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第2話  母とのひととき



 母様は毎日来てくれた。

 朝になったら来てくれた。

 昼になったら来てくれた。

 夕暮れになると来てくれた。

 アタシに会いに……お団子を食べに毎日来てくれた。



 クソガキ共に混じって列に並んでいる。

 なんて清楚な姿なんだろうか、


 本来ならクソガキ共を追い払って母様だけにお団子を食べてほしいけど、


 ロクシリーヌ母様はお団子を何本かつまむと両手いっぱいに抱えてすぐに帰ってしまうのだ。

 少しでも長く母様を目に焼き付けたい。

 色のある世界での母様……素敵だ。



「イズヴィ姉様 ここはお団子を無限に 与える場所です アタシが見つけました」

「へぇ〜。ロクシリーヌは物知りっすね」


 とある日に母様がイズヴィを連れて来た。

 イズヴィはアタシを見て目を細めた。


 昔のコイツは時間ぐらい簡単に操る。

 今のアタシの姿を見て誰なのか予想がつくのだろう


「貰っていいんすか?」

「……どうぞ」


 イズヴィと話す事なんてない。

 さっさと消えろ。



 母様とイズヴィは隣同士で仲良さげにお団子を食べている。アタシはその光景が見れるだけで満足だった。

 でも今はアタシが焼いたお団子を嬉しそうに頬張ってくれている。

 アタシなんかでも母様を笑顔に出来たのだ。



「もぐもぐ——名前。そこのお団子屋の人は名前なんて言うんすか?」


 ちっ。イズヴィは知ってるくせに白々しい奴だ。

 下手な嘘もつけないのならせめて黙っててほしい。


「イズヴィ姉様 コイツは お団子屋です」


 もうそれでいいや。

 母様にとってアタシは子供ではなく【お団子を渡す道具】なのだ。



「違うっすよ。付けられた名前がちゃんとある——あ?お前名前ないんすか?」


 怖いからその釣り上がった目で睨まないでほしい。

 イズヴィは周りからどれだけ怖がられてるか知らないのかな?

 アタシも例に漏れずイズヴィが怖い。

 魔法が使えなくなっても怖いものは怖いのだ。



「……マキナ」



 アタシが名前を言うと母様が顔をしかめた。

 そして持っていたお団子を投げ捨ててイズヴィの裾を引っ張った。


「マキナ? お前はあの気狂い悪霊か!? イズヴィ姉様 帰りましょう! お団子屋は またアタシが見つけますから」


 母様のアタシに対する認識はその程度なのだろう。

 でも名前を覚えててくれただけでも……いいかな。


「早く早く イズヴィ姉様! マキナは アタシの子供だとか 嘘を抜かして……。 そのせいで八重とクリーヴァに凄く怒られた」


 嘘ではない。アタシはたしかに母様から産まれた。

 母様がアタシを嫌っているのは知ってはいたけど……改めて聞きたくなかった。


「そうだ! こいつを視なくなってから 姉様と再会出来たんです マキナは 厄病霊 二度と会いたくない だから早く! 早く逃げないと また姉様と離れ離れに なってしまいます!」


 ……。


「イズヴィ姉様は 信じてくれますよね? アタシは子供なんかつくってません。 つくったとしても姉様とアタシの子です」


 母様はイズヴィの裾を掴んで必死に弁明しようとしていた。アタシも父親はわからないけどイズヴィやニーチェではないのは間違いない。

 

 アタシはロクシリーヌ母様の子供だけど、

 母様にとってはアタシは母様の子供ではないのだ。



 クリーヴァ義父様は覚えててくれてるかな?

 ちょっと遠いけどそっちに行こうかな……

 


「あ あの イズヴィ姉様? どうかしましたか?」

「んな事言ったらロクシリーヌだって妹じゃないっすよ。これからは『姉様』なんて呼ぶな」


「そんな事ないです! イズヴィ姉様は ニーチェ姉様も アタシの姉様です」




「ロクシリーヌ……お前本当になんなんすか?」



「あ ぇ?あの イズヴィ姉様 その あの あぅ」


 久しぶりにイズヴィの怒った顔を見た。

 そうだった。あの表情だ。

 一切の感情を吐き捨てたかのような冷たい目。

 抑揚のない言葉。

 

 その全てが母様に向けられている。

 母様が殺される……イズヴィの短気のせいで


「ごごめんなさい! イズヴィ姉様 ごめんなさい!」

「なにに謝ってるんすか?ちゃんと考えてから喋れっすよ」


 

 イズヴィは胸元を広げて一枚の紙を取り出した。


「えっと——あっしは別にロクシリーヌが赤ん坊つくる行為しても嫉妬しないっすよ。あっしだって知らん間にニーチェとロクシリーヌって名の妹がいたんすからロクシリーヌだって知らん間にマキナって名の子供がいてもおかしくないっすよ」


 もしかしてイズヴィはアタシと母様の仲を取り持ってくれているつもりなのだろうか?


 嬉しいお世話だけど……

 イズヴィはどうしてここまで優しくなった?


  違う!


 イズヴィは絶対そんな奴じゃない!

 それが証拠に今イズヴィが持っている紙——

 それはカンペだろう!?


 カンペ見ながら説教されても母様に届くはずがないだろうが!母様を侮るな!



「——。ほら。あっしだって慣れない【お姉ちゃん】してるんすからロクシリーヌも【母親】出来るっすよ」


「……あんなの——」

「ちゃんと見ててあげるっすから」


「  はい!  」



 母様がアタシに向かって嫌そうな顔を向けた。

 後ろにいるイズヴィには気付かれないと踏んだのだろう。


「お前 本当に アタシの子ども なの?」

「 はい 」


「父親は どっち?」


 どっち?え?……種の親は知らないけど……義父様の事を聞いているのかな?


「クリーヴァ義父様です」


「はい嘘! イズヴィ姉様聞きましたか!? アタシはクリーヴァと そんな行為した事ありません!」




「……父親はタナトスっすよ。ニーチェが消えた1年後。お前が13の頃っすよ。遠い記憶だけど頑張って思い出してみろっすよ」



 アタシと母様は全く同じ顔をしていたと思う。

 長年クリーヴァ義父様達が探してもわからなかった父親の事をイズヴィは知っていた。


 母様も遠い記憶を手探りで思い出しながら顔をあげた。



「 あ  珍しい物好きな 姉様にあげようと 思って作ったんだった 相手は誰でもよかったから ……。 なんかその喋り方 タナトスに似てる気がする」

 


 



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