第35話 共同作業
レイラが近付いてくる。沸騰寸前の湯を浴びる為に……
辿り着くまで3秒といったところか……考える時間は存分にある!メイデンに口パクで伝える。簡単な解決策を
『メイデン殿!お主の魔法で湯を冷やせば良いのでは?一瞬で湯を沸騰させたのだ!逆も可能だろう』
『……一瞬で凍らせる事は可能ですが微調整までは……氷水など浴びてはお嬢様がお風邪を召してしまいます。それに、まさかとは思いますが、自身がお熱いのでそのような弱音を?』
もういい!お前に頼ろうとしたワシが浅はかだった!
……レイラに当て身を撃ち意識を失わせるのはどうだ?
思考が鈍っている!危害を加えてどうする!却下だ!
素早く浴場から立ち去り何食わぬ顔でレイラにその湯は危険だと伝える。難易度は然程難しくない。これならばいける……隣のメイデンさえ居なければ……
ワシが先に湯から出れば我慢比べは敗北した事になる。なんとか避けたい。なんとしてでも……
ワシが思考を重ねる間にもレイラが近付いてくる。
「う〜。やっぱり近づくとドンドン赤くなってますわ。魔法なのかわかりませんけど……嫌ですわ」
赤く?ふと隣を見るとメイデンが尋常ではない鼻血を流し続けている……死なないのか?
メイデンと目が合う。
『なる程……理解した』
気配を消したまま手首に歯をあて食い千切る。当然のように出血は湯に染まり更に朱を染めていく。
「ヒッ!い、いつもより赤い……気持ち悪いですわ……」
拙者の血とメイデンの血が混じり合ったもはや温泉とはかけ離れた存在!見る物が見れば血溜まり!前世で言えば血の池地獄!これを知らぬ者は入る気になるまい!
「き……今日ぐらい浴びなくても……バレませんわよね」
レイラはキョロキョロと辺りを見渡し素早く踵を返し浴場を後にした。
行ったな……ここからはワシとメイデンの一騎打ちだ!しかし血行の良さも相まって噛み切った血が止まらんな。
ワシが腕を頭より少しだけ上にあげる。止血したいが条件はあちらも同じ、違う!メイデンはワシよりも多量の血を失っている!
メイデンはいつまで保つ?無理をすれば本当に死ぬぞ?それともコイツは不死身なのか?
ん?メイデンの様子が……この女狐!
「メイデン殿……まさかお主……治癒魔法を使ったのか?」
「偶然出血の体質が治っただけです。湯の温度を上げる為以外に魔法は使っておりません。」
嘘は……言っていないな。しかし鼻血はともかく肌もツヤツヤしているではないか!これが魔法ではないと!?
妖艶術か……いかん……どうでもいい……無駄な事は考えるな。メイデンよりも長く……湯に……
…………
……………………
「ギャフン」
不意にメイデンが謎の声をあげた。ついに脳ミソが茹で上がったか。
「私の負けですのでヒイラギ様はお先に湯からお上がりください」
勝った! 否!まだだ!
「誘導にしてももう少しまともに出来んのか?メイデン殿から上がればいいではないか、拙者はその後出よう」
「……そうしたいのは山々ですか、私が先に出てしまうと裸を見られるので困ります」
この女……お主は今、裸でワシの隣におるではないか!
これは……短期決戦を挑んできおったな。切り返し次第でワシが負ける。
「ヒイラギ様が見たいと言うのであれば敗者に拒否権はありませんね。どうぞ。間近で私の裸体を心行くまでご堪能ください………………この……助平男」
助平男など先代様だけに許された汚名!ワシ如きが賜るのはゴメンだ!
ここで勝利を手にしても大事な物を失いかねない。メイデンは勝敗よりも大事な事を教えようとしていたのか?
「まて……同時に出るぞ。手を貸せ」
「…………はい」
「引き分けで手を打とうか」
「ヒイラギ様がそれで良いのならそうしましょうか」
メイデンの手を取り呼吸を合わせゆっくりと湯船から出る……一挙手一投足がワシとメイデンでシンクロしている。
これで1敗1分か……コチラから挑まんとメイデンには勝てぬのか?なんにしても面白い女だ。
「………………ぁ」
か細い声があがりワシとメイデンがその方向を見た。
「タウロス殿だな」
「そのようですね。見ると目が腐りますよ」
悪党顔のタウロスがこちらを見て、足早に出て行ってしまった。
今のワシとメイデンは裸。しかも手を繋いでいる。100人に1人ぐらいはワシ達が恋仲だと勘違いする輩もいるかも知れん。タウロスは阿呆だからその口だろうな。
「あの男……拙者達に気づいたな」
「そのようですね。殺しますか?」
こちらに気付いておきながら逃げる様に去るとは、礼を逸脱している!
「タウロス殿も少し悪気があっただけだろう。拙者が後で悪気を払う部位を殴っておこう」
「私は愚兄の記憶を消しておきます。物理で」
先代&ジルのおまけと感謝
「ブクマしてくれた読者様ありがとうございました!」
「ワシは出番ないのにシノブのせいでの周りの評価が下がっておらんかのう?」
「仕方ないわよ。先代さんはシノブ君の……お父さん?スケベな人だっなんて、正直幻滅よ」
「ワシはシノブの父親ではないぞ。でもワシ22.3話で女性を救ったりしたのじゃぞ?シノブは見捨てようとしたのじゃぞ?」
「救う方法が細切れの皆殺しって……ただの殺人鬼じゃない。その時の女性もトラウマになるわよ」
「だってワシ……あのうら若き女性の前で格好つけたかったんじゃもん」
「先代いくつだよ!?『だって』とか『もん』とかつけるな!」
「フハハ!ギャップじゃ!ギャップ!ひょっとしてヤキモチか?小娘よ」
「……そんな要素ないでしょ。」




