適性の烙印
悪魔を滅した事がどうやって広がったのかわからない。事実であり否定する気もない。
王国に戻り勲章を賜った。何の価値もない。私にとって大事な物を見捨てた……アイシャを見殺しにした証。
私が両親など信じずに自ら金を渡していればアイシャは死ななかった。
私が国の兵士など信じずに早々に悪魔を滅ぼしていればアイシャは死ななかった。
私がアイシャと離れなければアイシャは死ななかった。
私がアイシャを殺した。
もう一つ。聖櫃の義を賜る。
この国の最大の魔法具。中に神が納められており、様々な恩恵。条件を満たした者は神の加護を授かれる。
詳しい事はわからないが私はもう5回目だ。授けられた加護も10を超えている。これ以上何も必要ないのに
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目の前には縫い目の無い衣を纏う女神。こちらに気付くとニコニコと私に微笑みかけた。
『メイデン.トゥリー、やっぱり私の目に狂いはなかったわ!あのクソ悪魔を滅ぼせるなんて!これで始末書の失態はチャラね!あ〜嬉しいわ嬉しいわ!』
「……どうも」
最低限の会釈を済ませる。目の前の女神は威厳や神々しさなど感じさせない。そのように振る舞っているフシは感じられる。
事ある毎に昔の失態……始末書の愚痴を私に溢していた。
『さぁ〜て。メイデンちゃんはどんな加護が欲しいの?本当ならランダムなんだけど、特別に選ばせてあげるわ!』
女神が両手を広げると万を超える単語が空中に書き出された。その一語一語が全て神の加護。
私は12の加護を持っているが使用したのは〈隠密の加護〉何人も私を感じられないと言う物だけ。他の加護は使う機会などない。
私は万の加護に一通り目を通した。……ひょっとしたら……
『英雄の加護なんてでどう?周りの期待が力に変換されるからアナタなら誰にも負けないわよ!』
いらない。誰かに負けるならそれで構わない。
私が欲しいのは…………ない。
「私に必要な加護はありません」
私の落胆を感じた女神が語りかけた。
『あら?お眼鏡に適わなかった?無欲ねぇ〜』
「死者を生き返らせるような加護がほしかったです」
女神は顔をしかめる。女の私から見ても美しい顔が台無しに感じる程に。
『アイシャ.ウィーンね。彼女はもう転生させたから無理よ。またこの世界だけど名前も違う0歳児よ。』
衝撃が走った。アイシャが……アイシャにあえる!
「女神様!アイシャの転生先の名前を教えてください!」
『規律で教えられないわ。タダでさえ昔の失態で目をつけられてるんだから。思い出すだけで奴が憎いわ!』
よほど恨みが溜まっているのだろう。掻い摘むとある人間に他の生物全てが手も足も出ない程の力を与える筈が、暴言を吐かれ無能力で転生させたらしい。
神に暴言を吐く人は私が知る限り二人だ。一人は女性には暴言は吐かないし、もう一人は私と違って簡単には死なないと思うが……
「……女神様のように美しい存在に暴言を吐いた愚か者の名を教えて下さい」
『メイデンちゃんは可愛いこと言ってくれるわね〜。私の鬱憤を晴らしてくれるの?ん〜……と、あ、ダメねこれも規律違反だわ』
まぁ、別にいい。少し気になっただけだ。早くアイシャの生まれ変わりを見つける算段を整えよう。
私は女神に会釈を済ませ、一面白銀の世界に対して踵を返す。
『ヒイラギ.シノブ……私を虚仮にした転生前の奴の名前よ。当然名前は変わって生きているなら今6歳。見つけて殺せば褒美を取らせるわ』
「…………失礼します」
…………
…………………………
柊忍……前世で私が、柊乙女が唯一愛した男性。その忍さんが、私が死んで後を追ってくれたの?それとも誰かに殺された?違う……彼に限ってそれはない。
誰が相手でも彼には勝てない。先代の爺。私の父でさえ忍さんには勝てなかったのだから。
生きる希望が出てきた。忍さんなら私を見つけてくれる。私はアイシャを探そう。
この世界に生まれて初めて希望が差し掛かった。
…………
……………………
国の許可を得て冒険者として国中を渡り歩いた。報酬は一切取らない。冒険者ギルドは国から派遣された魔法適正Sの私と国に敬意を評し、私もアイシャを探す事ができる。全員が得をする。
11歳になった時に事件が起きた。私は一切関与していないが、ある町で魔法適正を計る日に町の住人。集まった人々全員が昏睡する事件がおきた。
死者はなかったが大規模な魔法が使用された形跡もなかった。犯人、手段、目的は不明。
重ねて言うが私は一切関与していない。
参考にしただけだ。この時の私は意味がわからなかったが後にわかる。犯人の動機。
アイシャを探して7年。手がかりは未だにない。だけど、この年は違う。アイシャの転生先が7歳になっているはずだ。
魔法適正Sの私にあやかろうと国中から1つの町に人々が押し寄せた。
この中に……絶対にいる!
私自ら適正を計る魔法具を手に持ち1人1人顔を見つめる。私なら絶対にわかる。見つけてみせる!
一人の女の子が魔法具に触る前に私の手を握った。前の子もそうだったしこの娘も同じ。自分の未来を決定される前の最後の祈り。
「メイデン.トゥリーに触れましたわ!これでわたくしも一番高い魔法適正を貰えるはずですわ!」
「あ……アイ……シャ」
少女を見た瞬間動揺を隠せなかった。絶対にいると信じていたが、まさか瓜二つ……生き写しだ。
「わたくしはレイラ!レイラ.カーターですわ!わたくしもアナタみたいな凄い魔法使いになりますわ!」
屈託のない笑顔がアイシャと重なる。触れられた掌の暖かさが彼女を思い起こされる。
嗚呼……神様……彼女と出会わせて下さって……ありがとうございます。
レイラは意気揚々と魔法具握った触れた。濁った黒色が描かれその意味を知る私と周りの人間は凍りついた。
「て……適正Gだーー!カーター家から適正G……人間じゃない者が生まれたぞ!処刑だー!」
「……え?……わた……なんで……わたくしが……G、な、何かの間違いですわ!」
魔法の力を一切持たない。そこらの石ころや空気でさえ魔力を持っている。それは人間どころか生物……無機物以下の存在。世界から否定された存在。
メイデン&アイシャのおまけと感謝
「ブクマしてくれた皆さんありますがございました!メイデンちゃんの過去は後2話あります。暗い話しでごめんなさい」
「そんな事はどうでもいいです!アイシャ!アイシャ!あぁ〜〜!テンションが……抑えられません!抑える気もありません!」
「あ……アハハ、メイデンちゃんは相変わらず元気だね」
「何でアイシャは冷静なんですか!?これでは1人浮かれているワタシが馬鹿みたいじゃないですか!?」
「あたしも嬉しいけど……あたしは本編で出番ないからね。メイデンちゃんの過去が終わったらあたしは後書きにも出れなくなるんだよ」
「あ……じゃ……じゃあせめて昔みたいにお医者さんごっこしましょう!勿論私がお医者様役を受け持ちますので!早く…早く服を脱いで――」
「メイデンちゃん!あたし怒るよ!」
「…………ごめんなさい」
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『メイデンを止められるとか……あの子が一番凄いんじゃないの?』




