第18話 お姉ちゃんに会いに
前回のあらすじ
タウロスは殺害予告を受ける。
震える手をなんとか抑えながらニーチェに向き直った。
「あのー、ニーチェさん……俺は殺されるみたいなんだけど?」
「そんな事書かれてないっすよ」
「いや、ほら決め事の最後にこの紙誰にも見せちゃいけないって。見せたら殺しに行くって」
ニーチェは最後の文を見てもキョトンとしていた。……文章の意味を理解してなかったのかな?
俺がニーチェに期待する事は一つだ。
『これはお茶目な冗談っすよ』って言ってくれ。
「あぅぅ、どうしょう……タウカスが殺されちゃう。あぅぅ」
「じょ、冗談じゃない!こんなの不可抗力だ!ニーチェが報告とかちゃんと出来るように手伝おうとした俺が殺されるなんてダメだろ!?ニーチェからアサシンバグって奴に言ってくれよ!」
「あぅぅ、あぅぅ」
ダメだ。ニーチェは『あぅあう』言うだけのポンコツになってしまっている。ついさっき単一の行動は出来るって言ったばかりじゃないか!
あぁ、ここで焦っても仕方ない。
俺に出来る事はあの紙は二度と見ないこと。
でも覚えちゃったしな〜。
あ、でも待てよ。待て待てよ。
「あのさ……イズヴィって誰?」
「イズヴィはイズヴィ。なんで?」
「困った事があったらイズヴィに頼れって書いてたからさ。イズヴィならなんとか誤解を解いてくれるかな〜って思ってさ」
「……あっしは役に立たないっすか?イズヴィの方がいいんすか?」
そんな悲しそうな顔しないでくれよ。
現に役に立つどころかニーチェのせいで殺害予告受けてるんだぞ?
ああ、違う違う。ニーチェのせいにしちゃダメだ。俺が自分から首突っ込んだんだ。
「そうじゃなくて……イズヴィって人に会ってみたいんだよ。場所はわかる?」
ニーチェは凄く嫌な顔をしながら帽子を何度もかぶり直していた。こっちのニーチェでもそんな顔出来るのか。
「嫌だけど……あっしも行く。嫌だけど」
ニーチェはイズヴィが嫌い……って言うより苦手なんだな。
ニーチェは足元に小さな魔法陣を描き始めた。
凄く複雑な式を魔導書もなく淀みなく書いている。
描き終えるとうっすらと光が輝き始めた。
「できた。この中に入ったら近くに出れる」
「……」
「タウカス?」
「さっきの紙に『転移魔法陣を使う時は人体に影響がないレベルまで速度を落とす事』って書いてたけど……大丈夫?」
「到着した時には身体がバラバラに結合されるだけだから大丈夫」
「……勝手なんだけど……速度を落とす事はできる?」
「出来るけど到着が遅くなる」
「どのくらい?」
イズヴィが何処にいるのかわからないけど流石に歩くよりは早く着けるだろうし、俺も明日からはまた仕事があるから日帰りで帰れないなら別の方法を考えようかな。
「2秒で到着するのが6秒になる「そっちでお願い!」」
…
……
気がつくと広い屋敷の庭に出た。
何処かわからないけどメイドさんらしき人物とニーチェに瓜二つの女の子……それに——
「……デグネ?ひょっとして此処はラウンジ卿の屋敷か?」
不味いぞ〜。完全に不法侵入だ。バレでもしたら流石に殺されはしないだろうけどウィル父様達に迷惑がかかる。
ってか、大池の前で集まってなにやってんだろ?
「イズヴィ様!今日こそはいけますよ!」
「ファイトですイズヴィ様!」
「今日はなんだが調子がいい気がするっす。デグネ、石」
「はっ!今日の一品は鍛冶屋に磨かせた石であります。失敗しても俺のせいではないであります!」
イズヴィは平べったい小石を受け取ると身体を反転させて腕をしならせて小石を池に向かって投げ込んだ。
パシャ、パシャ、パシャパシャパシャ、ぽちゃん。
「……」「……え?」「今、嘘?」「あ……ああ」
イズヴィを含めて周りは固まってしまっている。イズヴィは立ち尽くし、メイド達は両手で口を覆い、デグネは腰が抜けたのかその場にへたり込んでしまった。
「今、たしかに跳ねたっすよね?」
「えぇ。それも1回や2回じゃありません!5回ですよ!5回!」
「て、天才だぁ。このデグネが見つけた石でこんなにも水切りを成功させるなんて……イズヴィ様を胴上げするぞ!」
「「「そぉれ!わっしょい!わっしょい!」」」
「ちょちょ、やめるっすよ。今日は水の精霊の機嫌が良かっただけかも知れないんすから。恥ずこいっすよ」
「「「わっしょい!わっしょい!」」」
「……えへへ〜」
なんだこれ。すっごい楽しそう。




