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第15話 取り立て


 「ここか……趣のある家だな」


 山奥にポツンと佇む一軒屋。吹けば壊れそうな脆さをはらんだ小屋。ワシが母上様と過ごした家と似ているな。だからと言って手を緩める気はないが


 タウロスに聞いた話だと借金を抱え込みそれを返す為に強盗を繰り返し、町に被害が出ている。そして借金は一金も支払われていないのが現状。

 魔物討伐でもないので進んで冒険者はやりたがらない。たまに依頼を受けた冒険者は行方不明……と。

 

 

 借金を返す為の免罪符が強盗と言うわけか。腐っておるな。


「たのも〜!カーター家の使いの者だ。借金の取り立てに来たぞー!」


 ワシが扉を叩くと中でガタガタと物音をたてながら慌てて扉を開き


「待ってください!もう少しだけ!絶対払いますので…………なんだこのガキ?」


 始めこそ頭を深く下げていた男だからこそワシの顔を一目見るなり態度を豹変させた。


「ニコラ.ブラウンだな?拙者はタウロス殿の使いだ。金を払うかそれ以外の物で払うか選べ」


「ハンッ!金なんてねぇよ!どうぞ家の中から好きな物を取ってくださいよ〜!それで借金はチャラなんだろ?」


「……拙者も子供の使いではないぞ?」


 根っからの悪人とは思えんが人を見た目で判断する幼稚な心の持ち主か。タウロスからはある程度の許可を貰っている。好きにやらせてもらうか。


 男を押し退け部屋の中に入る。上下左右……男の視線。


「金目の物は何処にある?」


「……ねぇよ!」


「なる程、地下か」


「!?なんで……」


 男の視線の揺らぎから場所を特定し木の床を踏み鳴らす。腐った床が砕け穴の中にある物を取り出した。


「……ゴミだな。価値はつけられんが一応貰っておこう。他に金目の物は?」


「ハァ!?お前魔法器具だぞ!それも魔力を溜められる純度の高い魔法具だぞ!何処に売っても金貨20枚はつくぞ!」


 ワシの鑑定が甘いのか、しかし魔法が使えないワシからしたらゴミだ。


「貴様の鑑定など聞いておらん。さっさと換金してタウロス殿に渡すべきだったな。これは拙者が貰ってやる。……で?他に金目の物は?」


 あくまで金に執着するワシに男は怒りを隠せない。ワシ以外の者が魔法器具を見つけていたらこの男の借金も少しは減っていたのだろう。生憎来たのはワシだ。ワシの基準で価値を鑑定するだけ。


「お前カーター家の小間使いだからっていい気になってねぇか?お前を行方不明にするぐらいわけないんだぞ」


「拙者はタウロス殿からこの件を一任されている。感がいいのならそれで気付くが……お主はどうだ?愚鈍そうなので気付かないな。失礼した。」


 男は両手に光を集めワシに向けて


「表に出ろよ。カーター家とかどうでもいいからお前は殺す。今まで俺の取り立てに向かった奴は行方不明が多かっただろ?今更後悔しても遅えぞ!」


「殺すと口にしたからにはそれ相応の覚悟をしてもらう。拙者も実験台が欲しかったところだ」



 小屋から離れたところで男と向き合う。殺気に満ち溢れた男。心が未熟過ぎる。頭に血が登っている。

 男が両手で炎の槍を創り上げた。


「ファイアランス!」


 投げつけられた炎槍。選択肢は有限。躱す弾くあるがまずは……


 炎槍がシノブを穿き炭になるまで燃やし尽くした。男は多少息を切らしながらも当たりをキョロキョロと伺っている。目撃者がいないか確認しているのだろう。

 そして炭と化した物を見て目を見開いた。


「変わり身だ。丸太を焼き尽くすとは恐ろしい奴よ」


「テメェ!もう一ぱ…………かぁ……」


 ワシを目撃した男は再度炎の槍を持ち顎をブラブラとさせ


「顎を外させてもらった。声を出さなくても魔法は使えるのか試してみよ」


「か はひあ はは」


 先程よりも威力も速度もない炎槍。槍とは呼べない火の粉。避けるまでもなく魔法は途中で消滅してしまった。


 魔法は声に出さぬと発動せぬのか。なる程。


「お主……本当に金はないのか?今なら金で済ませてやらん事もないぞ」


 両手で顎の骨を入れ込みカクカクと感触を確かめながら睨みつける。瞳には濁りが混じり恐怖が現れていた。


「……ねぇよ!そもそもカーター家………………」


「さて……拙者も魔法が使えるか試してみるか………ふぁいあーらんす!……ダメか」


 シノブの声は聞こえない。ニコラの声だけが森に木霊している。


「次は皮をいただく」


「……………………!!!!」


 男の声にならない絶叫。生皮を剥がされた。強引に、皮に余計な傷がつかないように丁寧に

 声など出ない。男は声を奪われている。


「どうだ?もうお主はこの世に存在せぬぞ。安心しろ。お主の面は拙者が使ってやる。構わんだろう?悪事を重ねたのだ。この世に顔向けなど出来まい」


「…………!」


 声なき男の言葉を読唇術で読み取る


「悪魔だと?違うな。拙者は忍者だ。」


………………


「そう言った訳でタウロス殿の期待には応えられなんだ。済まぬ!」

 

「……それは、いいんですが……本当にコレは中級魔法使いのニコラ.ブラウンなんですか?というか……死んでません?」



 タウロスの目の前に生皮の剥がされた男を放り投げた。男は気を失っていてピクリとも動かないがまだ生きている。


「ん〜。どうしましょうか、とりあえリーディングできる魔法使いに本人確認を済ませて……メイデンに頼む……アイツはやらないから……えぇッと……」



 タウロスが一人あ〜でもない。こ〜でもない。と思案しているとノックもなく扉が開かれ金髪少女レイラが顔を出してきた。


「シノブ様〜!こんなに夜遅くにわたくしの家にいらっしゃるなんて……なんですのコレ?人形?……あ。生きてますわ。」


 レイラがニコラの神経をツンツンと突くとビクビクと身体を震わせている。皮膚という防御をなくしたのだ。今のニコラにとっては全てが一撃必殺。


「あぁ!!レイラ触るな!ここで死なれても困る。ヒイラギさんにはお金を……金貨5枚で」


 文机からジャラジャラと小気味好い音を奏でる袋を取り出し中から金色の硬貨を渡そうとしてきた。


「待たれよタウロス殿!拙者の仕事は完璧ではなかった。金は受け取れん。甲斐性無しの拙者を許せ」


「いやいや!待ってください!受け取ってもらってローレス家の家賃に当てていただければ……」


「二度も言わせるな!金は受け取れん!」


 無理矢理金を握らせようとするタウロスの手を払い除ける。タウロスはワナワナしながら


「……じゃあ来週は?」


「無論タウロス殿に針を刺しに行ってやる!遠慮するな!……と、そうであった。レイラ殿に土産だ。魔力を溜められる物らしいのでな。自室で魔力をこしらえてみよ」


 ニコラを小突き続けるレイラに小さな宝石を手渡した。同時にタウロスの瞳がカッと開き


「それ!それを家賃に当てて下さい!って言うかそれニコラの持ち物ですよね?それを家賃に」


「コレはシノブ様がわたくしに、くださいましたのよ!もうわたくしの物ですわ!ありがとうございますわ!大事にしますわ!」


 タウロスの願いが叶う事はなく夜が更けていった。





ジル&ニコラのおまけと感謝


「初めましてニコラ.ブラウンです。俺なんかが感謝の言葉を伝えられて光栄に思います」


「………………」


「ブクマ10というのは作者にとっても目標でもあったので感動もひとしおです。これからもシノブ.ヒイラギの活躍を暖かく見守って下されば幸いです」


「なんで1話限りの悪役モブが誰よりも真面目に感謝するのよ」


「ジルさん、本編で出番がないからって腐ってはいけませんよ。辛抱強く耐えてください。……俺はもう出番はありませんが」


「あ、はい」


「それでは俺はお役御免ですね。皆さんの活躍は期待してますよ。」


「あ、あの!私から作者に出番貰えるように頼んでみようか?いつになるかわからないけど……」


「気持ちだけ貰っておきますよ。俺の出番はここで終わり。……どうしてもと言うのなら」


「言うのなら?」


「シノブが大ピンチの時に颯爽と現れて『シノブ!お前の力はそんなもんじゃねぇだろ!?お前の背中は守ってやるぜ!』このシーンをお願いします!」


「お前厚かましいな!あと、さり気にシノブって呼んで距離を詰めようとするな!」

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