第18話 影武者
誤字脱字報告をしてくれた読者様。本当にありがとうございました!
「タウロス殿から見た拙者はどうだ?」
「どうだって、見た目の話しですか?それとも頑なにお金を受け取らない、はた迷惑なところですか?」
ここ数日タウロスの部屋に頻繁に出入りしている。タウロスも針治療以外の時はまともだ。最近では事ある毎に舐めた口をきいてくる。
「拙者にも出来る仕事はないものか……自信を失いつつあるのだ」
「……冗談ですよね?ヒイラギさんの場合100点の仕事内容でもお金を受け取らないじゃないですか。俺に対する嫌がらせ以外考えられません。」
最近何かと入り用になりタウロスを頼っているが尽く結果を出せない。ワシ自身が納得出来る結果はでない。
「配達ですら『もっと速く届けられた……拙者はまだ限界を超えておらん!』とか言って受け取らないならもう無理ですよ」
タウロスの言うことも一理あるがそれを納得してしまっては自分の器が知れる。
「俺としてもヒイラギさんにはさっさと金を稼いでもらって家賃に当ててほしいんですけど……そうだ!」
タウロスは手をポンと叩き
「俺の護衛とかどうです?一日中家にいるだけだから失敗とかしませんよ!一人増えたって別に構いませんし」
「護衛……影武者か」
タウロスの身体は知り尽くしている。その場で骨格を変え声をタウロスと合わせる。
「えぇ〜?なんでトランスフォーム?声まで似てる……のかな?護衛だから普段通りのヒイラギさんで……待てよ!待て待てよ!」
タウロスは自分と瓜二つのワシをニヤニヤ笑いながらこれ以上ない悪党面をみせた。
…………………
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「……おはようございますわお兄様」
「おはようレイラ、下着姿で彷徨くんじゃないぞ。品位が知れる」
「お兄様のクセにうるさいですわね。朝から気分悪いですわ」
レイラは自分の格好を見直しプイと後ろを向き歩き去ってしまった。自分がどういう格好でうろつこうが勝手なのだろう。
「……なる程」
話しは昨夜に遡る。
「その姿で1日過ごしてくれませんか?俺も息が詰まっちゃってたまには町の外を自由に散歩したいんですよ。最近妙に腰の調子が良いですし!」
それは針のおかけだ。
いつになったらお前は気づく!?
タウロスなりの感謝を暗に示しているのか?……ないな。
「拙者はタウロス殿のように器用な仕事はこなせぬぞ」
「あ〜大丈夫ですよ!大抵なんとかなりますから……俺の顔で殺しとか放火のような重罪は止めてくださいね!」
1日過ごせと言われたが本来ならば影武者は摺り合わせが大事。よけいな事は極力せずに有事の際は主の思考を真似る。一人前の忍者にしか出来ない芸当。
朝食を済ませタウロスの部屋へ。本物のタウロスは唯一この件を知っている護衛を一人付けて日の出前に姿を消した。
どうやら朝日を見たいらしい。その様な事すら許されず仕事に囚われた窮屈な男だ。
「タウロスさん今朝の依頼です。金額を設定して下さい。あと昨日の書類に依頼達成のハンコをお願いします。」
「…………わかった。後でやっておこう」
「タウロスさん今お願いしますよ。すぐにギルドに張り出すんですから」
……机に置かれた書類に目を通す。タウロスの仕事か、仕事の斡旋を仕切っているといっていたな。書類の量を見る限り尋常ではないぞ。
金額?確かタウロスは後日設定し直すから適当でいいと言っていたな。
「金貨1枚……金貨1枚……全部金貨1枚だ」
そもそもこれは支払額なのか受け取り額なのかもわからん。知らん。全部わからん。さっぱりわからん。
「タウロスさん……正気ですか?」
「どういう意味だ?」
ワシの疑問が恫喝に聴こえてしまったのか全身を震わせながら頭を下げ
「失礼しました!差し出がましい真似を!私程度が口出しできる案件ではなかったです!」
いかん。勘違いされているな。ここは少し含み笑いをしながら
「すまないな、お前を少し試させてもらった。どうだ?今日はお前が金額を設定してみないか?」
「私が!?無理です!」
ッチ!面倒な奴だ。内心やってみたいと顔に出ておるわ。
「お前なら俺の期待に応えられると思ったんだが、この分だと俺の負担は増すばかりだ。」
「あの……あとでタウロスさんが確認していただけるなら私にチャンスをください!」
「フフ、それでお前の心荷が降りるならその程度は受け持とう!存分に励め!」
タウロスの部下は今日一番の笑顔で書類に次々と金額を設定していく。
自分ならばこの額だろうと内心決めていたのだろう。向上心の塊のような男だ。
ワシは紅茶を啜りながらその仕事ぶりに感嘆する。……緑茶が一番なのだが、これも仕事、文句は言うまい




