承知の上だ。

 しかし隠し通す真似はしない。しかし全てを話すような愚行はしない。あくまでも矛先が自分には向かないように。


 レイラか、ヘリックス。同じ消滅させられるにしても、対策や可能性のある方向へと導く。ゆっくりと、回りくどく出来る限りわかりやすく説明するために。自分はレイラの敵ではないと理解してもらう為だけに。


 ならばリドヴィアは精一杯の誠意をみせる。

 ヘリックスの方はインユリアになんとかしてもらう。可愛い後輩のために一肌脱いでほしいまであった。


 それにヘリックスが永別の存在を許していない。同職の善意による完全無償の働きなのだから今すぐどうこうされるはずがない。


 だから多少未来の話しをしても咎める人物など現れない。


 

「〜〜〜。なんか観られてるなぁ。ヘリックスいるのぉ?これ言って大丈夫ぅう?」


 リドヴィアは非常事態とはいえ、こちらに話しかけるという、やってはいけない行為をしたので自らの秘密を暴露する事も辞さない構えだ。


 


「……んん、こりゃいるなぁ? まいっかぁ。それでねぇ、遥か先の出来事なんだけどさぁ。奇跡の末子ってそれはもう、この世の終わりを告げる為に生まれた大災厄みたいな存在がいたんだよぉ」


「……奇跡の末子?」


 リドヴィアは頷きながら室内にあった二本の剣を手に取った。

 片方は切れ味鋭そうな短剣、もう片方は煌びやかでおよそ刃物としては使い物にならなさそうな短剣。



「レイラちゃんは剣が何を目的に作られたか知ってるぅ?」


「切るためですわよね」


 レイラ言葉と同時に切れ味鋭そうな短剣を見つめた。


「始まりはそうだねぇ、人間にはない『斬る』って特性。それを追求して現代の剣に辿り着いた」


 そしてリドヴィアはもう一方の武器を手に取り


「そして剣は『力』の象徴。時に儀式的に時に王者の証、時に勇者に贈られる無二なる秘宝。でもこの二つの特性は高められて完成には届いても、究極には届かないって言われてたんだぁ」


 なんだか眠たくなりそうな話だがレイラは一生懸命に聞いていた。なにしろ自分の存在がかかっている可能性があるのだ。


 眠くて聞いてませんでした! では済まされない。


「奇跡の末子はそれを究極へと導いてしまった。端的に言えばなんでも切れる剣だよ。空間や時間は当然として、寿命や欲でもなんでも。おおよそ人が思いつくものは全て切り離す特性を持っている。それをレイラちゃんに使われた。何を切られたのかは使った本人しか……あるいは本人にもわからない。究極に興味のない奴が作って究極を知らない奴が振るったんだぁ。理解なんて出来ない」


 レイラは自分の体を見渡した。

 ケガなどは何処にもない。もちろん三日ほど屋根なし生活を送っていたので擦り傷程度はあるのだが、


「わたくしそんな覚えはありませんわよ」


「それも含めて切られたかも知れない。奇跡の末子は永遠なる別れって意味で『永別』って名付けたのかもねぇ。現代では形を変えて性能を極限まで落とされて名前を変えられている。灰燼剣。そのオリジナルを喰らってるって言えば理解出来るかなぁ?」


 灰燼剣といえば神が持つことを許される秘宝中の秘宝だ。

 様々な場所、地中から発掘されダロス王国にも国宝として現存している。


 永遠の別れ。レイラの存在が二度と戻らないとするならば、


「リドヴィア」

「なぁにかなぁ?」


「リドヴィアがわたくしに後ろめたい事があるのは追求しませんわ」

「ひゅひゅい!?な、ななななんのことかなぁ?」


「後ろめたい理由は貴女の足に関係してますわよね?ですから追求はしません。その代わり協力してほしいですわ」


「んー追求しないのは素直に感謝だよぉ。二百年程グータラ過ごすぐらいなら面倒みるけどぉ。その顔は違うよねぇ?」


「ティオ……ティオ・カーターに会いに行きますわ。その次第でわたくしレイラ・カーターは終わり。だからその一度、たった一度を協力してほしいですわ」


 言い切ったレイラの顔は力強い決意を秘めていた。

 次第もなにも、まず間違いなく殺す気だ。リドヴィアにその為の戦力を寄越せと言ってきている。


 殺させる訳にはいかない。

 かと言って協力しない手などあり得ない。断った事が原因でいずれレイラ、あるいは彼女に協力する者が何処からともなく現れて自身が殺されるのは目に見えている。

 折衷案としてリドヴィアは奥から一人の女性を連れてきた。


「こいつは調整中だからすぐには貸せない。でもこいつを倒せる奴なんてもうこの世界にはいない。リドヴィアちゃんも急ぐからさぁ。少しのあいだ待っててよぉ」


 その女性は虚な表情でフラフラと歩き不意に立ち止まった。

 額には大きな傷を負い、包帯をこれでもかと巻かれたピクリとも動かない左腕。


 それがレイラを目にして光を宿した。


「『世界射抜ワールドハント』限定解除……あんた……あたいを知っているかい?」


「うそお!?喋ったぁ!?」


 驚いたのはリドヴィアだ。

 ここ一年苦労して傷を治したが問題の中身はポンコツだった彼女が明らかにレイラに対して反応している。


「ミリアム……ミリアムですわよね!急にいなくなって心配してたんですのよ!」


「そうだ。あたいはミリアム。そしてあたいはあんたと……レイラと大事な約束をしている。レイラにとってはちっぽけな約束なんだけどさ、覚えててくれているかい?」


「もちろんですわよ!ミリアムがわたくしにしてくれた約束を覚えてますわ! ——え? ミリアムは……わたくしの事を覚えて……くれてますの?」



「何を忘れても、何を破壊されても、レイラと約束をした真実は絶対に覆させない。あたいはそれだけを自分だけの美徳として守ってきた。レイラのおかげで贖罪を果たせたんだ。レイラの為なら残った幾ばくかの命、使い倒してくれて構わないよ」

 







ーーーーおまけーーー人物紹介ーーー


 リドヴィア・オルセン

 誕生日の毎に歳をとるのなら321歳 


 筋力 D

 敏捷 B−(片足、同情を引く為に松葉杖を使用)

 体力 F (高くすると不眠不休で行動しそうでしたので)

 精神 C-(すぐ調子にのる。永遠に治らない)

 魔法適正 A (本人がそう希望したでのコレだけは望み通りに与えました。)

 得意魔法  暴利カウントブースト

 




 一途なる寡欲  奇跡の欠片(オーバーラック)

 人の身ではありえない幸運を手中に収める。

 三百年ほど真面目に働いてようやく自由と共に与えられたが二十年前にウィリアムによって奪われている。その際かなり不貞腐れた顔で出戻りしてきた。 現在使用不可



 一途なる強欲  役不足(オーバーハンド)

 自分の経験を他者に渡す。

 力であったり知識であったり、怪我や病気、寿命に老い、枝毛から爪の垢に至るまで自分が獲得したものに関してなら何でも渡せる。


 わりとデリケートな罪業だが本人は普段から手足の脱毛や美容の為に使っている。

 数回ぐらい誤って髪の毛に使ってしまって見知らぬ何処かの誰かがフサフサになった。その際は引きこもった。


 



 今回は押し付けた先が、あまりにも大き過ぎた為に全てを押し付けられず罪業、永別ともにブッ壊れたが、やはり誤ってなのでしょう。もっとこまめに使うべきでしたね。

 

  

 


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