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 偽装適正


 カーター家の名前は聞いたことがある。私が王国に在席していた時に何回か会っている。子供が生れた事は知っていたが、仮にアイシャがカーター家に転生したのなら私は必要ない。


 暖かい食事。ふかふかのベッド。最高の環境で望みを叶える事が出来るのだから。


 それが



「カーター家から適正G……悪魔の遺伝子が生まれたぞ!殺せー!」


 子供たちは逃げ惑い兵士と大人連中がレイラに群がった。当の本人は自分に告げられた現実を理解していない。


 兵士達はニヤついている。隣に私がいるからだろう。万一の危険も有り得ない。

 大人達は笑みを隠しきれない。大富豪のカーター家が没落する瞬間に立ち会えたのだ。


 何百年前も昔……人間から魔王になった存在が魔法適正Gだったそうだ。それ以来何処ぞの賢者が適正Gは殺す定めと決めたらしい。そしてそれを産んだ両親も…………


 決められたことなら従うのは世の理。当然私も理に従う。


 私は私の(ことわり)に従う。


 ガタガタと震えるレイラの頭をそっと撫でる。神様は私の後悔を晴らさせてくれる。


 私が他人に任せたからアイシャが死んだのだ。今度は……


 「誰にも任せない!アイシャは……この子は私が守る!」



 だから私はこの事を覚えていたんだ。11歳の時に起きた町の人々が昏睡した事件。真相に近づいた。その日も適正Gが出たのだ。それに反発した存在がいた。

 


  今の私のように


  我の言霊を風琴(ふうきん)に乗せ

  其の言の葉を彼の元へ 

  



「 メモリーバースト!  」


 忘却魔法を風の加護に乗せ街一帯に響かせる。対象は半径20キロ。問題なく行使できる。


 世界の常識など従う必要はない!


  一切の躊躇もなく万人と一人を天秤にかける。彼女一人を守る方に傾くのは当然だった。命まで奪わない。前任者のように。


 レイラ.カーターが魔法適正Gと言う記憶だけを燃やし尽くす。


 兵士と町人達はバタバタと倒れ、私は眠りこけたレイラを抱きしめ町を離れた。


「初めて魔法に感謝しました。私の魔法は貴女の為にあったのですね……」



…………

…………………………



「ほ……本当に……レイラが魔法適正Gなのか?」

「うぅ……レイラちゃん。レイラちゃん」


 ベッドに寝かされたレイラに寄り添う両親。私が訪れた事もあり二人は快く出迎えてくれたが報告は途方に暮れるものだった。


「私達はおしまいね。……でも……レイラちゃん……」


 母親のライラ.カーターは自らの死を覚悟した。最高の魔法使いである私が知っているのだ。逃げる事など不可能と思っている。


「メイデン君。私達の財産は全て君に渡そう……だから……レイラの事を見逃してやってくれ……殺さないで……レイラだけは殺さないでくれ」


 父親のウィル.カーターは諦めていなかった。


 処刑される筈のレイラを逃がし両親の元に連れてきた私を金の亡者だと思ったのだろう。それならば……金さえ払えば娘は助かる。


 レイラは両親に愛されていた。羨ましくもあり……心底ホッとした。両親が見捨てたのなら私は目の前の二人を惨殺している。……そしたらレイラは泣くだろう。



 眠っているレイラに魔法具を握らせた。変わらない濁った黒色。適正Gの証。両親の表情が絶望に染まる。



 レイラの手を取る。王国で学んだ魔法の知識。何の役にも立たないと思っていた雑学。


 当たり前だ。私が身につけた知識は私の為にあるのではない。この子……レイラ.カーターの為にあったのだから。


 自らの血をレイラに軽く滑らせ、ゆっくりと浸透させていく。入り込んだ魔力はレイラの体内へと。身体の造りが違うのだ。本来ならば何の役にも立たない。


 しかし……レイラにだけは例外だ。


 再び魔法具を握らせると淡い桃色の輝きを放った。間違いなく適正F……日常生活でも使えないが一応魔法は使える落第者。しかし生きる権利は当然ある。


 桃色の輝きは1分としないうちに黒色へと変化していく。私が送ったレイラの中の魔力がなくなったのだろう。


「……今日からこの子は魔法適正Fです。私の目に止まらないところで絶対に適正検査をしないで下さい。この事実を知るのは私と貴方達だけ」


 私は金など受け取らなかった。受け取ったのはレイラを守る責務。それが私の生まれた意味。


 

 それから両親は目に見えてレイラを溺愛し始めた。レイラが住みやすいように1つの町を改良した。


 アルフィーの町に住みカーター家に害をなさないと見なされた者は税金を払わなくてよい。正確にはカーター家が負担している。国としても金さえ入ればいいのだ。


 もう一つ。世界のルールを覆した。

 ひと悶着あったが私に支払えるものは差し出したはずだ。




 レイラは事情を知らない。両親は王国首都から離れる訳にはいかずレイラだけが移された。

 両親にとっては苦渋の決断だったがレイラを守る為だ。自分達が死んだ後も彼女を守れる手筈を整える。


 しかしレイラからして見れば適正Fの自分は見捨てられたと思っていた。それでもレイラは明るかった。アイシャと同じ。ニコニコしていた。


「あのメイデンがわたくしに魔法を教えてくださるんですのよね?わたくし頑張りますから!そしたらパパとママもまた、わたくしを愛してくださいますわ!」


「旦那様と奥様は常にレイラ様を愛しておられますよ」


 レイラは知らない。自分が適正Gだと。努力しても……いくら頑張っても魔法は使えない。機を見て私がこっそり魔法を使い。レイラが発動したように見せかけるだけ。




 いつの間にかレイラは笑わなくなった。




ジル&先代の感謝とおまけ


「ブクマしてくれた読者様。評価してくれた読者様ありがとうございました!」


「またワシか?読者諸君はワシの事など覚えておらんぞ」


「ああ、それは知らない。私も本編で出番ないからわかんない……ちょっと気になったんだけど先代様ってシノブ君より弱いの?」


「小娘……ワシとシノブでいくつ歳の差があると思っておる。仮にお互い全盛期なら……う〜ん、どうかのう?」


「やっぱりシノブ君の方が強いの?」


「いやのう、ワシと違ってシノブって卑怯じゃろう?ワシが全盛期なら真っ向から来るか?と思ってのう」


「うん。先代様がどうかは知らないけど、シノブ君は正々堂々が似合わないわよね」


「じゃろ?ワシに勝った時もワシが尿路結石にかかり、娘である乙女と結託して新種の毒を飲ませた挙げ句、吐血してるワシに対して『この場で真剣勝負を願います!』じゃぞ?流石のワシもちょっと引くわい」


「完全に殺しに来てるじゃない!」


「可哀想なワシを小娘の膝枕で慰めて「それは嫌です」」


「…………「嫌です」」



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