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第4話  素晴らしきかな


 6つに弾けた木偶の棒に近づく。腕を拾い上げ、足をもち、人形に添えるように繋げるように


『………………50点…………』


「はぁ?」


 試験監が呆気に取られた声をあげた。


「なに?何が50点なのだ?もう一度申してみよ。」

麻縄で繋いだ人形を抱き上げ空に掲げる。


『シノブ.ヒイラギ……50点』


 人形が点数を言い直した。試験監が眉を潜めながらも羊紙に書き記していく。彼奴の手の動き…………問題ないな。しっかりと実技50点と記入されている。


 その後換えの人形が用意された。ワシの忍術を最後にウンともスンとも言わなくなっだ。もとより喋るカラクリ、いずれ壊れる定めよ。


「……拙者の隣に寄るな!目立つであろう!」


「お前……何やったんだよ?魔法人形が点数を言い直すとか聞いた事ないぞ……壊れた所も見た事ないけどさ。

あと、あの人形は名前なんか呼ばない。そんな機能必要ないし、壊れたのなら尚更だ。」


 チッ!興が乗りすぎたか……まあ、この男なら今更不合格にはしないだろう。


 「…………シノブ.ヒイラギ100点……ゴウカク……」


 ワシは人形の声と全く同じ声を発する。


「あっ!人形の声!」


「どうだ?違いがわからんだろう?声帯模写術と言うやつだな。抑揚がない声など造作もないわ。」


「…………お前……凄い魔法使いなんじゃないのか?」


「凄いのは忍術を鍛え上げた御先祖様であり、それ等全てを継承し伝授した先代だ。魔法などと言う腑抜けた妖術ではない。」



……………………


 全ての試験が終わった。結局最高点は最初に挑戦した青年。平均点は45点……ワシは何点だろうが合格は確実だが、



「結果は三日後この場所で伝える。また会えることを楽しみにしている!」


 ……後日か…………時間が空いたな。しかしワシに暇など存在しない。町を見回りつつ……まずは寝床の確保が先決。


………………



「た……ただいまー!母さん!」


「おかえりなさいジル。お友達が来てるわよ。」


「こんにちはジル殿。シノブ.ヒイラギです。」


 ワシが受かりきる事は確定している。わざわざ山奥の母上様に心配をかける訳にはいかん。近場の友人の宿を借りるとするか。


 ジルは突如現れたシノブに狼狽しながら母にかけよった。自分を脅し金をせしめた悪党だ。一度泥沼に足を踏み入れれば……骨までしゃぶられる。


「母さん!この人強盗……じゃなくて……詐欺師……でもなくて……えぇと」


「ジル!お友達になんてこと言うの!」


「シルエ殿。まだ身体が蝕まれておられる。しばし安静にしておれ。」


 ベッドから起き上がり娘に詰め寄ったシルエの肩に触れ、寝かしつける。その光景にジルは目を白黒させていた。


「母さん、今日は調子がいいの?いつも寝たきりなのに……この男が母さんに無茶させてるのね!」


「シノブさんに見てもらってから体調がいいのよ。今すぐにでも動けそうよ…………みて。」


再び起き上がろうとするシルエを睨む。それに気付いたシルエは肩をシュンとすくませ布団をかぶった。


「拙者が施したのは一時的なものだな。ジル殿、先程拙者が手渡したGANNYAKUをここに!」


ジルに対して右手を差し出す。


「…………あの泥団子なら捨てたわよ。」


「何!?秘伝のGANNYAKUを捨てただと!?貴様は気でも触れているのか?」


「捨てるわよ!あんなバッチぃの!」


 なんと愚かな娘よ。あれを作るのに何日費やしたかわかっているのか?材料の選定に始まり一瞬も気が抜けない調合。設備が整っておらん山奥では最短でも2週間を要するというのに。



「シルエ殿しばし待たれよ。拙者が病魔を撃滅させる秘薬を作ってやろう。……湯を借りるぞ」


 不幸中の幸い。シルエの病気は秘伝のGANNYAKUでなくとも大丈夫なようだ。手元にある野草、キノコ、を上手く混ぜ合わせれば大丈夫だろう。



 雑能袋から必要な物を取り出していく。小さく切り刻み、すり鉢で潰し……測りがないな……目分量でいけるか?少量ならば大丈夫であろう。


 シノブが母娘に背を向け作業に没頭している間、ジルは事の事情を聞き、驚きながらも項垂れる一芸を披露していた。恐る恐るシノブに近づくジル。


「何用だ?今は手が離せん。」


「そ……その、母さんの容態を診てくれて……ありがとう。こんなに元気な母さんを見たの随分久しぶり。貴方お医者様なの?」


 ジルは頬を掻きながら感謝を口にしていた。


「貴様には金貨を負担してもらった恩があるからな。拙者は受けた恩には必ず報いる。それが先祖代々の教え。気になさるな。」


「私も手伝えることないの?なんか悪いし……」


「そうか……ならばお言葉に甘えるとしよう。ジル殿、湯を沸かして貰おうか。熱々で頼むぞ!」


「……うん!任せて!」



ジルはパタタとヤカンに水を汲み、指を弾き指先に火をともす。……魔法だろう。いとも簡単に炎を操る。


「ジル殿……頼まれた事も出来んのか?」


「え?お湯を沸かすんじゃないの?」


「拙者は風呂に入りたいのだ。ヤカン程度の湯浴みでは満足出来ぬぞ。」


「……貴方……結構図々しいわね。」

シノブ&ジルのおまけと感謝



「シノブ君!ブクマが増えたわよ!」


「有り難い事だ。拙者も期待に応えられるように精進せねばな。」


「精進ってシノブ君は普段何やってるの?」


「山奥の家に住んでいた頃は滝に打たれ己を律していたな。他にも自作の杭を」

「なんの為に滝に打たれるの?」


「知らん。先祖代々の教えだ。」


「……意味ないんじゃないの?」


「意味がなくともやらねばならんのだ!」


「あ……ごめんなさい」


「ジル殿も一度体験しておくべきだ!急ぎ最寄りの滝を探して来よう」


「えっ!?ちょっとシノブ君!?……行っちゃった。………それではブクマしてくれた方ありがとうございました!また次回があればお会いしましょう」


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