第17話 影の勇者
「ウォォ!ファイアーボール」
タイラーは拳大の火球をゴブリンに投げつけた。ふれた瞬間ゴブリンの肌を焼きゴブリンを袈裟斬りに斬りつける。
「ヤバイ……ヤバイ……ヤバイヤバイ!」
タイラーは冷や汗と共に辺りを見渡す。魔物の気配は途絶えない。薄暗い洞窟に渦巻く欲望の吐息。
「おい!誰か返事をしてくれ!」
タイラーの叫びは魔物の息遣いに掻き消される。誰もいやしない。ゴブリンの巣に入ったまでは良かったが、予想以上の数の多さに皆、我先に逃げ惑い今では自分一人。生きているのか死んでいるのか
「…………フレイム……ブレ……魔力が……」
全身を倦怠感が襲ってくる。タイラーは未だ無傷だが魔法を使い過ぎた。自分を強化する魔法は消え去り闇夜を見渡す眼は力をなくす。
残されたのは、鉄の剣を抱えた一人の人間。タイラー.ヴィントだけ。
「逃げる……逃げれるか?」
ガムシャラに走り回ったおかげでどちらが出口なのか検討がつかない。それでもこの場に留まっていたら……
「伏せていろタイラー.ヴィント!」
荒々しい野太い声が聴こえタイラーは咄嗟に身を屈めた。瞬間洞窟内が発光に照らされ魔物の断末魔が兒玉する。
徐々に光をなくし暗闇が洞窟を包んだ時
「……立てるか?」
目の前には中年の男。人相が悪く、悪く言えば悪人。良く言おうとしても……胡散臭い奴。両腕は血にまみれ辺りの魔物の息遣いは途絶えている。
「先生じゃない。冒険者か?」
「俺はニコラ.ブラウン……暇人だ。発光液を垂らしている。それを頼りに外へ出ていろ。」
「待って!まだ仲間が……仲間が何処かに……いるかも」
「今日は暇だから探してやろう。お前も勇むのは勝手だが周りに迷惑をかけるなよ。今日の事は授業だとでも思っていろ。」
ニコラと名乗った男は洞窟の奥へと姿を消した。そのおかしな喋り方に不思議に思いつつもタイラーは地面の光を便りに出口へと足を進めた。一度だけ振り返り、奥へ向けて深く頭を下げる。それは感謝なのか、謝罪なのか。
…………
……………………
信じられない事が起きている。急に魔物達に襲われてパニックになり洞窟の奥へ奥へと逃げてしまった。出口へ逃げた仲間も居た筈だ。
袋小路に追い詰められ互いに身を寄せ合う。魔物に殺される。力もないのに好奇心だけでゴブリンの巣に入り込んだツケ。
しかしツケを払うのは、わたしではなかった。
目の前で魔物達が息の根を止められていく。臓腑を撒き散らし断末魔をあげながら地の底へ沈んでいく魔物達。
仲間達の絶望の表情が希望に満ちていく。私の瞳にも光が宿っている。
「立てるか?」
その人は全身を血に濡らした中年。武器も魔法も使わずに魔物を一掃し、名前をニコラ.ブラウンと名乗った男。それが不思議で……
「これで全員だな。帰るぞ」
「ありがとうございます!ニコラさん!ニコラさんは冒険者なんですか?」
周りの仲間は自分達の窮地を救ってくれた英雄に涙を浮かべながら感謝を口にしている。
「……どうだろうな?多分悪人だ」
自らを悪人と蔑みニコラと……名乗った。それが不思議で不思議で
「どうしたミシェルど……ミシェル.ガーソン」
どうした?その質問に失礼かとも思ったけど
「あの……シノブさん……ですよね?シノブさんはなんで変装してるんですか?」
「…………何故わかった?」
「え?顔と声は違いますけど……他がシノブさん以外ありえないというか……」
シノブさんは自分の顔をペタペタ触り喉に指を当てながら小さく笑った。
「フフ、拙者もまだまだ修行が甘い。この件は皆には黙っておいてくれぬか?恩を着せたくないのでな」
「なる程!だからトランスフォームの魔法を…シノブさんは優しいんですね!ありがとうございます!」
………………
…………………………
洞窟の外に出ると腰を抜かしているタイラーとキョロキョロと誰かを探しているレイラ。他の者も負傷しながらも誰一人欠けていない友人を見て喜んでいる。
「シノブ様〜……シノブ様はどこに行ってしまわれたのかしら?」
……やはりレイラには自分の変装はバレていない。ミシェルが特別なのかどうかは調べる必要がある。
一人森の奥に入り込み変装を解く。皮を剥ぎ声帯を抜き取り骨格を変え元の青年。シノブ.ヒイラギに戻る。
「ふぅー……拙者の変装は鈍ってしまったのか」
本気の変装を一目で見破れたものは前世でも先代と乙女殿(享年90歳)だけ。本気でない変装はタウロス屋敷にいた護衛にも見抜かれた。今後は軽々に変装に頼ってはいかんな。
否!
見破れてこその忍術!更に進化の余地がある!
「フフフ腕がなる!」
シノブ&ミシェルのおまけと感謝
「皆さんこんにちは。11件目のブクマしてくれた方ありがとうございます。今回もわたしが感謝の言葉を言わせていただきました。」
「早速だがミシェル殿!貴殿はどうやって拙者の変装を見破った!?」
「え?それって本編で調べるんじゃないんですか?」
「既にHONNPENNでも調べておるわ!」
「ひっ!?ごめんなさい。え…えと…ニオイですかね?」
「ニオイとな?前にジル殿に臭いと指摘されたな。」
「全然クサいってことないです!え…と…知り合いの香りと似てたので……ごめんなさい!」
「ミシェル殿は嗅覚が発達しておるのか!謝ることはない!胸を張れアッパレな特技よ!」
「あ…の…おじいちゃんと同じニオイがして…ごめんなさい!ごめんなさい!」
「……ちなみに祖父殿は御年いくつだ?」
「今年で88歳になりました!今度お祝いしようと思うんですよ!」
「………………餅には気をつけろよ」




