第4話 あなたがいる世界
どうしてもうファティマが侵略しに来ているの?
どんな未来でもファティマが来るのは早くても三年後だったはず。
ロストが他の3人の美徳をハメ殺した後だったのに。
今はロストが存在しないから?
「考え事はまとまったか?逃げる気も立ち向かう気もなさそうだから放っておくけどよ。俺だって気は長い方だがあんまり待たせるとリドヴィアみたいにクッソ怒るぞ」
最小限の情報……それに留める。
「審判は持ち主が殺された時に発動する……発動した後は世界を終わらせて一から作り直してる」
「そこまでは予想通りだな。ってかその程度の情報で大見栄きってたのか?んでその一から作り直してる勤勉な奴の名前はなんだ?そいつを潰せば良いって結論は出てんだよ」
ファティマがアタシを睨んでいる。
それは怖くない。
……でも……母様に嫌われる……それだけが怖い。
「……前は神様を食べた奴が代行していた。でも今は……ニーチェとイズヴィという名の女が代行している。ニーチェ達を先に殺せば審判は発動出来ない」
「マキナ! お前ぇ! 」
母様に触れらた。顔がジンジンする。鼻から血が出ている。母様がとても怖い顔をしてアタシを睨んでいる。
「姉様達は魔法が使えないんだぞ!? それを それを…… 。 マキナは本当にクソ馬鹿だ! お前なんて 産まなければよかった! 早く死ね!死ね!マキナなんて死んでしまえ!」
母様がアタシを口汚く罵っている。
安心してください母様。きっとアサシンバグの使いがアタシを殺しに来ますから……だから。
「母様、アタシを……嫌わないでください」
「っっ……そんな目で 見る——え?」
母様が呆気に取られたように天を見上げた。
青白い光がゆっくりと母様に降り注ぎ
「 それ以上喋るな!このクソビッチがぁあ!
神の落涙 」
「 ニーチェ姉様 イズヴィ姉様 ……ブイ兄様?」
天から凝縮された青白い光が照射される。
光速なんて速度は避けようがない。
肉体が蒸発した訳ではない。煙となることもなく、世界に還る事もなく
母様の身体はこの世から消え去っていた。
「……母様?……ロクシリーヌ母様?」
返事なんてない。
その姿はどこにもなくて、色ついた世界で母様はいなくて
「はぁ、はぁ……害虫排除完了。あーくそ、やっぱりやめときゃ良かった。なんでミリアム達はあんなの生かしてんだよ。簡単な掃除も出来ないのかあいつ等」
「なんで……なんで母様を殺したの!?情報を言ったら殺さないって約束したのに!」
「約束なんてしてねぇよ。神に誓わない言葉に真実なんてありはしない。俺がいつ神に誓った?ん?どうなの?」
全身をブスブスと焦がし息を切らしたファティマが再び指を天高く掲げる。
アタシの眉間に赤い点が照射された。
「処女っ子。お前は中々有能だ。協力するのなら神の名に誓ってお前だけは殺さないでいてやる。だから知ってる事全部吐け。勿論抵抗は許可してやるけど繁殖行為をした事ない奴が俺に勝てると思うなよ?」
母様がいない……母様がいない世界なんて……
「 た 助けて 」
「だからお前だけは助けてやるって〜。まぁ寿命で死ぬまでだけど……」
「ブレドリパ助けて!」
「はぁ〜?——……猿の攻撃とか効かないっての」
瞬間、周囲の大木や草木は幾重にも切り刻まれ、
ファティマの身体は無数のカスり傷が出来ただけだった。
「純潔の奇跡か。マキナちゃんや。ワシを頼るとはどうかしたのかの?」
ブレドリパが来てくれた。何処に隠れてたかもわからないけどアタシの言葉にブレドリパは応えてくれた。
得体の知れない水が目から溢れ落ちてくる。
呂律が回らず上手く喋れない。
「うぐっっ……ひぐぅぅ……母様が……母様が」
「おぉ。よしよし泣くでない泣くでない」
ブレドリパはアタシの背中を優しくさすってくれた。
暖かかった。心地よかった。
アタシが顔をあげるとブレドリパの額に赤い点が灯っていた。
「……マキナちゃん、ちょっと息を止めとってくれるか?」
「苦悶を背負った俺に擦り傷与えるとか何者だ?しかし当然次は俺のターンだから受けてみろよ。避けても逃げてもお前は詰むけどな。
滅びの雨 」
アタシはまばたきなんてしていない。それでもブレドリパに抱えられた景色が一瞬で代わり別の場所に降ろされた。
「マキナちゃん、なんも心配せんでえぇ。お主はなにも悪いことをしとらんからの」
「……うん」
ブレドリパは遠くを見ていた。
ファティマが擦り傷、服までも復元しながら近づいてくる。
「 何者にも染まらず 何者をも染める者
少女の血は色をつける
少女の血は色を潰す
少女は我に意を持たず
ならば我は熱情燃やす蒼色を纏わん
穢れなき少女よ! 全てを朱に染める少女よ!
金輪に染まる事なき色を我に与えたまえ!
純潔の奇跡 内清外濁 」
完全に復元したファティマが笑みをこぼした。
そして……奇跡を使われた。
「ムカつく出来事が多々ある。
一つめは不意打ち……まぁ許してやろう。
二つめは俺の滅びの雨をかわした事。これも許そう。
最後に三つめ。どうして俺の前に姿を見せた?これだけは許されない」
「カッカッ! 合縁奇縁というやつじゃな。不思議なめぐり合わせの縁じゃのう。互いに袂と分かち会わぬようしておるはずが三度、お主と会い見えるのは最早お主と因縁という不思議な力によるものしか考えられん」
アタシは何処までも愚かだ。
ブレドリパはインユリアが用意した玩具だ。
七つの美徳に対抗する為に、万全を期す為に用意していたのに……アタシが不用意に呼び出してしまった。
今まで誰1人としてファティマを倒せなかったのに。
でも、あれだけ強いブレドリパならもしかしたら、
「あぁ、マジでお前かよ……【静寂】が来ていると俺だけが予想はしてたが本当にいるとはな。仕方ないから相手してやるけどよ、一度でも俺に勝った事あるのか?」
「一度目は半身を不随にされ二度目は生活出来るギリギリまで生体を破壊されたのう」
「そうだ。そして三度目は命を取ると言ったはずだ。なのに何故出てきた?お前は女の尻でも追っかけてたらよかったんだよ。目に見える範囲だけを助けてれば良かったんだ……」
「女性の助けに駆けつけん奴など漢が廃る。それだけじゃ」
「姿が変わろうとも変えられないものがあるってやつか。だとしたら軽々しく処女っ子を脅した俺が悪い気がするな。互いに強すぎるってのは悲しいな。お前が俺よりもほんの少し弱ければ……ほんの少しでも強ければ。互いに切磋琢磨出来るほど拮抗していれば、お前は呆気なく死なずに済んだのによ」
「女性を守って死ぬなぞ漢の本懐ここ極まれりじゃ」




