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第34話  男女仲良く


 〜〜マイストのあらすじ〜〜


    覗きがバレてる。





 メイデンがオレを見ている。間違いなくバレている。距離にして20cm。メイデンの瞳にはハッキリと冷や汗を垂らしたオレが映っている。


『マイスト殿……慌てるな、まだバレておらん……はず』


『その声……ヒイラギ様ですかい!?オレの声も届いてますかい!?魔法じゃない。なんだ!?これは……』


 マイストには知る由もない。魔法でも忍術でもない。裸同士で苦楽を共に分かち合った者は心で通じ会える。


 『だからなんだ!』


 事態は好転しない。相変わらずメイデンは間近でオレを見ている観ているミテイルみ……て……


 すっと湯船から立ち上がり何事もなかったかのように出口へと向かう。今まで生きてきてこれ程心が落ち着いている事はなかった。死を覚悟する。その決意がオレにメイデンを無視する勇気を与えてくれた。


 後ろなど振り向けない。視線で背中に穴が開けられた錯覚を覚えながら……


『ヒイラギ様……オレはここまでです。生きてまた会えたら酒を酌み交わしやしょう』


 オレは戦線を離脱した。



………………


「…………」


 メイデンが無言でバスタオルを取り先程マイストが浸かっていた場所、つまり拙者の隣に居座る。


 ……この距離……バレる可能性が高いな。視線は一切こちらに向けず手拭いでクラゲを作り遊んでいる。


「少し……ヌルいですね」


 メイデンがポツリと小言を漏らした。湯の温度は40.5℃熱々好きのワシからしてもぬるま湯。メイデンが湯の温度を上げてくれるのなら丁度良い!


 メイデンが髪を掻き上げ1本の赤い毛を湯に沈めた。全て黒髪と思っていたが……抜いた瞬間色が変わった。途端に温度が上昇し始める。


 「50…55…60…65℃」


 沸騰させる気か!?思わずメイデンに目をやると


 完全に目と目があった。メイデンに驚きの表情はない。当たり前と言わんばかりの無表情。


「ヒイラギ様のようなお子様には熱すぎましたか?失礼しました。水風呂にしましょうか」


「……拙者は熱いなど言ってはおらんが?」


 いつからバレていた?いや、それはもう過ぎた事だ。この女はワシを挑発している!風呂好きのワシを!熱い風呂が大好きなワシを捕まえて水風呂だと!?


 あんな物は滝行で十分だ!


「ならば上げますよ……70…75…80℃」


 メイデンはマイストと違い魔力を覆ってはいない。ほんのりと毛穴から汗が吹き出している。


 これは……痩せ我慢だな!面白い受けて立とう!


「ふぅ〜〜!極楽!極楽!天に昇りそうだ」


 言葉とは裏腹に頭の中で心頭滅却を繰り返す!何も考えるな!無と一つ、湯と一つになれ!シノブ.ヒイラギ!ワシに喧嘩を売った隣の女をギャフンと言わせてやる!


「暖炉……囲炉裏(いろり)


 不意にメイデンの声を聞いてしまった。寄りにも寄って……この女……


「湯たんぽ。鍋。唐辛子。緑茶。茶柱!」


 ワシの心を掻き乱しおって!またもメイデンと目が合う。お互い言いたい事は口に出さない。弱音となる。これ以上奴に主導権は……イニシアチブは譲らない。


「ヒイラギ様は日頃から限界を超えると仰ってますね。及ばずながら私も手伝います」


「何をする気だ?」


 浴場に近づく足音……パタパタと小さな歩幅。……レイラか……不味い!気配を消さねば!


「……97℃……勝負です……ヒイラギ様」


 何を言っているこの女は?お前はこの状態で冷静でいられるのか?先代様が言っていたメイデンに勝てぬとは……この事……


     否!断じて否!


「これは……試練!限界を……超えてやろう!」


…………


レイラが浴場に入ってきた。丁寧に身体を洗い流し湯船でバチャバチャと一人戯れている。こちらには完全に気付いていない。



「ヒイラギ様……顔が赤いですよ?お嬢様に欲情しましたか?それとも私に興奮しましたか?」


「……抜かせ……メイデン殿こそ顔が赤いぞ。のぼせ上がっておる。まずは鼻血を止めろ。湯が汚れる」


 折角の風呂が台無しだ。何が悲しくて血の混じった温泉などに入らなければならないのか……風呂は遊び場ではないのだぞ!


「私は湯船に浸かると血が出る体質です。お気になさらずに」


 なるわ!馬鹿者が!


 いかん……心を……落ち着かせろ……



 幸いレイラはこちらに気づく気配がない。正直気配を消さずともバレない気もするが油断すれば死あるのみ。全力で気配を薄める。


 隣のメイデンは湯に入ると鼻から出血すると言う謎の奇病。血管が脆いのか?視界は定まっているがレイラだけを凝視し続けている。


「……メイデン殿、拙者に何かしら話しがあったのか?」


「……………………」


 ワシの声が届いておらん。メイデンの限界は近いと踏んだ。


 子供の風呂など短いものだ。湯船からあがり……何故かこちらに恐る恐る近づいてくる。


「う〜、メイデンがこの湯を浴びると良いって言ってますけど……相変わらず気持ち悪い色ですわ。凄く鉄臭いですわ」


 温泉に血が混じっているからな。魔力は血に宿ると授業で習ったが、まさかメイデンは毎回レイラの為に血を与えているのか?


 見事な従者っぷり!アッパレだ!


 レイラが近づくにつれ、メイデンの顔が青ざめていく。ワシに向かい口をパクパクと……


『ヒイラギ様、不味いです。レイラお嬢様がこの湯を使おうとしています』


『……メイデン殿は独唇術を使えるのか?此処の湯を使うぐらい良いではないか、血が混じった湯など不快なだけだ』


『今、この湯の温度は95℃です。お嬢様が火傷してしまいます!私の失態です』



 ワシはレイラに一切の危害はないと約束している。


 なんとしてでも湯を使わせる訳には行かぬ!

メイデン&ジルのおまけと謝罪


「やって参りました好事家の皆様お待ちかねのレイラお嬢様のご入浴シーンです。ですが作者の力量ではお嬢様の肢体を描写する力が皆無!この場を借りて謝罪させていただきます」


「物凄い早口!貴女「尺が足りません!ジル様は黙っててください!」


「…………ッチ!」


「ですがご安心ください!本編は8月の出来事!すぐに海でキャッキャウフフの水着回がやってくるのです!これには常に無表情な私もニッコリです」


「あ〜……ちょっといい?」


「うるさい!照りつける日差しの中、お嬢様と私が送る一夏のワンナイトラブ!この編だけで10万字を超えてしまいそうです!」


「……ないわよ」


「さっきからうるさいですね。なにがですか?」


「作者って海で楽しい思い出がないから書けないわよ」


「……楽しい思い出が1つぐらいあれば……そ、それを妄想で膨らませて――」


「思い出すのは海でクラゲに刺されたり置き引きにあったり、そもそも一緒に行く友達がいないのよ。諦めなさい」

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