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第3話  筆記と実技



 簡単な筆記試験を終えた。問題は何1つ、さっぱりわからなかったが全員の手の動きで答えは理解出来た。満点をとっても目立ちすぎるので予想平均点より上。ズバリ85点だ。


 結果発表までは時間があるのでその間に実技試験を行うと……効率のよい事は素晴らしき事だ。



 中庭に集められた魔法適性C以上の者達。ワシだけがGだが問題あるまい。試験監は先程ワシに快く協力してくれた忠義煽れる男。好都合だ。現在は身体の痛みなどないように思える。SHIPPUが効いているな。その試験監が恐る恐る近づき小声で囁く。



「おいシノブ.ヒイラギ、ここも……不正した方がいいのか?」


 自ら不正を持ちかける見下げ果てた奴だが人の手ばかり借りては忍者の名折れ。


「フフ……実技試験か、貴様は何を見ておった?何を折られた!?問題ないだろう!さぁ!何人ブチのめせば良い!?百人程度ならこの場で瞬殺してくれるわ!」


「いや……魔法学校なんだから魔法のテストだよ。」


「なんだと!?」


 実技ならば対人が基本!ワシの得意分野をあっさりと潰してくれおって!

 ワシの驚愕を無視して試験監は高らかに言い放つ。


「これから皆の魔法力を見せてもらう。高い威力程高い点数が出るが低くても適正を加味したうえで合否を決めるから精一杯やってくれ!」


「チッ!また採点か?それになんの意味がある。」


 ワシは採点が嫌いだ。里の忍者達もそうだったが、如何に強くとも実践で役に立たぬ者は五万といた。逆になんの芽もないと思っていた者が獅子奮迅の活躍をすることはよくある。


 他者と競わせるいい道具なのだろうが、限られた分野に置いてのみつけられる点数こそが才能を潰していく。その事に気付けぬ愚か者。


 しかし郷に入っては郷に従え。この世ではそれが正義なのだろう。仕方あるまい。



 1番手は適性で試験監に感嘆の声を漏らさせた青年。

両手を突き出し瞳を落とす。ゴニョゴニョと訳のわからぬ言葉を吐き散らし目標の人形を一瞬で業火が包み込んだ。


 人形はブスブスと煙をあげながら

『………………65点……』点数を告げた。


「へへへ……まぁまぁだな!」


 青年は自身満々にその場の脚光を浴びる。試験監も驚きながら


「アイツは合格だな。」


「ん?何故だ?筆記は平均で80点だったぞ。あの様な半端な点数で良いのか?」


「お前なんで平均点知ってんだよ?まだ採点も終わってない……あぁ、例の内通者か……。あの人形は上級生達や俺達教師も使うからな。早々に高得点なんか出ないんだ。俺でもベストコンディションで80点が精々だぞ。」


なるほど……問題は、


「奴の適性ランクはいくつだ?拙者は何点を叩き出せばよい?」


「アイツはAランクだから20点でも合格したんじゃないか?筆記が余程じゃない限り、お前は……Cだよな……50点+筆記次第かな……」


「ならば(けん)に回るしかあるまい。」


 何をどうすれば点数があがるのか考える。人形を焼き尽くせば高得点なのか?八つ裂きにすれば高得点なのか?はたまた減点なのか?考える時間はある。


「あの……私は回復魔法でもいいでしょうか?」


「大丈夫だ。人形に魔法をかけてやってくれ。」


 残る受験者を見る。どうやら痛めつけるだけでなく回復するような魔法ですら点数が弾き出される。


『…………30点 』


 人形の出した点数に項垂れる少女。ワシとしてもこの点数は微妙だ。合格なのか不合格なのか。判断が付きにくい。チラリと試験監の目を盗み見る。


「…………合格か。」


「えっ!?お前心を読めるのか?」


「読心術を使っただけだ。訓練すれば誰でも出来る。」


「いや……リーディングの魔法を使える奴は上級生でもごく一部だぞ。なんでお前はGランクなんだ?水晶の故障か?」



「故障ではない…………拙者には……先祖代々受け継がれてきた忍術がある。必要ないだけだ。」


そう。必要などない。この世界に………………


………………

…………………………




「さて……おおよそ把握した。そろそろ出るぞ。」


 ワシが一歩前に出ると受験生達が静まり返った。



    失策!



 情報収集の為とはいえ試験監との馴れ合いが過ぎた。お気に入りだと誤解されては後々に響く。忍びはあくまで隠密が基本。



 とはいえ、まずはこの人形をどうにかせねばなるまい。魔法は使えぬ。忍術で点数が出るのかは不明だがやるしかない!


ここが……ここから!忍びの第一歩を踏み出す!



  竹の水筒を取り出し口に水を含む。空気を吸い込み水と空気を混ぜ合わせ……痰も少々!


「水遁  六波刃」


 勢い良く口から圧縮された水圧を浴びせかける。狙いは人形の四肢。4つに別れた水弾が手足に絡みつく。



「ハァっ!」


 両手を目一杯広げ、連動した4つの水弾が人形の手足を吹き飛ばす。達磨と化した人形に残りの水を浴びせかけ袈裟斬りに両断した。



「「「「……………………」」」」」


 周りの受験生は声にならない驚嘆を漏らす。やりすぎな気もするが、手加減などして50点以下なら笑えもしない。少なくともここにいる誰よりも圧倒的に破壊してやる事で一先ずは



『……………………0点…………』



 6つに分断された人形の最後の意地なのか当たり前の結果が待っていた。魔法と忍術は別物。人形はシノブ.ヒイラギに無情な現実を告げた




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