第40話 上級魔法使い
魔法塾の中庭。普段は閉鎖された空間がある。30M×30Mの正方形のリング。模擬戦や闘技大会の時、そして、試験の時。
「このクラスからはタイラーに……ジル、レイラ様と……ヒイラギか……ミシェル.ガーソンは棄権」
用紙を持ったアーダンの顔は暗い。教官は知っているのだろう。この中で設ける合格者が決まっているのが、
ジルなどは3年目だ。金銭面と言う苦難を乗り越えやっと試験に挑めたのだ。
それをワシよりも知っている教官だからこそ顔が暗い。ハゲ頭が光っていない。暗い。太陽の反射を嫌った暗黒のハゲ頭。
「試験官は……ギース.アルバイン……補佐とカヤックって名前の主審に一人つく。国から派遣された上級魔法使いだ。無理そうならすぐに棄権しろよ。チャンスはまだあるんだからな」
アーダン教官の声の抑揚からどうやって落とされるか感じ取った。ワシには一切効かない方法だ。
チャラチャラと色惚けた男がリングに上がった。
「ギース.アルバイン。バルザック様の弟子をやって1年目だぁ!さっさと始めるぜぇ〜!早く帰りてぇんだからよぉ〜」
順番は教官が決めたがレイラ、タイラー、ジル、ワシの順番らしいが特にそんな決まりはない。従う理由がないが最後は見に徹する事に向いている。
レイラが緊張しているとタイラーが片手で制し
「レイラお嬢、俺に先に行かせてくれよ……頼む」
「え……えぇ…わたくし……怖いですし……やっぱり……」
「俺がいい風吹かせてやる!」
剣を抜きながらタイラーがリングに上がった。審判を務める男が資料を確認し
「タイラー.ヴィント魔法適正A、確認されている加護は炎の加護。ヴィント家なら英雄の加護を持っている可能性がある」
試験官を務めるギースが醜悪な笑みを浮かべた。
「ヴィント家の血筋かぁ?血筋だけでも適正Aを出せる奴は良いよなぁ〜!安心しろよぉ!俺様は適正Bだぁ!お前の方が才能あるぜぇ!」
「……ふぅ……宜しくお願いします」
タイラーはギースの醜悪な顔を見ずに剣に魔法を込め始める。
「……タイラー.ヴィント……ギース.アルバイン。初級実技試験……始め!!」
これはワシには一切通じない方法。
「調子に乗った……この馬鹿があ!!」
ギースがリングに手を置いた瞬間氷杭がリングから突き出しタイラーの身体を貫いた。
「が……あ…………」
腹に大きな風穴を開けられたタイラー。致命傷ではないが戦闘は不可能か?治癒しながら戦えるのか?ワシには判断がつかん。
ギースと名乗る上級魔法使いは実力でもワシ達を落とすつもりだ。
腹からの出血を魔法で治癒したがギースの追撃は終わらない。
「オラ!まだなんも見てねぇぞぉ!さっさと見せねぇと終わっちまうぞオラァ!ヒャハハハハ!!」
「………………」
気を失っている。実力が違いすぎたのか……タイラーが気負いすぎたのか……これが試験だから命は取られないと油断したのか……
「タイラー殿の未熟故の失態。拙者には通じん」
「タイラー.ヴィント……不合格」
リングから降ろされ待機していた教官たちが治癒魔法をかけている。悔しさと申し訳なさが滲み出ている。本来の試験はこんな物ではなかったのだろう。
「次は……レイラ……カーター……」
主審がレイラの名前を呼ぶがレイラは返事をせずにワナワナと震えている。
「イヤ…イヤですわ……わたくし……やっぱりやめますわ。わたくしには無理ですわ」
目の前でタイラーが死にかけた姿を見ている。次は自分の番なのだ。趣虐が好きと言っても自分に害がないからそんな物を好きになれる。
自分が与えられる番となれば受け入れられる筈が無い。
メイデンが背中をさすりながら『大丈夫……大丈夫』と言っている。それでもレイラは首を立てに振らない。
その光景が5分程続いた時……ギースが声を荒げた。
「もう茶番は十分だろうカーター様よぉ?」
「え……茶番……」
レイラはキョトンとしている。自分の恐怖が茶番に見えているのか?違う。
「だからさっさと俺様に一撃当てて合格しちまえよ。そっちのシナリオに乗るのは構わねぇが面倒すぎるぜ!」
「な……なんのことですの?メイデン?どう言う……ことですの?」
レイラに顔を向けられたメイデンは目を反らしギースを睨み……射殺す眼光を向けた。しかしギースには通じていない。
それどころか笑いを堪えるように耐えて吹き出した。
「……まさか……カーター様本人は知らねぇのかあ?貴方様は合格するのが決まってたんだよぉ!他の奴等は全員失格!俺様だってこんな条件飲みたくなかったけどよぉ……メイデン.カーターがバルザック様とやり合ってくれるってんじゃあ……弟子としてはひと肌、脱ぐしかねぇだろお?」
レイラは目をそらすメイデンを見つめ続けた。目は合わない。考えても見ればメイデンと言う女は……カーター家は平気でこの程度やるのだ。
タイラーが怪我をしたのは実力不足ではない。レイラのせいだ。ジルも合格出来ないのだろう。レイラのせいだ。
目を合わせないメイデンに見切りをつけてタイラーには駆け寄った。
「わた、わたくし知りませ…………わたくしのせいでごめんなさい!わたくしのせいでごめんなさい!」
「………………」
タイラーは意識を失っている。折れ曲がった腕。多量の出血。治癒魔法を行使しなければ命に関わってくる。謝らなければいけない。レイラが未来を潰している。レイラと違い他の人たちは未来がかかっている。
ジルは俯いている。今回の試験が普通と違うのは感じ取っていたのだろう。
レイラは泣きながらジルに近寄るがジルは声もかけずに頭を撫でただけだった。
………
「ジル.ローレス適正B……3年目……加護は不明。」
「ハァ…マズったなぁ。事情は理解できただろ?さっさとお前も不合格になれや無駄なんだからよ」
ギースは頭を掻き毟りながらジルに棄権を促すが
「…………始めなさいよ」
「ジル.ローレス……ギースアルバイン!実技試験……始め!」
主審の声と同時にジルはギースの腕を取り
「グランドウェイブ!」
大地を隆起させる魔法を人間相手に使った。ギースの腕は膨れ上がり破裂し蛇のようにその場でのたうち回っている。
「……貴方が何を考えてるかなんてどうでも良いのよ。レイラちゃんを泣かせた貴方を……私が許さない!」
先代&ジルのおまけとお願い
「今回のステータス公開はシノブ君です!」
「今回で最後か……」
「え?まだメイデンがいるわよ。」
「主人公は最後が定石ではないのか?」
シノブ.ヒイラギ
筋力A−
敏捷S−
体力A−
精神E−
魔法適正G 魔力が一切ない異常体質。全ての能力が1段階下がっている。また全ての能力に−補正がつく。
加護 無し
「何だこれは!?納得いかんぞ!」
「いや、納得してよ。十分ヤバいじゃない」
「拙者の精神がEだと!?常に心を鍛えている拙者が!?」
「シノブ君って、結構慌てたりしてるわよね?顔には出ないけど動揺してるわよね。よく『未熟故〜』とか言ってるから妥当と思うわよ」
「拙者の心を鍛える為にブクマと最新話から評価を願う」




