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第27話  岩砕の一撃


 タイラーと別行動を取り一人鉱山内を散策する。とりあえずはロックビーストがいた場所。今も同じ場所にいるか否か、


「まあ……いるわけ無いな」


 独り言を呟き足跡を確認する。毒を嫌がり逃げたか、ワシ達を探しに行ったか……興味をなくし巣に戻ったか……


 ロックビーストの吐き出した土塊、僅かに血液が混じっているが、この魔物は土や鉱物が水分の代りをしている。体内の水分を沸騰させる浸透勁に手応えがなかったのも無理はない。


 前世でも機械や、からくり人形相手に浸透勁は通らなかった。


「……あれよりはマシだな」


 声を出しながら歩く。光が届かない鉱山。タイラーはワシの為にわざわざ剣先に火を灯してくれていたが夜目は十分に効く。


 ロックビーストは視覚よりも聴覚が発達していると推測する。暗い場所に身を潜めるのならば聴覚か嗅覚。視力は良くない。だからこそ声を出す。


 居た。真新しい鉱物を纏わらせ今も天井に張り付き見動き一つ見せない魔物。


 気づいていない振りをする。1歩。また1歩。ロックビーストの真下に近づき


音も無く天井にから落ちるロックビーストを軽くいなし


「腹ならばどうだ?」


 ロックビーストの腹に発勁を当てる。唯一鉱物を纏っていない下腹。10メートルほど吹き飛んだが痛みらしきものは感じられない。しかし唸り声から感情は理解できる。


「怒っているな?怒りは視野を狭くするぞ?」


 ロックビーストは身を屈め身体に纏った鉱物を一帯に弾き飛ばした。


 小さな鉄の塊を最小限の動きで躱す。距離を取りつつ躱し続ける。ロックビーストは大地を喰らいながら新たな鉱物を身体に纏い。矢継ぎ早に弾き飛ばす。


「芸がない。本当にそれだけか?」


 魔物にこちらの言葉が理解できるとも思えないが挑発する意志だけ伝えれば十分だ。


 無数の岩鉱を淀みなく躱していく。躱された時の対処方など持っていないのだろう。ワシに効かぬとわかっていてもそれしか出来ないのだから当たるまで岩鉱を弾き続ける単細胞な魔物。


 疲れが見え始めたのか身体に纏う速度が明らかに遅くなっている。弾き飛ばす速度も目に見えて遅い。体力を消費していたのか、或いはワシにはわからぬ領域、魔力を消耗しているのか……


「もう少し観察したくもあるが頃合いだ」



 ロックビーストの真上に針を撃ち込む。一瞬だけ気を取られワシとの距離を確認し、新たな鉱物を纏う為に大地を噛み砕く。飲み干す。視線は切らない。音の一つも聴き逃さない。



 だからこそ  この一撃は通る


 突如ロックビーストの頭部を両断した炎を纏った剣。握り手は他でもない。


「お…落とした!ロックビーストの頭を!」


 タイラー.ヴィント。鉱山の天井に魔力で張り付き息を潜め、ただ訪れる機会を待ち続けた男。真上という絶対的視覚から聴覚すらも遮断するように音も無く剣を振り降ろしたのだ。ロックビーストが新たに鉱物という防御を固める前に。


「油断するな!トドメをくれてやれ!」


「我は火の加護を纏う者。彼の物に我の力を知らしめん……バーストトリガー!」


 タイラーの腕が炎を帯び、ロックビーストに触れた瞬間頭部を爆散させ、次いで胴体部も燃やし尽くした。


 ブスブスと延焼する片腕を労るように押さえつけ粋を切らしながらもタイラーがこちらを振り向き


「や……やった…のか?」


「見事だタイラー殿。拙者には到底真似出来ん偉業だ」


 魔物討伐を果たしたタイラーに惜しみない称賛を送った。


「シノブが囮役をしてくれたおかげだ。良くあの攻撃を躱し続けられたな……凄い奴だよ、お前は」


「フフ……囮役など楽な仕事よ。ただ逃げ回れば良いのだからな。一瞬のチャンスを物にしたタイラー殿こそがそこの魔物……もう存在していないな」


 煙と化したロックビーストの成れの果てを見限り鉱山を出る。



………………

………………………………



「疲れた……ミシェルとレイラお嬢は近くで待ってるのかな?これで麓の宿屋で待ってたら怒るぞ」


「流石にないだろう……タイラー殿、拙者は忘れ物をした故に先に外で待っててもらえるか?」


「俺も行こうか?魔物はもういないけど」


「そろそろレイラ殿が癇癪を起こす。あやしてやってくれ」


 易癖とした顔をしながらも頷いたタイラーを見送り鉱山の奥を見据える。僅かな物音……確実にまだいる。


「ツガイか子供か……なんにしてもタイラー殿の初手柄だ。気持ち良いまま締めさせてもらおうか」


 大地を抉り対象の目の前まで接近し魔物が警戒を更に上げるよりも疾く



 中高1本拳でロックビーストの眉間を穿つ。岩肌を砕き更に芯を破壊する一撃。ピクピクと痙攣しながらロックビーストは大地の底へと沈んでいった。


「……魔物と呼ばれていても生物だったな」


 踵を返し鉱山を出ようとすると、乾いた血液が付着した折れた剣を発見する。


 短剣が血を啜ってほんの一時間以内の血液。……ロックビーストの血液だ。


「ここまで刃溢れを起こしても斬れるとは使い手も手練」


 折れた短剣を懐に忍ばせロックビースト討伐は終わりを告げた。





ミシェル&メイデンのおまけと感謝


「え…と、ブクマしてくれた読者様ありがとうございました。は、初めましてメイデンさん」


「………………」


「あ、あの、メイデン……さん?」


「淫売と喋る気はありません」


「い、淫売!?なんでですか……」


「貴女は前話、26話でドサクサに紛れてお嬢様の愛らしいお手々を自分の欲望の赴くままに握った!否定出来ませんよね!?」


「否定しかできません!」


「……まぁ、いいでしょう。無理矢理な貴方と違って私はお嬢様から触れてもらったんですから」


「ひょっとして……ほっぺたを叩かれた事ですか?」


「叩かれてません。愛のこもった撫でです。今もこのメイデンの頬と心は熱くなっております。これが私とお嬢様の絆パワーです!」


「うぅ〜。こんな人が近くにいるレイラちゃんが気の毒」

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